■真澄編■
5日目【7月25日】


 
 
「はぁ。けっきょく見つからなかったね。まったく、弘のヤツ、しょうがないなあ」

 ビジターセンターの側にある小さな喫茶店で俺達は軽い昼食をとった。でも、こうやってるとデートみたいだ…ってなに考えてるんだ。

「ねぇ、まこと君」

 私服姿なんて久しぶりに見たけど、なに着ても似合うよな〜。制服の時とは違った雰囲気でまた一つ彼女の新しい面が見れたようで嬉しかったりする。服装が変わっても良く見えるのはやっぱ地がいいからかな。
 ちくしょー、弘の野郎、羨ましいぜ。

「宇佐美君ってば!」
「あ、何?」

 慌てて思考モードから戻る俺。小野寺さんは少し怒ったような顔を一瞬したが、すぐに気を取り直して俺に言ってきた。

「だからね。よかったら一緒に行かない?」
「え、何処へ」
「ビーチよ。せっかく来たのに、このまま帰るのなんて勿体ないじゃない。一人で泳いでもつまんないし…もし暇だったら、一緒にどう?」

 もしかしてこれは…ラッキー?

「俺たち二人で?」
「もちろん。わたしとじゃ嫌?」
「そ、そんな事ないよ。喜んでつき合うよ」

 なんとなく真澄ちゃんの事が気になったが、特になにか約束したという訳ではないし、小野寺さんをこのまま帰すのも可哀想だし…。
 しかも、滅多にこんな機会はないぞ。
 彼女と遊ぶ時はいつも弘と三人だったもんな。
 弘の代わりとは少し残念だが、たまには二人きりっていうのも悪くないだろう。