なぜかスキーの物理学

スキーは円運動

"リンゴは落ちる"という当たり前の事実は、地球に重力があるからという事実による。これと全く同じで、スキーが曲がるのは、"スキーを曲げるのに必要な、ある力が存在している。"と考えられる。これが物理学の(もっと正確に言うなら古典物理の力学の)考え方である。 簡単のためにスキーの運動を円運動に近似しよう。 スキーが円運動をするのに必要な力は必ず、円の中心方向を向き、その大きさは、

(力) = (質量) × (速度)2 / (半径) ・・・(1.1)

である。この式が意味しているのは、

という事だ。
つまり、
ということである。

少し実感と違うところがあるかも知れない。その理由は先にゆずるとして、事実として、こういう力が働いている事を理解して欲しい。信じられないかも知れないが、これは、リンゴが落ちるのと同じくらい確かな事なのだ。



働く力と実際の感覚は何故、違うのか

先ほど、円運動の力と実際の感覚と違うところがあると述べた。それは多くの人が、"パラレルよりショートの方が、円が小さいのに、力は使ってないよ"とか、"上手い人の方が同じラインでも速く滑れるのに、力は使ってないよ"と、感じているからだ。ではその差は、どこから生まれたのか。次はこの理由を考えてみよう。

パラレルとショート

まず、"なぜ、ショートの方がパラレルより円が小さいのに、力を使っていない気がするか"について、考えてみる。

最初に考えなくてはいけないのは、パラレルとショートの速さの違いだ。一般にパラレルの方がショートより、速さが速い。これが力に大きく影響する。

半径を半分にすると確かに力は2倍になる。しかし、右の図のように、速さが2倍になれば、力は4倍にものぼる。これは、半径の変化より速さの変化の方が力に大きな影響を与えることを意味している。
従ってショート〜パラレルの半径の違いより、ショート〜パラレルの速さの違いの方が、力の大きさに大きく影響をあたえしまう。これにより簡単に”半径の小さいショートの方が力が大きい”という事にはならなくなっているのだ。

次に、実際の半径の変化である。ショートを行う際、板よりも実際の体の半径は、思ったほど小さくなっていない。回転を行うために必要な力は、重心(体の重さの中心=大雑把には体の真ん中くらい)を基準にして考えるために、思ったほど小さくなっていないのである。

最後に、力の使い方である。ショートをする場合、板の返りを利用する。そうすると、ちょうど、バネのようになる。この場合、一番板が沈み込んだとき、大きな力がかかる。これにより、あまり脚力を使わなくても、大きな力が架けられることになる。

上級者と初心者の差

この理由は、もう少し別の説明が必要である。これは円運動をするための力をどうやって得ているかも含めて次回に説明する。


一面 topNEWS 特集 column Reader's forum