公園を後にして二人は家へと足を向ける。
小野寺さんは、まだ俺の腕をつかんだままだ。
「小野寺さん」
俺は彼女の名前を呼ぶ。彼女は考え事でもしていたのか、はっとなった表情で俺の顔を見た。
「な、なに?」
「少し、回り道して帰らないかい?」
「え…うん。いいよ」
彼女がそう答える。
俺は三本松から帰ってきて、すっと考えていた事を彼女に話す覚悟を決める。
俺は小野寺さんを連れて、さっきまで花火大会が行われていた川の土手の方へと足を向けた。
川辺ではさっきの花火の余韻のせいだろうか?市販の花火をやっている人たちがいた。
俺達は立ち止まり橋の上からその様子を見下ろす。
いつもなら迫力のある打ち上げ花火も、さっきの花火の後では地味に見えた。
でも、それはそれで綺麗だなとも思える。
「もう夏も終わりだね…」
そうつぶやいた彼女の言葉にはいろいろな意味がこめられているのだろう。俺はせつない気持ちに胸を締め付けられる。
俺は小野寺さんの肩をつかみこちらを向かせる。そして真剣な表情で彼女を見つめた。彼女は少し驚いた顔をしたがそのまま俺の顔を見返す。
「俺、近くにいられる間は小野寺さんの恋人でいたい」
「え?」
「お互いの気持ちを知っているのに、普通どうりなんて出来そうもないよ」
「そんな…わたし困る…」
目をそらして彼女はつぶやく。それでも俺は彼女を見つめたまま言葉を続ける。
「俺、小野寺さんを支えたいんだ。大切な人が頑張っているのを見守り支えてあげたいんだ」
「でも…わたし、デートとか出来ないと思うし、一緒にいる時間ってあまりとれないと思うし…それに、わたし来年この町を出ていちゃうんだよ。それでもいいの?」
「ああ。かまわない。俺が小野寺さんの事、好きでいて小野寺さんが俺の事好きでいて…その気持ちがあればなんとかなるよ。小野寺さんが辛い時とか寂しい時、いつだって俺が側にいてあげたいんだ」
「…宇佐美君」
「俺に出来る事なら何でもしてあげたい。出来る限りの力で応援してあげたい。そう思ってるんだ。だって小野寺さんは俺のいちばん大切な女性だから」
「……」
「俺さ、ぜったい小野寺さんの足枷になるような真似だけはしないつもりだから。俺、君の力になりたいんだ」
「…うん…ありがとう、宇佐美君。わたしなんかの為に…」
「違うよ。これは俺のわがまま。だからさ、そんなに気にしなくても…え?」
突然、小野寺さんは俺に抱きついて来た。
「…わたし…凄く…凄く嬉しいよ…」
彼女の腕がかすかに震えている。俺はゆっくりと彼女の背中を抱きしめた。
「わたし…宇佐美君を好きになって良かった…本当に…」
彼女は腕の力を緩めゆっくり顔をあげる。瞳は涙で潤んでいた。
「好きだよ…小野寺さん」
「ん…」
俺達はそのままゆっくりと唇を重ねた。