「ごちそうさま、ありがとう。本当に美味しかったよ」
「うん。満足してくれてよかったわ」
そう言って空の弁当箱を返す。小野寺さんのほうはと言うと…ありゃ、全然食べてないじゃん。
「あははは。なんだか話に夢中になっちゃって…。急いで食べるから、ちょっと待って」
俺の視線に気づいて、少し頬を赤らめて箸を動かす彼女。
「いいよ。いいよ。俺が話しかけたんだから気にすることないさ。ゆっくり食べなよ」
「うん。ありがとう」
そう言いつつも、少し早いペースでごはんを口に運ぶ小野寺さん。俺は焦らせまいとベンチから立ち上がって、近くの手すりに寄りかかり景色を眺める。
太陽が眩しい。
やっぱ、陽があたる場所は暑いな。
「あは、でも…なんか、本当にデートみたいだよね」
小野寺さんが背中越しにつぶやく。
「デートじゃないのかい?」
振り返って小野寺さんに言った。
「え? うん、そういう意味じゃなくて…ほら恋人同士みたいだって事」
それを聞いて俺は現実に引き戻されたようで、少し寂しい気分になった。
俺らの関係ってなんなんだろう?
彼女に言わせれば「なに言ってるのよ友達でしょ」って事になるんだろうけど…。
まあ、彼女にとって俺は友達以上のものではない。せいぜい弘の代役って言った所かな。
でも、それでもいいんだ。
俺はそれを納得してこうしてデートしているんだから…。
でも、本当にいいのか?
なにかが俺の中でつぶやく。
でも、俺はあえてそれを無視することにした。
「…宇佐美君? …宇佐美君ってば!」
「あ…え? なに?」
俺はいつの間にか考え込んでしまったらしい。彼女に顔をのぞき込まれてやっと我に返る。
「どうしたの? 考え事?」
「ごめん。ちょっとね」
「そう。食べ終わったよ。もう一休みしたら降りよう」
「ああ」
俺達はしばらく木陰の下のベンチから遠くの海を眺めてから、どちらとも無く立ち上がり、展望台を後にした。
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