「それは…好き…だと思う」
俺は小野寺さんに悪いと思いつつも、正直に弘に話す。
「なんだ? その思うって言うのは? 別に隠さなくてもいいさ」
「でも、お前こそどうなんだよ。小さい頃からずっと一緒だったんだろう? 特別な感情とかは持っていないのか?」
それを聞いて、弘は間の抜けた顔になる。
「はぁ? 俺? お前、まさかその事で遠慮していたのか? 馬鹿いえ。確かにな、一時期、あいつを異性として意識した頃はあったさ。実際、つきあっていたって頃だってあったんだぜ。でもそのとき、感じたんだ。違うんだよ。あいつとは恋人にはなれない。幼なじみっていうのがしっくりくるんだ。う〜ん、あえて言えば兄妹みたいなもんかな?」
なんとなく遠い目をしながら話す弘。
そうかぁ。やっぱり弘の方には特別な感情ってないのか…。
昔、つきあっていた事はちょっとショックだけど、ずっと一緒にいればそういう関係になっていてもおかしくないか。
「でも小野寺さんの気持ちは?」
「あいつがか? まさか。つきあっていた時、元の関係に戻ろうって言ったのはむこうなんだぜ。あいつには俺なんかよりもっと気になる奴がいるみたいだからな」
「そ、そうなんだ」
別に好きな人がいたって事か。
俺は持ちかけた希望ががらがらと崩れていくのを感じた。
「待て待て、結論を急ぐな。その相手は誰だったのか俺でも分からない。それに気持ちなんて変わってるかもしれないし、その”気になる奴っていうのはお前って可能性もあるんだ」
「まさかぁ。昔の話だろ? 俺、小野寺さんと親しくなったのは最近なんだぞ」
「いいや。お前は知らなかったかもしれないが向こうはお前のこと、昔から知っていたんだ」
「え? そうなのか? …それでも、知っていた程度だろ?」
「まぁ、その辺りは自分で確かめるんだな。俺が言えるのはお前にも可能性はあるって事だ。あいつは結構、お前の事、気に入ってるみたいだし、昔の奴よりお前の方に気が移ってる可能性は大だ」
「……」
そりゃぁ、冗談にしろ、あれだけ思わせぶりなこと言われるって事は、少なくとも嫌われていない証拠なんだろうけど…。でも、逆に言えば弘の方に気持ちが移ってる可能性も否定できない訳で…。
「あっ、この話はここまでな。美和の奴、帰ってきた」
後ろを振り向くと彼女がこちらに戻ってきてる所だった。