「ふざけんな!!」
俺は思わず封筒を美鈴の足元に投げつけた。
「俺は金が欲しくて美鈴とデートした訳じゃない!」
「何よっ!! あんたねぇ、人がせっかく好意で謝礼金を出してあげてるのに、なんで怒るのよ! 宇佐美だって期待してたでしょ! そうじゃなきゃ、あんたがこんなに私に優しくしてくれるわけないもの!!」
俺は我慢出来ずカッとなって手を振り上げていた。
パシッ!!
「痛!!」
俺は美鈴の頬を平手で叩いていた。
「馬鹿野郎!! 俺は美鈴という”金持ち女”と一緒にいたかった訳じゃねぇ! 俺は美鈴という一人の女の子と一緒にいたかっただけだ! 人の気持ちも知らないで勝手な思いこむな!!」
「わ、私を打ったわね…今、私を打ったわね!お父様やお婆さまにもたたかれたことないのに!!」
美鈴は打たれた頬を押さえてぽろぽろ涙を流し出した。
「俺は今まで美鈴の事、どんなに憎まれ口たたかれても本気で嫌った事はなかった。お前の事、他の奴らより多少は理解出来てると思っていた。でも、今、初めてお前を本気で嫌な女だと思ったぜ!」
美鈴は俯いたまま肩を震わせていた。涙が頬を伝うのが見える。
「なによ! 女に手をあげるなんて最低よ! あんたは本当に最低男よ!」
まくし立てる美鈴。
「このわからず屋!! もう勝手にしな!!」
俺は美鈴に背を向けて公園を後にした。後ろで「わぁ」と美鈴が泣き崩れる気配がしたが俺は振り返らなかった