「宇佐美、あたしおなかすいた〜。なんか食べに行くわよ」
「はいはい。わかったよ、何が食いたいんだ」
「う〜ん、そうねぇ…あれ」
美鈴が指さしたのは、大手のファーストフードショップだった。
「あんなんでいいのか?」
「べ、別にいいじゃない。人の勝手でしょ?」
「俺の意見はナシ?」
「当然。馬鹿男に決めさせたら、何処、連れていくか解らないもの」
「でも、ハンバーガーよりは、いいもの食べれるところくらい知ってるぞ」
「うるさいわね。もう決めたの。ほら行くわよ」
そういって俺の腕をぐいっと引っ張って、店の入りぐちに連れて行った。
そして店に入るといきなり座席の方へ連れていこうとする美鈴。
「ちょ、ちょっと待った!」
「なによ〜、いい加減に納得しないさいよね」
「あのな…。注文もせずに席に着くつもりかよ」
「え?」
きょとんとする美鈴。
「お前、こういう店、来たことないだろう?」
お嬢様の美鈴には十分ありえる事だった。
「ば、馬鹿言わないでよ、あるわよ、それくらい。わ、忘れてたの!」
「…ま、いいけどな。並ぶぞ」
「あ、待ってよ」
俺が引き返すと、慌ててついて来る美鈴。
「いらっしゃいませ、こんにちは。ご注文をどうぞ〜」
例によって営業スマイルを見せておきまりの台詞を言う若い女性の店員。…けっこう可愛かったりする。どうでもいいことだが…。
「……」
固まってしまってる美鈴。どうしていいか解らないようだ。