1997/02/14(FRI)

1997/02/14(FRI)



さて、いずれにしても、サイテーの文体といわれて、そのサンプルがあるわけではなく、わたしとしてはその都度、自分に素直に書いていく他ないわけである。
その一つ一つがサイテーの名に値すればそれでいい。
このコンセプトは、詩を創作する上にも、活かせることになるだろう。
とりあえずは、あまり無理をしないで、ま、どうにかなるさ、といった気分でいよう。
だが、わたしがほんとうに好きなのは、馬鹿々々しさだ。D・リンチ

それにしても、ずいぶん春らしくなった。歩いていて、たとえば日陰の、冷たい空気を通過するときにも、カドのとれた優しい感触が首筋を撫でる。空気の芯が、温まっているのだ。立春からまだ一週間も経っていない。
空気の、いや、空間の全体に、大きな変化が起こっているのだが、この変化を変えることは、やはり、何ものにも、たとえ公害を作りだした人間にもできないようである。
自然をいじくりまわして、さんざん悪さをしてきた人間も、自然の芯には指一本触れることはできない。
そこでは、人間は自然から仲間外れにされて、宙をさまようしかない。

わたしたちの出番はこういう時ではないだろうか。
わたしたちは人間などに構わず、自然と遊んでいればいいのだ。
憎いとか嫌いとか思っていた連中のことも忘れてしまったよ。
もういいんだ。追求しないよ。終わったんだろう、きっと。
どいつもこいつも嘘みたいに忘れてしまった。
もうそのゲームは、終わったんだ。放免してやるから、どこへでも飛んでけえ。
とにかく、自分でも不思議なくらい拘りというものがない。

わたしは、たとえばなぜ本を読まないのだろう。思うに、わたしは好奇心というものがまったくと言っていいほど、欠如している。興味というものがもてないのだ。わたしに興味があるのは、わたし自身だけではないだろうか。わたしは、早い話が、このわたしについて書かれた本であれば、熟読するだろう。でも、また、これが実際はどうだか、分からないのだが。

興味がもてない。好奇心が湧かない。電源にコンセントが入っていないのだ。明かりがついていない肉体。これじゃ何もしようがないや。

いっそのこと、何か身代りになってもらって、そこで、すごくいい加減なセックスでもするのはどうだろう。なんじゃこれは、みたいな。面白いかもしれないよ。
もういいよ、なんでも。もう一度、また、路面に電車が走るよ。必ずそうなる。

美代ちゃんも戻ってくる。ロープが宙を飛び交う。クレーンは空中高くジャンプする。そうなったら、もう他のことはどうでもいい。なんでもいいんだ。ほんとに。ほら、アホが今朝もやってるだろう。ほら、そこにアホがいるじゃない。そこにもいるじゃない。至るところ、アホだらけじゃない。みんなやってるだろ。アホなことを。それですよ。ね、アホ言ってると、こうしてピリが文頭にきちゃった。それも二度も続けて。ね、テキメンですよ。(何がテキメンなのかさっぱり分からない。)
それにしても、アホ言ってると、気持ちいいですね。最高の気分にだってなれようというもんですよ。アホは体にもいいしね。最高ですよ。言うことなし。

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夏際敏生日記 [1997/01/21-1997/02/22] 目次| 前頁(1997/02/13(THU))| 次頁(1997/02/15(SAT))|