「そうだな〜。最高に旨い弁当っていうのを食べたことなんてないから、なんとも言えないけど…。今まで食べたものの中では最高かな? 少なくとも姉貴の料理よりは旨いよ」
近くに姉貴がいたらぶん殴られるよな…なんて思いながら答える。
「そんな…誉めすぎだよ」
「嘘じゃないって。小野寺さん、いいお嫁さんになれると思うよ。こんな料理を毎日、食べられるんだから、旦那さんは幸せだな」
「あはは、そうかな? それなら宇佐美君、なってみる?」
「え? 小野寺さんの…その…だ、旦那さんにかい?」
「うん」
笑顔でうなずく小野寺さん。
冗談とは分かっているけど、分かっているけどなぁ。
そりゃあ、冗談と分かっていても嬉しいケド……こんな事、軽々しく口にするもんじゃないと思うぞ、小野寺さん。
…って俺が真に受けすぎなのかなぁ。
「じゃあ、俺、予約ね…なんちゃって」
「あはは。でもさ、わたし、料理くらい上手くないと貰ってくれる人、いそうにないから…」
「何言ってるんだよ。そんなことないさ。小野寺さんって…ほら、綺麗だし、明るいし、一緒にいて凄く楽しいし…。普通、男だったら放っておかないって。心配なんてする必要なんてないよ」
俺は少し照れくさかったけど、そう彼女に言う。
もし、相手がいなかったら本当に俺でも…とまでは、さすがに言えなかったが…。
「…ありがとう。宇佐美君。でも、わたし将来、専業主婦になるつもりないから…」
「そんな事? 今の時代、「結婚相手は絶対、家事に専念させる」って思ってる男なんて滅多にいないって」
「宇佐美君もそう思っていないの」
「もちろん。男であろうと女であろうとやりたい事ってあると思うんだ。それがあるから自分は自分でいられるっていうような。まぁそれが仕事であれなんであれ、そういうものを取り上げてしまうのってなんか残酷だよ。好きであるからこそ相手の大切な部分は大切にしてあげたい。そういうもんじゃないのか?まぁ女性は子供を生まなきゃならない分、そうもいかない部分ってあるだろうけど、協力できる部分は協力していかなきゃね」
まぁ、ほとんどは姉貴からの受け売りだけど…俺も納得出来る事なので、そのまま話た。
彼女は最初、意外そうな顔をしていたが、話を聞いているうちに安心したような顔つきになっていた。
「宇佐美君のお嫁さんになる人ってきっと幸せでしょうね。でも、わたしは駄目かな。だって、協力どころか逆に相手の負担になりそうなんだもん」
「そんな事…。なぁ。小野寺さんの就きたい職って何?」
相手に負担をかけてしまうってどういうことだろう?と思って聞いてみる。
「え? …それは秘密。言うと笑われちゃうから」
「笑うなんてとんでもない。教えてくれよ」
「う〜ん、そうね……ごめんなさい。やっぱり今は駄目」
まあ、あんまりしつこい嫌われるな。俺はそれ以上、聞かない事にした。
今は駄目って事はいずれ教えてくれるって事だろうしな。
そんな事を話しているうちに、俺はお弁当をすべて平らげてしまっていた。
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