人は、ある目的に向かって行動を起こす時、最初のプロセスとしてその目的に関連したモデルを基にその模倣から入って行くのが一般的である。
中国武術の場合、先に述べたとおり当時、中国武術関連書籍の9割を占めていた松田氏の著書なりが後者の模倣の対象になるといえる。この部分が重要なポイントになるといえよう。
本来、ある一つの分野で通常の「科学的雑誌」があれば、その対局にわずかに「オカルト雑誌」があるというのが、情報のバランスとして一般的といえる。しかし、「日中国交回復(中華人民共和国情報公開)」以降20年間の中国武術情報は、明らかにオカルト情報一辺倒で、それに対する科学的情報は1割にも満たないのが現状なのである。つまり中国武術の情報が、一般に対して受け入れられざる状態にあるといえよう。
すなわち、このような状態を形成している大きな要因として「情報メディア」の偏った指向が挙げられる。
このような状況の下に、日本の中国武術愛好家の多くは、情報のバランスの取れないまま、常にその毒におびやかされていると言える。したがって、その毒に侵される人があとを絶たないのも、うなずけそうな気がする。だいたい、その様な情報に耳を傾けるという所に落とし穴があるだが...とだけ断言したいが、そのような情報を誠しやかに語る人は、なかなかに口八丁で巧妙なので、そういったトリックによって正常な精神状態の人が思考を停止させられている場合が多いのも事実だと思われる。
しかし、もともと「オカルト思考、もしくは現実思考薄弱」の人しか、真剣にオカルト情報に耳を傾けないであろうから、必然的に中国武術界が「オカルト人間」に占拠されてしまったというのが、事実に即していると言えよう。
したがって、後からオカルト思考でない人が、中国武術に興味を抱いてその人たちの世界に立ち入った場合、大抵は権威主義によって締め出しを食うか、運が悪ければ、先に述べたように洗脳されてしまう事にもなりかねないと言えるだろう。