「宇佐美、ちょっとこっちへ」
俺は静香に呼ばれて、しぶしぶ彼女の元へ行く。
「あのさ、オイル塗って欲しいんだけど」
「え?」
彼女はサンオイルの瓶を片手に俺にそう言う。
おお、ラッキー。
悪い噂があるものの、静香ってけっこう美人だものな。美鈴とは違った意味で近寄りがたい女の子だけど、そういった危険な雰囲気が逆に魅力的だったりする。しかも改めて見るとスタイルも抜群だしこれは役得ってヤツじゃないか。
「では失礼しまして…」
俺は瓶を受け取ると手に付けて彼女に近づく。
「ちょっと待ってよ。私じゃない。あっち、麻紀子のほうよ」
静香が麻紀子のほうを指さして言う。
がぁぁぁん。
あう、よりによってコイツかよ…。
「余計な所さわるなよ」
そう言ってジロリと俺を睨む麻紀子。
触らないって…トホホ。
俺は嫌々ながら麻紀子の背中にオイルを塗った。
「もしかして、私にもオイル塗りたい?」
静香が流し目でそう言って俺をからかう。
「いや、別に俺は…」
「へぇ〜、真っ赤な顔して、宇佐美って意外とウブなんだ」
「そ、そんなんじゃないさ」
「じゃあ、こっちに来て塗りなさいよ」
「あ、ああ」
俺はオイルを片手につけながら、焼くのがもったいないほどの白い背中を見つめる。
そして両手を合わせてこね、静香の背中にゆっくりと塗っていった。
役得、役得っと。
「宇佐美、水着の下もお願い」
「え? …わ、わかった」
俺は少しためらいながらも、静香の水着の下に手を入れてきわどい部分ぎりぎりまでオイルを塗る。
う、やばい、なんか変な気分になってきたぞ。
「どうしたの?宇佐美。顔が真っ赤よ」
「…いや、まぁ、綺麗な背中だなぁって思って」
「どう? さわり心地いい?」
「う、…そ、そりゃ、まぁね」
自分でも情けないほどしどろもどろになる俺。
静香は横目で俺の方を見上げている。
「ちょっと、宇佐美〜、タオル取って〜」
急にプールの方から美鈴の声がした。
俺は聞こえないふりをする。
「ね、続けてよ」
静香の催促に俺は従った。
「宇佐美〜!! こらっ、馬鹿男〜!! 聞こえてるんでしょ!!」
「……」
「静香の挑発にのって、鼻の下伸ばしているんじゃないわよっ!! この変態馬鹿男!! いいからこっちに来なさいよ!!」
「…ったく、うるせぇな。佐竹、悪いけど」
「しょうがないわね。行ってやって」
少し苛立たしげに静香が応える。
俺はビーチチェアにかけてあったタオルを取って、未だプールの中にいる美鈴の元へ駆けつける。
「ほら、タオル」
「……」
なぜかプールから出ようとしない美鈴。
「なんだよ、いるんだろ? タオル」
「…手を貸して」
「え?」
「だから、上がるから手を貸しなさいって言ってるの!?」
無視したことに腹を立てているのか、美鈴はご機嫌斜めのようだ。
俺は仕方なく手を差し出した。
「ほら、つかまれよ」
「……」
無言で俺の手に捕まる美鈴。
「ったく、世話焼かせやがって…って、おい!! そんなに引っ張るな!!」
美鈴はプールの壁に足をつけて俺をいきなり思いっきり引っ張った。
俺はあわてて体制を立て直そうとするが、すでに遅く、プールの中にダイブしてしまった。
「ぷあっ!! 何するんだよ美鈴!!」
「べぇ〜だ」
美鈴は俺に向かって舌を出してプールから上がった。
服は下着の中までぐしょぐしょ。
あの馬鹿女、なんてことしてくれるんだよ、ちくしょう。
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