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ロゼ色のおまけ人生


チェコは中央ヨーロッパにある共和国です。チェコビールや、ボヘミアングラスなどをなんとなく知ってはいますが、少し遠い国です。そんな国へ旅された方から、シャンパン型のスパークリングワインを頂きました。同じ時期に同じ仕事から引退された夫のご同輩の方からの旅のお土産です。

「おまけ人生」を謳歌されているこの方は、「他人の芝生は青い」という観念の正反対「自分の芝生はチョウ青い」という考え方を貫き、常に前向き、幸福感満載の日常をおくられています。毎日の散歩帰りに立ち寄られる大坂梅田のデリカで好きなお総菜を入手し、奥方とビールを飲みながらの夕食が至福の時間であると繰り返し語られるホームページには、やっかみ半分の賞賛が注がれたものでした。

引退後は40年来の玄人はだしのパソコン作業に一日の大半をあて、PCの使い方ノウハウを分かりやすく伝える記事を次々にUPされています。サイトを訪問する方々が多いことはアクセス数からもよく分かります。また、毎年の旅の写真をホームページから発信され続けていますが、美しい写真は見るだけで楽しい旅をした気分になります。中でも圧巻なのが、ご自分の来し方を余すところなく記述された自分史とも言うべき「歌と思い出」です。時代と共にある「歌の世界」を、ご自分の歩んだ道に絡めて語られる記事は、しっかりとした音楽の知識と記憶力によって巧みに記述された長編で、読む人達に好評を博してきました。

おまけに引退後数年で、神の手からポロポロとこぼれ落とされたかのように3人のお孫さんを迎えられる幸運もつかまれました。このお孫さん達との交流DVDの作成など、なさりたいことが山積みで、まさに老いてなどいられない毎日なのでしょう。小さな齟齬はトシを取れば当たり前と割り切り、この順風満帆の「おまけ人生」を、毎年の世界旅歩きで更に彩る、、まさにロゼ色のシャンパンのごとき老後暮らしです。

チェコのロゼスパークリングワインは伝統的な樽発酵のクラシック製法でつくられ、アルコール度は13%未満、酸度も7度と、飲みやすく、さっぱりとした風味です。日本のマスカットベリーAで仕込まれるスパークとよく似た味で、スルスルと飲めました。住まいしている浜松へは、大河ドラマ「直虎」人気でしょうか、千客万来とはいかぬまでも、今夏は訪問客が沢山あります。先ず手始めに開けたこのチェコのロゼスパークは、たいへん好評でした。

冷やした瓶の蓋の針金を巻き戻し、シュパッと栓を抜くと、細かい泡がピチピチササ~と立ち上がり、ピンクというよりはサーモン色に近い美しい幸せ色が、芳醇な香りと共にトクトクとグラスに満ちていきます。弾ける泡が次々に浮かび上がってゆく豊かな時を、しばらくは眺めて楽しみます。後わずかに残っているであろう自分の未来をも、ロゼ色に輝かせてくれるような気がいたしました。

夏のテーブルを明るく彩ってくれたシャンパングラスは、猛暑の日の夕陽に映えて、煌めきを増していきます。幸せのお裾分けを頂きました。(2017.7.12.)

チェコのロゼスパークリングワイン

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