美鈴は今、着替え中。
先に着替え終わった俺は、荷物のクーラーボックスに座って待っている。
それにしても遅い! あの馬鹿女、いつまで待たせる気だ。
「まったく、人が多いたらありゃしないわ。あんたたち、よくこんなゴミゴミした所で泳いでるわね」
うわぉ。美鈴の奴、けっこう大胆な水着だ。赤のセパレートタイプ。プロポーションがいいから、まさに息をのむ水着姿。
しかしゆるむ頬を引き締め俺は怒った顔をした。
「言う事はそれだけか? 美鈴」
俺は冷たく言い放つ。
「何を怒ってるよ、馬鹿宇佐美! 私が何か悪いことでも言った?」
「あのなぁ、「お待たせ」とか「ゴメン」とかなんかあるだろう?」
「少しぐらい待っておくのが当たり前じゃない! 私と一緒に海に来れただけでも有り難く思いなさい」
「おい! 俺はお前の従者でも付き人でもないんだぞ。本気で俺をお供みたいに見ている訳か!?」
「…ご、ごめんなさい」
おや?素直に謝ったじゃないか。なんかいつもの美鈴らしくないな。
「じゃぁ、ビーチに行こうぜ、美鈴」
「…うん」
俺の後ろをおとなしくつて来る美鈴。
あれ? さっき俺そんなに強く美鈴を叱ったか?
「ねぇ、宇佐美…何か…私、見られてる」
「え?」
気がつくと、周りの海水浴客の視線が気になる。
みんな美鈴の方を興味深げに見ているみたいだ。
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