「宇佐美先輩…初めて会った日の事、覚えてます」
「ああ。君がクラス委員会で執行部に責められた時の事だね」
「あの時、あたし先輩の前で泣いちゃったんですよね。今考えると恥ずかしいな」
「でも、委員会終わるまで我慢していたんだからたいしたものだよ」
「あたし知らない人の前で泣いたのって宇佐美先輩の時だけなんですよ。あの時、先輩何も言わず側にいてくれましたよね。あたし泣いていたけど本当は嬉しかった。見ず知らずのあたしの事を気にかけてくれる人がいる。それが嬉しかった」
「そんな大げさな事じゃないよ。なんだかさ、泣いてる女の子を一人にするのって嫌でさ、上手く慰めの言葉も思いつかないのに放っておけなくて」
「あの後もいろいろ助けてくれましたよね。本当に先輩には感謝してます。あたし先輩に出会えて良かったって思ってました」
「真澄ちゃん…」
真澄ちゃんは少し恥ずかしそうに頬を赤らめながら俺に話す。
「でも、ほんとあたしって迷惑な女ですよね。ドジばっかだし、すぐ泣いちゃうし、上手く言いたい事も言えないし…先輩にはいつも迷惑ばかりかけてますよね」
「そんなことないよ。真澄ちゃんいつでも一生懸命じゃないか。ちょっと肩に力が入りすぎてるだけだよ。それに泣きたいときに素直に泣ける人って嫌いじゃないな俺」
真澄ちゃんが俺の顔を見つめる。憂いの表情。
「先輩…あたし…これからも先輩に迷惑かけちゃっていいですか?」
「え?」
言葉の意味を探ろうと真澄ちゃんの顔を見つめてしまう俺。彼女の瞳が潤んでいるように見えるのは気のせい?
俺は思わず真澄ちゃんの肩を掴んでしまう。上目遣いに俺を見つめる彼女。
ゆっくり瞳を閉じる。
俺はそっと彼女の方へ顔を近づけた。
パンパンパパパパン!!
突然、爆音が響いた。二人ともビクッとなって音の原因を探る。
な、なんなんだ!
「やーい!こんな所でいちゃついてんじゃないやい」
小学校高学年くらい、丸坊主のガキがこちらに向かって言う。どうやらさっきのは爆竹だったみたいだ。
「馬鹿! やめなさい!! …すみません! 馬鹿な弟が失礼な事しちゃって…きつく言っておきますから許して下さいね」
今度は中学生くらいの女の子が、歳の割には馬鹿に丁寧な口調で俺達に謝った。
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