「真澄ちゃん…好きだ…誰よりも君が好きなんだ」
「宇佐美先輩…」
彼女の体温が濡れた服を通して伝わってくる。心臓の鼓動が聞こえる。熱い吐息が首筋にかかる。中学の以来、別々の人生を歩んでいた二人がこうして出会って今、お互いの鼓動を確かめ合っている。
落ち着いたのか、真澄ちゃんは俺の胸からゆっくり顔を上げる。
「ご、ごめんなさい、先輩…服が…」
彼女の濡れた服の水気が俺の服にも染み込んでいた。
「気にしないよ。それとも嫌?」
首を横にふる真澄ちゃん。
「ずっとこのままでいたい…」
顔を真っ赤にして小さくつぶやく彼女。
「宇佐美先輩…好きです。あたし、ずっと、ずっと前から先輩の事、好きでした…」
見上げると月明かりが海面に写ってキラキラ輝く。彼女の髪から滴る水も光を反射している。月から落ちた光の雫のようだ。優しい光の渦の中、俺達は抱き合っていた。
「あの…」
真澄ちゃんがふと口を開く。
「何?」
「…その…私…」
口をパクパクしながら声にならない。何かを言おうとしている彼女。
「大丈夫。落ち着いて…。ちゃんと聞いてあげるから、話してみて」
「…あ、あたし、ありったけの勇気を出して言います…」
彼女はそう言うと俯いてごにょごにょと何かを囁く。
「…し…下さい…」
「え?」
俺はなかなか聞き取れない。彼女は決心したように俺を見上げてはっきり言った。
「キス、して下さい」
俺は驚いて、彼女を見返す。瞳は涙で潤んでいた。しかしその目の奥には彼女の賢明な決心がかいま見える。
「あたし、宇佐美先輩となら…」
俺は彼女の頬に手を当てる。彼女は見上げたままの姿勢で目をつぶって押し黙った。抱いた彼女の肩が震えていた。
俺はゆっくり彼女の唇に唇を重ねる。
彼女の頬を一筋の涙がこぼれ落ちた。
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