ジラルデリが引退した。世界選手権でインタビューを行った彼を見て久しぶりにコラムを書こうと思った。本誌の読者の中にも彼のファンは多かったであろう。かくいう私も、彼のファンであり、毎年シーズン始めには、”今年もマーク、でてるなぁ”と安心したものである。< p >

マーク=ジラルデリ(ルクセンブルグ)は、小さい頃から父親の英才教育を受けて育った。ワールドカップに参戦するようになってからも、父親がマークのトレーニングには常に顔をだしていた。ナショナルチームが彼のプライベートチームになっているとか、チームの方針と父親の意見が対立するなど、様々な軋轢もあったが、彼が33歳までワールドカップで活躍できたのも、父親の存在を抜きに語ることは出来ないだろう。< p >

人間の有酸素能力は、25歳くらいがピークであり、無酸素能力は30歳くらいがピークだと言われている。それに、技術、勝負感、経験などが加味されて、スポーツの引退の年齢が決まる。しかし、それ以上に選手の気力を奪ってしまうものに、怪我がある。ジラルデリの引退も、膝の怪我が大きな理由だ。近年の不調の原因を年齢的なものと考える声もあるが、ステンマルクや、エリカ=ヘスのように、引退する年に優勝する選手もいる。史上初の5度の総合優勝を遂げた鉄人の決断の理由を、あれこれ詮索する前に、凡人である私はお疲れさまと、黙って拍手を送りたい。< p >

ジラルデリのように、親から英才教育を受けた、タイガー=ウッズや、イチローなど、若いヒーローがスポーツで活躍している。どの選手にも共通しているのは、従来の各スポーツの概念を打ち破るような、明るさと柔らかい体の使い方だ。彼らに怪我は似合わない。練習だけでなく知識を身につけることも必要。突発的な事故は防ぎようがないが、正しい知識が怪我を未然に防ぐことがあるのも事実だ。”きちんとした勉強をもう1度やりたい”そう語るジラルデリは、スキーでは怪我に泣いたが、今後の人生で泣くことは、もうない。< /body >


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