■美鈴編■
2日目【7月22日】


 
 
「すみませんでした。うちの妹がご迷惑をおかけしまして…」

 優紀さんがそういって店員に頭を下げる。本当の素性を知られると、父親が地元の名士だけに話がややこしくなると言うことで、優紀さんは美鈴のお姉さんという事になっているらしい。

「今回は初犯だという事で、警察にも、学校にも連絡しませんが、家庭の方で今後こういう事のないよう、厳しく注意しておいて下さい。君も友達やお姉さんに迷惑かけたんだから、あとで謝っておきなさい。二度とこういう事をするんじゃないよ」
「……」
「おい、美鈴っ」
「…ごめんなさい。もう二度としません」

 そういうと素直に頭をさげた。これに優紀さんがすこし驚いた顔をする。
 店員は厳しい顔のままうなずくと、事務室のドアをあけてくれた。

「一応、この件は旦那様に報告しておきます」
「…ええ。かまわないわ」

 優紀さんの運転する車の中、少し怒っている様子の優紀さんと無口な美鈴の様子に俺は居心地の悪さを感じた。
 こんな事なら送ってもらうのを断って、店の前で別れていればよかったな。

「まこと君もとんだ災難だったわね。うちのお嬢様が迷惑をかけてしまって申し訳ないわ」
「いえ、別に気にしてないです。いつもの事ですから」
「なによっ! そんなにあたしの事が迷惑なら車から降りればいいじゃないのっ!」

「お嬢様、せめてまこと君にだけは謝ってください。大切なお友達なのでしょ?」
「友達? 違うわよ! だれがこんなヤツ」
「俺だって別に謝って欲しくないぜ。言っておくが、お前のためにつき合ったわけじゃないからな。お前が事態を悪化させて、優紀さんに手間かけさせたくなかったらいてやっただけだからな、誤解するなよ」
「ふん!!」

 美鈴はそのあとそっぽ向いて、俺が降りるまで一言も口を利かなかった。