中国拳法家の真相


 まずは、「中国武術はオカルトだ」と言われる所以について触れることにする。
 中国が情報公開を解禁した年代(日中国交回復=1978年、日中平和友好条約の締結)前後に出版された書籍、つまり、初めて中国拳法を日本に紹介した書籍がミスリードしてしまった事に原因があるといえよう。
 中国拳法の第一人者として唱われる松田隆智氏は、1975年、東京新聞社出版「謎の拳法を求めて」を出版した。
 それによると「套路は美と力の結晶とか、先人の真剣勝負による必死の体験によって考案された『血と汗の結晶』で、型の反復練習により型を超越して自分を表現出来るようにしているとある日突然真意を悟ることがある」と言っている。
 その後たて続けに出版された書籍の中に、1984年7月10日、日東書院出版「神秘の拳法 八卦掌入門」には、「異次元への入口?-八卦掌」と題してこの様なことを言っている。
 「古今を通じて武術の世界には超人的な奇功を発揮する人が出現する。<中略>神秘的な事跡を伝えられている人は八卦掌の世界には多い。<中略>五メートルを越える城壁に盗賊を追って一瞬に追いついたという。瞬間に次元を変えるテレポートか?<中略>アフリカの魔術師も呪術を行なう前に円周を歩くし<中略>また近代ヨーロッパの魔術師クローリーも著書の中で円型に歩くことをのべている。<中略>武術の実戦的な技術や健康法としての効果を超越し、異次元に入る瞑想的な効果があるとしたら、八卦掌こそ21世紀の宇宙的拳法といえるだろう。」
 つまりご覧のように一番初めに日本に紹介した書籍が、中国拳法は「オカルトである」と宣言しているのだ。だから必然的に、それしか中国武術の情報源がないのだから「中国武術はオカルトなんだ」という認識が一般化してしまったのだ。─この事が原因で、過去に松田氏は中国武術を起源とする空手の「極真会館」から、散々なバッシングを受ける事になったのは有名な話しである。
 しかしながら、松田氏の唱える中国武術観の信仰者は、あとを絶たず現在に至っている。では次に、なぜそのような信仰者があとを絶たないのかについて検証してみたい。

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