■美和編■
2日目【7月22日】


 
 
「これは、その、あれだ」

 俺は言い訳にならない言い訳をする。

「あのね、綾部さん。わたしたち三人で来てるの。弘がビーチにいるのよ」

 俺に変わって小野寺さんが説明する。

「あの女ったらしも来てるの? ふ〜ん、男二人もはべらかせて、見かけによらずやらしいのね小野寺さん」

 美鈴が白い目で小野寺さんを見る。これにはさすがの俺もカチンと来た。

「美鈴言い過ぎだぞ!! 俺達はただ遊びに来ているだけだ。男と女で来てる事をそう言う風にしか見られないお前の方が、よっぽどいやらしいぞ」
「なんですって!?」
「まあまあ、いいよ宇佐美君。わたしは別に気にしてないから。それよりも今から私たちお弁当を食べようと思ってるの。綾部さんも一緒にどう?」

 俺と美鈴は小野寺さんのその言葉に驚いて彼女の顔を見る。
 彼女は「私なにか変な事言った?」という表情で俺達を見返した。

「なっ! なに言ってるのよっ! なんであたしがあんたたちとお弁当たべなきゃいけないわけ?」
「ほら、だってみんなで食べた方が楽しいしさぁ、せっかくの機会でしょ? こんな所で会えるなんて滅多にないじゃない。だから…ね?」

 賢明に誘う小野寺さんに、美鈴はすこしうろたえたものの、すぐにいつものきつい表情に戻る。

「ば、馬鹿じゃない。お断りよそんな事!」

 ま〜ったくこれだからこの女は。
 小野寺さんだって社交辞令で誘ってるの分からないのかなぁ。あいかわらず自意識過剰な奴。

「あ…そうか。ごめんね〜綾部さん。お昼、もう済ましちゃったんだね」

 なんてボケた事を小野寺さんは言う。

「ち、違うわよ。もういい! あたしは忙しいからあんたたちに構ってる暇はないの!」

 美鈴はそう言い残すと逃げるように俺達の前から去った。
 もしかして小野寺さんこの展開を予想してわざと…。

「あ〜あ。せっかくの機会だったのに。わたし、綾部さんとはあんまりお話した事なかったから一緒に食べたかったなぁ」

 …どうやら本気で誘っていたみたいだぞ…。

「宇佐美君、わたし彼女に嫌われてるのかしら?」
「違う。違う。あいつはいつも誰に対してもああなんだ。気にすることはないよ」
「そうなの? でも、ほんとうは寂しいんじゃないのかな? なんか教室でも一人でいるみたいだし…。対等に話をしているのって宇佐美君くらいじゃない?」

 あれの何処を見れば対等に見えるんだよ、って突っ込みかけたが、
 ここでいつまでもあの馬鹿女の事を話していてもしょうがないと気づいた俺は、その言葉を飲み込んだ。

「断った奴の事なんて放っておいて、急いで戻ろうぜ。弘の奴が待ちくたびれてるぞ」
「あ、そうね。あいつ待たせたらうるさいから」

 小野寺さんと俺は早足で弘のいる浜辺へ戻った。