「な、なんとも思ってないよ」
ここで正直な気持ちを言うのはまずい。
相手が弘なんだ。下手をすると小野寺さんの気持ちを踏みにじる事になる。
「そうなのか?そいつは意外だな。せっかく俺が機会を作ってやったのに、無駄だったって事か」
ぬけしゃあしゃあとそんな事を言う弘。
「よく言うぜ。なにがチャンスだよ。自分の都合でおしつけたくせに」
「ははは…まあ、それはそれ、これはこれだ。でも、本当なのか? 言っておくが、別に俺はその事でお前をからかおうって気はないぞ。それよりも俺を味方につけておいた方がいいんじゃないか? なにかと応援してやるぜ」
「お前の応援なんてあてになるのか?」
「言ってくれるな。彼女の一人もいままでできなかった奴に比べれば俺の方が何十倍もその辺りは頼りになるぞ」
「う、うるさいやい。とにかく、俺は彼女に対してそんな感情ないからな」
「ふ〜ん。まぁいいさ。あっ、美和が戻ってきた。この話はまた今度な」
そう言うと弘は何もなかったようにソファーにもたれかかった。