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せわしない4月

春のお彼岸が過ぎて、本格的に暖かくなってきても、ちっとも芽のでる気配のない木が庭に二本もあります、ジャカランダです。もともと暖かい所が好きな木ですから、冬に異常な低温が続いたことと、昨年上陸した二度の台風から受けた塩害のせいで力尽きたのでしょう。生命を繋ぐことに限界があるのは人間も植物も同じです。思いの外強靱で生きながらえるかと思えば、いとも簡単に命が尽きるものもある、そんなことを思っているうちに、今年も春はそれなりにやってきました。

ここ2年ほどは、少しずつ片付けをしながら、整理を繰り返しています。後の始末をする人が、出来るだけ簡単にできるようにと、いつの間にかたまっている不要な物を捨てることと、残す物を纏める作業を繰り返しながら日を送ることが多くなりました。自作したDVDも沢山たまっています。必要最小限にしようと思いつつも、簡単に捨てることが出来ないのが難儀です。

春休みにやってきた孫娘は、自分の幼かった頃のDVDを面白がって、飽きもせずに繰り返し観ています。何回も何回も、見飽きないのかしらんと思うほどです。5才の頃に離れてしまったので、わずか3枚ほどしかないDVDなのですが、おババが録画し、DVDにし、表紙を貼り、仕上げたものです。(初期のDVDはラベルを印刷し、それをペタンと貼らなければならなかったのです)。おババにとって、これは大変な作業でした。お教え願った先生の、懇切丁寧なホームページの記事と、メールによるご指導で、何とか形になったというものでした。

たった一つでも、後の誰かが喜んでくれる物を残しておくことが出来れば、それで満足、有り難いことです。DVD関連のしまい場所を孫娘に教えながら、パソコンを始めた頃の事などをぼんやりと思い出していました。

夕食には、彼女のリクエストで、牛肉いっぱいのコロッケを作ろうということになりました。エプロンをかけて張り切って台所にきた孫娘の手には、「大きなノートとペン」が握られています、行程ごとにせっせと書き込んでいく姿は、やる気満々です。これは「もの」になるかも知れません、淡い期待がわき上がりました。「メモ書きする人は伸びる」、、この言葉は本当かもしれません。今の内なら沢山のことを伝えてあげられる、レシピを纏めてみよう、、そう思うと、俄然やる気が出てきました。したいことがまた一つ増えたことになります。

市役所からの葉書で、今年「後期高齢者」になったことを知りました。正真正銘の老人であり、もう「後期」のあとは死ぬことだけよ、と念を押されたようなものです。いよいよ限られてきました。出来ることを順々に、しかも手早くやっていかないと時間は待ってくれません、いろんなことが間に合わないかもしれません。かくしてセカセカおババは焦るばかりの日々を、またまた大急ぎで、バタバタと過ごしていくことになるのでしょう。

昨日は曇り日の予報が外れ、霧雨が降りだし、雷まで鳴っていました。桜はと言えば、狂ったかのような高温に驚いたのか、一気に開花したあと、急な霜夜の再来で、またまたショックを受けて縮んでしまい、美しい満開を見せることなく、もう散り果てようとしています。なんとなく落ち着かない中でやってくる4月という月は、穏やかに始まったためしがありません。なにしろ毎年4月は、始まりが「4月馬鹿」なのですから、、(2013.4.01.)
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