◆7月21日<夜>◆
『夕涼みの縁側で』
海から姉貴の家に帰ってきた。
とりあえずすぐに夕食を済ますと、俺はあてがわれた2階の和室で荷物の整理をしながらゆっくりしていた。
「まこと、スイカ食べるぞ。スイカ」
「おお〜! 夏の風物詩といえばスイカだよな!よしすぐ行こう」
姉貴に声をかけられて俺はリビングに向かう。
リビング横の縁側に姉貴達が腰をおろしている。ちょうど姉貴がスイカを切って並べているところだ。
う〜ん、結構の量あるぞ。
「こんばんは〜、まこと君」
「あれ?直美さん来てたんだ」
直美さんがサンダル履きのまま縁側に腰掛けてる。風呂上がりなんだろう。少し湿ったて艶のある髪と石鹸の匂いがなんともいえない。
「スイカは直美ん家からのもらいものだ。感謝しろよ」
「それはそれは、結構なものをいただきまして…」
「これはこれはご丁寧にど〜も」
「なんだかなぁ…」
俺は足を縁側に放り出す形で直美さんの隣に腰掛けた。
「じゃあ、いただくよ直美ちゃん」
康太郎さんがそう言ってスイカにかじりつく。
「どうぞ、遠慮なく」
「じゃぁ、俺も」
そう言って、姉貴、直美さんに続いて俺もスイカを手に取る。
「うん。なかなか甘くていいスイカだ。…って馬鹿!まこと、お前塩をかけすぎだ!」
「うっさい!どう食おうと俺の勝手だろ?」
「せっかくこんなにおいしいスイカを、もったいない」
その様子をくすくす笑いながら見ている直美さん。
姉貴〜格好悪いだろ〜。変な突っ込みいれないでくれよ。
「田舎の爺ちゃんがいつも二、三玉送って来るんだ。趣味で作ってるらしいけど、けっこうおいしいのよ」
「ふ〜ん。直美さんのお爺さんて本格的じゃんか?家のおばさんが作ったのなんか小さくて不味かったぜ」
「うちの爺ちゃんってすごいの。頑固でこだわる人で、何でもやってのけるスーパー爺やだわ。空手や柔道、合気道なんてやってて私も昔、しこまれたもんよ」
「じゃぁ、直美さんって喧嘩とか強いんだ」
「まことが直美に変な気でもおこしてみようもんならあっと言うまに押さえ込まれるだろうな」
「姉貴〜!」
姉貴がまたよけいな口を挟む。
「あははは。まこと君はなにかスポーツやってるの?」
「う〜ん、コレといって特にはやってないかな?」
「ダメダメ。まことはごく平均的な何の取り柄もないどノーマルな高校生。直美ちゃん、自分と比べちゃダメさ」
「どうせ俺はなんの取り柄もない凡庸高校生だよ」
「ははは。ま、若いんだし、これからいろいろやればいいじゃん」
「そういう直美さんはなにかスポーツやってるの?」
「そうねぇ。格闘技以外なら、マリンスポーツも一通りこなせるかな?サーフィン、ロングボード、ボディーボード、ウインドサーフィン、波乗り系はだいたい得意よ。あとスキューバも免許持ってるし、四級小型船舶の免許も取ったしね。あと資格といえば、キャンプ指導者資格も取ったし、この間はライフセーバーの講習も受けたわ。それとね…」
「直美さんって、なんだか凄い…」
行動派なんだな直美さんって。こんな部分も姉貴に似ているな。
「あのさ…まこと君は魚とか好き?」
突然、直美さんにそう聞かれた。
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