「じゃあ仕方ない。引き返すか」
俺は、潔くあきらめて帰ろうとした。
「ちょっと待ちなさいよ」
美鈴が呼び止める。俺が振り返ると、彼女は少し怪訝な表情をしていた。
「なんだ?」
「どうしたのよ。今日はやけに素直に引き下がるじゃない」
「逆らってほしかったのかよ?」
「べ、別になんでもないわよっ! あんたが”らしくない”反応するから、少し驚いただけよっ」
美鈴は顔を真っ赤にしてふくれっ面で答える。
「俺はな、せっかく海に遊びに来ているのに、無駄な労力使いたくないだけさ」
「無駄な労力って、あんたあたしの事バカにしているでしょっ!?」
「なんだ、今頃気付いたのか?」
「むきっっっーーー!! あんた、このあたしにそんな態度取っていいと思ってる訳!?」
「思っているから言ってるんだ。じゃあな」
そう言って一方的に会話…というか、口喧嘩を切り上げて、俺は元来た道を引き返す。
後ろの方で美鈴がなにか叫んでいるようだが、この際、無視だ。
俺は仕方なく、正規のルートを通って姉貴の家へ帰った。
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