「あんたは男だから、ハンディつけないとね」
当然と言った感じで美鈴が俺に言う。
「そうだろな。で、どんなハンディだ?」
「あんた対あたしたち全員」
「…ってそりゃ無茶だろ?」
「無茶かどうかやってみなきゃわかんないでしょ?ちなみにこれで負けたらバイト代、チャラだからね」
「待てよ、それはないじゃないか!?」
「いいから始めるわよ!!」
強引に試合を始める美鈴。
まず、プール中央で静香が軽く跳ね上げたボールを美鈴と俺が奪い合う。
「いだたきっ」
美鈴がボールを取ると、ボールを掲げて走る。
しかし、胸まで水につかったままそんなに早く走れる訳もない。
俺は得意のクロールであっと言う間に美鈴に追いつき、彼女の手からボールを奪い去った。
半分泳いだ格好になりながら俺はゴールを目指す。静香たちの防御の隙をうまくついて、とりあえず先制点をあげた。
続いて、麻紀子がボールを取り、俺がそれを奪う寸前で、静香にパス。
急いで目標変更して静香の元へ急ぐ俺。
「静香、こっちにパスしなさい!!」
俺が静香に追いついてボールを奪おうとすると、美鈴がそう声をかけた。
隙をついてボールをパスする静香。
美鈴はそれをキャッチすると急いでゴールに行こうとしたが、あわてたせいか水に足を取られて水の中へ倒れる。その勢いで離してしまったボールを素早くつかむと、俺はゴールに一目散、またもや得点を入れた。
「……」
美鈴の失敗に無言で顔を見合わせる佐竹達。
俺は相手チームの中になんとなく嫌な空気が流れているように感じた。
でも手加減する訳にはいかない。なにせ俺のバイト代がかかってるんだから。
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