■美鈴編■
2日目【7月22日】


 
 
「退屈〜、なにか面白い事ないの?」

 ボーイの服が濡れて、仕方なく海で着ていた海パンにシャツ姿になった俺に、美鈴がつまんなそうに声をかける。

「知るかよ、俺が」
「む、まださっきの事、怒ってるの?」
「服のまま水に突き落とされて、気分おだやかでいられるほど、寛大な人間じゃないんでね」
「だいたいあんたが悪いんじゃない。あたしのことを無視して、静香なんかとデレデレいちゃついてるからよ」
「なんだよヤキモチ妬いてるのか?」
「あのね、雇い主が誰だか自覚しなさいと言っているの」
「無理矢理連れて来たくせによく言うぜ」

「うるさい! うるさい! うるさい! 文句いう暇があるなら、なんか楽しくなるようなアイデア出しなさい」
「なんだよ、その楽しくなるようなアイデアってのは」
「あの、美鈴様?あたしに提案があるンすけど」

 後ろからおずおずと話しかけてきたのは麻紀子だった。
 この女、相手によって話し方が全然変わるんだよな。まぁどうでもいいけど。

「水球なんていうのはどうでしょう」
「水球?」
「水中バスケットのようなもんだ」

 俺は思わず説明を入れる。

「プールの両サイドに場所を決めて、そこにボールを置いたほうの勝ちってやつだ」
「…なんだかわからないけど、面白そうね。それやるわよ。麻紀子、ビーチボール取ってきてちょうだい」

 そういうと寝ころんでいたビーチチェアから起きあがると、プールに飛び込む美鈴。
 それに習って静香たちもプールに入る。

「なにやってるのよ。あんたも来るの」
「俺もか?」

 こちらを指さして言う美鈴にしぶしぶ従う俺だった。