「そうか…じゃあ仕方ない。戻ろう直美さん」
「でも…」
「邪魔したな美鈴」
「ふ、ふん!」
俺は直美さんを連れて、来た道を戻り始めた。
ここで争っていてもしかたがない。相手は変に意地っ張りな美鈴だ。あいつの性格はよく知っている。口論するだけ時間の無駄だぜ。
「なんでよ! まこと君? あんなの私に対する当てつけじゃない、無視して通ればよかったんだわ」
「直美さん。あんな連中は下手に逆らって面倒なことになるよりも適当にあしらった方が利口なんだぜ」
「それは、そうだけど…」
「それに、勝手に人の家の庭を通ろうとした俺たちの方だからな。そういう意味でも分が悪い」
「まあ、そうね。わざわざ喧嘩してまで通る必要ないけど、なんか、ああいう意地悪されると、素直に引き下がるのは悔しいよ」
直美さんの気持ちはわからないでもないけど、これでよかったんだと思う。
その後も、彼女はいまいち納得いかなかった様子で、口数が少なかった。
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