「いや、今夜のお前は綺麗だなって思って。俺、美鈴に惚れたかな」
少し本気な顔をして美鈴を見る。思わず視線をそらす彼女。
「な! …いきなり何言い出すのよ!」
「おや?本気にした?」
からかわれたのに気付いて勢いよく顔をこちらに向ける美鈴。当然のことながら怒っている。
「最低! そんな冗談いうなんて」
「いつもなら、こんな冗談言っても鼻で笑うのにどうした」
「うるさいわね! あんたのは冗談が冗談に聞こえないのよ」
「じゃあ本気だと思ったんだな」
「……」
あら? 何も言えないほど怒ったのか美鈴の奴、真っ赤になってうつむいてしまった。
うむ、ちょっとからかいすぎたかな?
「美鈴お嬢様。そろそろ中に入りませんとお父様がお探しになってましたわよ」
優紀さんが美鈴を呼びにやって来た。短くため息をつくと美鈴は彼女の方に向き直る。
「え? わかったわ。じゃあ、そういうことで、じゃあね宇佐美君」
「ああ」
俺は軽く手をあげて答えると美鈴は室内へ入っていった。
って、美鈴の奴、今”君”付けで俺を呼んだよな? いつもは呼び捨てかバカという文字が付くのに…。どういう風の吹き回しだ?
俺は一人でいても仕方がないので、美鈴に続いて室内に入った。