◆7月22日<夕方>◆
『スコールの想い出』
俺は真澄ちゃんと二人で松林の中の小さな道を歩いていた。
天乃白浜から彼女を家に送る途中である。
由希子さんたちが2人でドライブに行ったので、真澄ちゃんは歩いて帰る事になったからだ。
もちろん俺が送っていく事を見越してなんだろうけど。案外俺たちに気を使ってくれたのかもしれない。それに由希子さんの家までは徒歩でも15分ほどしかかからない。歩いて帰るのがそれほど苦にならない距離だ。
「こんな遊歩道があるとはねぇ」
俺は歩きながらあたりを見回す。まだ整備されたばかりみたいでアスファルトの色は濃かった。
「これはサイクリングロードなんです。この街海岸線に沿って、ずっとあるらしいですよ」
「ふ〜ん」
「そうだ! 明日の朝、涼しい時間にサイクリングしません? この道が何処まで続くか冒険してみたくないですか?」
「え? …でも自転車が…」
「大丈夫。マリン文化会館って所がレンタルサイクルやってるそうです」
「そうなんだ。OK、OK〜! せっかくの真澄ちゃんのお誘いだし、明日は早起きするかな」
「やったぁ!」
真澄ちゃんが喜んで笑っている。まさか、彼女の方から直接誘って来るなんてちょっと驚いた。
中学の時なら絶対、なかった事だよな。
ポタッ
「ん?」
俺は頬に冷たいものが当たった気がした。
「あれ? 雨かな」
「え? 本当ですか? こんなに晴れているのに」
真澄ちゃんが怪訝そうな顔をして空を見上げる。
確かに空は少し雲があるものの晴れている。俺も気のせいかな? と一瞬思った。
が…
いきなり大粒の雨が地面を叩きだす。
「うわぁぁ」
俺達は走り出した。近くに雨宿り出来そうな場所はない。松の木なんて全然屋根の変わりにはならないだろう。
俺は走りながらバックから海で使ったビニールシートを取り出すと頭に掲げ、一端を真澄ちゃんに持たせた。
これで少しはマシだ。
二人はビニールシートを頭に覆ったまま建物のある国道の方へ走った。
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