Marine Blue Serenade
■7日目■
【 朝 / 昼 / 夕 / 夜 】
◆7月27日<朝>◆
『最終日』
とうとう今日は家に帰る日だ。
実に思い出深い一週間だったなぁ。
俺は起きて早々に帰り支度を済まし康太郎さんと姉貴に挨拶をすると姉貴の家を出た。
振り返って一週間暮らした大きな家を見る。短い間だったけど、なんか愛着わいちゃったな…。少し寂しさを感じながら、俺はバス停へ向かって歩き出した。
せっかくだから真澄ちゃんに会いに行こう。
昨日、あのまま別れちゃったから心配だし、いろいろと約束もしたいしな。
そんなことを考えながら、俺は海沿いの国道に出た。
するとバス停の前に人影をみつける。
「あっ、真澄ちゃん!」
俺は大きく手を振って駆け寄った。
あれ? 様子が少し変だ…。
俺は挙げた手をゆっくりと下ろすと彼女の顔を伺った。
「真澄ちゃん?」
「宇佐美先輩。今日までいろいろとありがとうございました。本当に楽しかったです」
少し悲しそうな声で言う彼女。
やっぱり変だ! 昨日の事、気にしてるのかな?
「あのさ、昨日の事なんだけど…」
「いいんです。もう。それに宇佐美先輩、あんな素敵な彼女いるし…」
「ちょっと待ってくれよ。小野寺さんはそんなんじゃ…」
「宇佐美先輩、優しいから…だから、あたしの相手をしてくれたんですよね。いいんです。それで…あたしそれだけで嬉しかったから」
真澄ちゃんは俺の顔を見上げた。目には涙が溜まってる。
「違うんだ! 真澄ちゃん」
「あたし、諦めましたから…宇佐美先輩の事、諦めましたから…」
目を伏せて言う真澄ちゃん。その頬には一筋の涙がこぼれた。
「そんな…俺は真澄ちゃんの事が」
「言わないで!!言わないで下さい…いまさら、そんな事…もう決めたんです。先輩と会うのは今日が最後だって…」
「……」
「ごめんなさい。これ以上、先輩の側にいるとまた甘えちゃいそうで…。だからもう行きますね」
涙を人差し指でなぞると、真澄ちゃんは無理に笑ってみせた。その姿がなんとも痛々しくて俺は何も言えなかった。
どうしてこんな事になってしまったんだろう…。
なんで俺は、あの時彼女を追いかけなかったんだろう…。
俺は拳を握りしめ唇を噛んだ。
「さよなら…宇佐美先輩」
真澄ちゃんは震える声でそう言うと、崩れそうな表情を隠すように振り返って走り出した。
俺はその後ろ姿をただ立ちすくんで呆然と見送った。
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