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一汁一菜のお話


料理研究家の土井善晴氏の講演がありました。先代の土井勝氏が大坂で50年ほど昔に開催された「正月料理」の公開講座を聞きに行ったことを思い出しました。二代目の善晴氏 は、軽妙な語り口と料理のワザの確かさで定評のある方です。

少しばかり言いにくいことを、緩くやんわりと言える大阪弁を巧みに繰って話される「美味しいお話」は、会場を盛り上げ、楽しい雰囲気がいっぱいでした。「和食」はまず見た目の美しさを第一とします。「きれいな盛り付け」という言葉には日本人の食の美意識が凝縮されているということ、季節感を大切にする食文化は日本の特色といえること、食材を生かし切る術(すべ)において日本人は一番優れているのではないか、、いろいろなお話が展開されました。

「一汁一菜」という日本の原点のような献立は、質素でありながら豊かです。煮干しで出汁をとった単純な 味噌の汁に沢山の野菜や油揚げ、豆腐などの「具」を加えることで申し分の無い健康食品になります。これに加えて、洗い上げてから「笊」で水気を切りつつ、米に水分をうまく含ませてから炊きあげたご飯に、添えた漬け物があれば、もうじゅうぶん、、たまに「焼き魚」がのれば、家族は笑顔になります。メインデッシュを作らなければ、と頑張らないで、その時に手に入る材料で簡単な一皿を考えること、そのためには基本の料理をしっかりと手に覚えさせることが大事なのではなかろうか、このようなことを、外国で経験されたさまざまな「食の世界」を折り込みながら話をされました。

しっかり見ることで美味しさを感じ、食べて食材の善し悪しを判断する力を磨かないと、「賞味期限」や「消費期限」などの日付に頼ることしか出来なくなり、ネットの書き込みや、有名人の言いぐさに振り回されてしまいます。食にたいする自分なりの感性を磨いていかないと、食の世界はどんどん貧しくなっていきます。

お話を聞いて、簡単なことを「きれい」にまとめるワザを身につけないといけないと痛感したのですが、これがまた、なかなか簡単ではないと思っています。毎日の献立に追われ、やっつけ仕事になってはいないか、、反省の意味も交えて、今夜は連れ合いジジの「誕生祝い膳」簡単な「一汁一菜」をしつらえようと思っています。 (2016.11.15.) )

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