まあ、大した事じゃないだろう。
飲んでる時に気が付くだろうし、仮に全部飲んだとしてもジュースで割ってるヤツを一杯飲むだけだ。あの量なら大丈夫だろう。
だいいち俺がやった事じゃないし、知らないふりをしてよう。
まあ、俺もどうなるのか若干興味があったのだが…。
そのうち小野寺さんの右手がコップを捕らえる。そして、それを何気なく口にする。
「?」
彼女は一口飲んだ所で、怪訝そうな顔をしてコップの中身を見つめたが、再びそれを口にする。
あちゃあ。気づかなかったか…。
まあ、いいや。
数分後−−
なんでなんだろう…。
一杯だけで小野寺さんはべろんべろんに酔ってしまっていた。
「らいたいね! あんたは女の子をなんらとおもっているろよ! こっろころころころ彼女を変えてぇ! みんなあんたが思ってるような娘ばっかりじゃないんらからね! きっろ傷ついちゃってる娘だっているんらよ」
コップ一杯で完全によっぱらた小野寺さんは、弘に説教をしている。弘の奴は救いを求めるように俺の方を見るが俺は無視した。
「ちょっろ、ろこ見てンのよ! ここにちゃんと座ってはらしをききらさい! 違うわろ! 正座しらさい! 正座!」
あ〜あ。
まあ自業自得だ。
「こぉら! 宇佐美君。笑って見てる場合じゃらいの! あらたもきらさい」
「俺?」
俺は驚いて自分を指さす。
「宇佐美君も女の子の気持ちれんれんわかってらいんだからっ」
な、なんで俺が弘と一緒に説教されなきゃなんないんだよ。俺が少しむっとしてると、彼女は俺をキッと睨んだ。
「宇佐美君!」
厳しい口調で言う。俺は仕方なく弘の隣に正座をした。
それから彼女が疲れて寝てしまうまで、1時間ほど延々と説教を聞かされた。
それも同じ事を何回も何回も…。
くそぅ…それもこれも全部弘の奴が悪いんだ!
「まったく…こいつらときたら油断も隙もないんだから」
小野寺さんの説教から解放されたと思ったら、彼女にお酒を飲ませた事が見つかって、今度は姉貴からお説教をくらっていた。
「あんたたち、女の子にお酒を飲ませて変なことしようとしてたんじゃないだろうね」
「そんな訳ないだろ。だいたい弘の奴が…」
「俺のせいにするかあ。お前だって止めなかっただろ」
「お黙り! いいか? 女の子を騙してお酒を飲まそうとしたらそういう誤解を受けたって文句言えないんだからな。覚えときな!」
「はぁい」
俺達は黙ってうなずくしかなかった。
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