森が開けて広い場所に出た。
何処からともなく大量に水が流れ落ちる音と、水分を含んだ涼しげな空気が送られてくる。
その方向に二人は駆け出した。
「うわぁ、ここね大鶴の滝って」
目の前に見事な滝が現れた。
高さは8メートルと言った所かな?
断崖の上から一気に滝壺に水が流れ落ちていた。その横には小さな祠がある。
周りを見渡すと、俺達以外、誰もいなかった。
う〜ん、この場所は車で入ってこれるよな場所じゃないからなぁ。
近くの駐車場からでも20分は歩かなきゃいけない場所だ。
だからあんまり人が来ないんだろう。
「涼しいね」
そう言って滝の方に体を向けて目を細める小野寺さん。確かに滝からの水しぶきが気温と運動で火照った体に心地よかった。
「この時期、海もいいけど、こういう所に来るのもいいわよね〜」
夏に山歩きなんて、暑くてしょうがないなんて思っていた。
だけど木々やこういった水辺の空気が暑さを和らげてくれて、意外といいもんだなと俺も思った。
海はどちらかというと暑さを楽しむ雰囲気があるが、夏場の山は涼しさを楽しむという感じだな。
すぐ側には滝壺から流れ出る小さな清流がある。水は限りなく透明だ。
小野寺さんはジーンズをたくし上げシューズと靴下を脱いで清流に足をつける。
「冷たっ! ん〜!! やっぱ山の水は海とは違って、凄く冷えてるのね」
一度足を引いた後、再び足を水の中に浸ける彼女。
「あ、ほら、宇佐美君、魚がいるよ」
「え? 何処?」
「ほら、あそこ。あの岩の影」
「ホントだ。結構大きいな。なんの魚だろう?」
「捕まえられるかしら?」
「手づかみで? ははは、それは無理だよ」
「やってみなくちゃわからないわよ。ほら、宇佐美君も手伝って」
「小野寺さん、本気なのか?」
「もちろん」
俺は半分あきれながらも川に入る。
うへ〜、本当、めちゃめちゃ冷たい。
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