「俺は通ると言ったら通るんだ!」
「絶対通さない! なんであんたみたいな男に会った上に親切にしてあげないといけないの!」
「ったく強情な女だな」
「実力行使に訴えるわよ」
「う…」
長年のつき合いでよく知っているが、彼女の格闘技は筋金入りだ。一応、お金持ちのお嬢様って事で、いざと言う時、身を守れるようにと幼い頃から習い事の一つとしていろいろやらされたそうだ。
不良グループを引き連れているのも、一概にお金の力だけではないかもしれない。俺も過去、彼女の実力行使には何度も泣かされてる。
「私の元オリンピック選手コーチの柔道と本場アメリカ仕込みの護身術はやわじゃないわよ」
「だ、だからなんだって言うんだよ」
俺は内心、少しビビリつつも、平静を装って答える。
「強行突破するって言うなら、あたしらも黙っている訳にはいかないなぁ。女だからって甘く見てると後悔する事になるぞ」
麻紀子がそう答える。
「美鈴が駄目だって言ってるんだから、ここは引き下がったほうが得策じゃない?宇佐美君」
冷たい声でそう静香に言われ、怯む俺。
美鈴はともかく、この女には逆らわないほうが得策だ。
「わかったよ。…ったく、知り合いのよしみで通してくれてもいいじゃないか。可愛げのないヤツ」
「なに? やっぱり痛い目にあいたいの? 宇佐美」
「なんでもねーよ。黙って引き下がればいいんだろ」
「そうやって最初から素直に応じとけばいいのよ。じゃ〜ね、馬鹿男」
美鈴は満足げに意地悪い笑顔なんぞを浮かべながら、俺に手を振った。
くそっ、覚えてろよ美鈴のヤツめ。
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