「退屈〜、なにか面白い事ないの?」
ボーイの服が濡れて、仕方なく海で着ていた海パンにシャツ姿になった俺に、美鈴がつまんなそうに声をかける。
「知るかよ、俺が」
「む、まださっきの事、怒ってるの?」
「服のまま水に突き落とされて、気分おだやかでいられるほど、寛大な人間じゃないんでね」
「だいたいあんたが悪いんじゃない。あたしのことを無視して、静香なんかとデレデレいちゃついてるからよ」
「なんだよヤキモチ妬いてるのか?」
「あのね、雇い主が誰だか自覚しなさいと言っているの」
「無理矢理連れて来たくせによく言うぜ」
「うるさい! うるさい! うるさい! 文句いう暇があるなら、なんか楽しくなるようなアイデア出しなさい」
「なんだよ、その楽しくなるようなアイデアってのは」
「あの、美鈴様?あたしに提案があるンすけど」
後ろからおずおずと話しかけてきたのは麻紀子だった。
この女、相手によって話し方が全然変わるんだよな。まぁどうでもいいけど。
「水球なんていうのはどうでしょう」
「水球?」
「水中バスケットのようなもんだ」
俺は思わず説明を入れる。
「プールの両サイドに場所を決めて、そこにボールを置いたほうの勝ちってやつだ」
「…なんだかわからないけど、面白そうね。それやるわよ。麻紀子、ビーチボール取ってきてちょうだい」
そういうと寝ころんでいたビーチチェアから起きあがると、プールに飛び込む美鈴。
それに習って静香たちもプールに入る。
「なにやってるのよ。あんたも来るの」
「俺もか?」
こちらを指さして言う美鈴にしぶしぶ従う俺だった。
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