「ものは相談なんだがな、美鈴」
「聞かない」
フン!とそっぽを向く美鈴。
こうなりゃ、煽て作戦だ。
「美鈴ちゃんって可愛い! 美人〜!」
「そんなこと決まってるじゃない。なに当たり前のこと言ってるの。第一、私を煽てようとしたって、駄目なものは駄目なの!」
こいつは〜!
おっと、冷静に、冷静に。仕方ない。ここは外堀から埋めていくか。
「別に通るくらいいいじゃんか、ねぇ佐竹」
「さあね。美鈴が駄目だって言うのなら駄目なんじゃないの?」
うう〜。冷たいお言葉。
俺は煽て作戦を諦め、普通の口調に戻る。
「まったくよ。そんな意地悪だから、お前は嫌われるんだ」
「別にいいわよ。嫌われたって」
「彼氏だってできんぞ、そんなんじゃ」
「私の事を理解できないようなレベルの低い男なんていらないわよ」
「あのなぁ、お前が他人を理解しようとしないと、誰もお前の事を理解しようとはしてくれないぜ」
「……」
「自分が他人を拒否しておいて、他人から受け入れられようと思うのはエゴでしかないんだぞ」
「あ、あんたに何が分かるのよ」
少し俯いて一瞬、寂しそうな表情をみせる美鈴。
「少なくとも美鈴がいつも何かに対して意地をはってることは分かる」
「…はぁ。もういいわ。行きなさいよ」
「お、通してくれるのか?」
「さっさと、行きなさいよ! 馬鹿。早く私の前から消えて」
ふう、なんとか通してもらえたな。
そうなんだよ。美鈴はどこか無理してるところがあるんだよな。
あいつはいつもあんな感じだから、つい意地になって俺も嫌味を言い返すけど、本当はあいつ寂しいんじゃないのかって思ったりするんだ。
あいつをとりまく環境とか、昔の事とか少なからず知っているから、あいつがどうして他人にああいう態度をとるのか理解できるつもりだし、それがあいつにとってよくない事だという事も分かっている。
だからと言って、俺がなにか出来る訳でもないけどさ。
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