「なんだよっ 婚約者がいるなんて初耳だぞ!」
「違うわ、親が勝手に決めたことよ」
「美鈴だってまんざらでもなさそうじゃないか」
「な、なに怒ってるの? もしかして妬いてる?」
怪訝そうな顔をして俺を見上げる美鈴。
「な…そ、そんな事あるわけないだろう! お前こそわざわざ戻って来て弁解してんだよ?」
「う…それは、誤解されて変な噂たてられたくないから…」
少し声を裏返しながら答える美鈴。
おい、おい…なんで声が裏返ってんだよ。
「と、とにかく、私、友憲の事なんて、なんとも思ってないからね」
それだけ言うと美鈴は逃げるように俺の前から去って行った。
まったくなんなんだあいつは。