ピザはドミノで

ピザはドミノで



 ピッツェリアよりは格は上だがリストランテほどエレガントではない、そういう店にローマで入った。ピザが売り物のその店は、魚介のピザと白ワインという日本人客も多くいて、同様に日本人のわれわれにウエイターは、お定まりのごとく「Vino Bianco?」と聞いてきたが、断固として「酒は赤、飯は肉!」と言ったのも、背ワタを取っていない海老や砂抜きをしていない貝(しかもノー・フレッシュ)のイタリアの魚介類に懲りてきたからだ。あげく、仔牛肉と生ハムの重ね焼きとかその髄がこの世のものならぬ牛脛の煮込み、はたまたパジャータという牛胃煮込み等々を赤ワインでもっぱら流し込んできた。やはり日本で食すそれとは別格で感動したが、飽きたというのでもないが、その店のメニューにトマトと黒オリーブのみのピザがあったので気になって頼んだところ、小麦粉料理の極致に遭遇したといっていい。粉っ気をみじんも感じさせない薄い生地は塩と濃厚な植物のみの味で、ローマで齧ってきたパンやグリッシーニやパスタの思い出と混淆し、沃野に広がる古代の小麦畑を想起させた。小麦粉モノに乾いた気候はつきもので、そういえば日本では戻すのに苦労するワインの栓が、またするすると元に収まるのにはびっくりした。




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