大陸伝授

大陸伝授



 あんな巨怪な国のことを大雑把にはとても書けないが、それでも中国の食文化は南と北とで特徴的に分けられるのではないか。南の米食文化に対し北の小麦というよりは非米食文化、南の醸造酒文化に対する北の蒸留酒文化、といった具合に。しかし貫くものはひとつあって、いまでこそ海鮮だツバメの巣だと騒いでいるが、中国人があくなき執着を寄せるものといったらそれは豚に決まっている。大陸帰りの人間が口をそろえて言うのは、かの国の豚肉のまがまがしいほどの香り高さだが、当の豚はとてもお話にならない飼料によって育てられているという。エサについてはここでは書かないが、大陸で嫁になったうちのおふくろの作るギョーザはたしかによそと違ってうまい。豚のほかにあきれるほどニラをもちいるそれは中華街のものよりも中国の味がして、子供のころから食っていた私にはかの国への郷愁さえ感じる。おふくろは家にいたクーニャンに教わったと言っていた。

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