豪華な坂

豪華な坂
片野晃司


夢を見た。

そこは道玄坂くらいの、両側をビルで固めた緩く右にカーブするだらだら坂である。その坂では今、新興宗教のパレードが佳境に入ったところなのだが、そのパレードの様子は実に見事な景観なのである。
先頭をゆく山車には座布団くらいに押し広げられた薄い金箔が満載されており、着飾った娘らがそれら金箔を両手いっぱいに抱えては道行きに振りまいていくのだ。金箔は軽いから道いっぱいに広がり、風に乗って両側のビルに挟まれたこの空間を満たしていく。
しばらくして山車が坂を下りきると、今度は信者らが口々に感嘆の叫びをあげながら坂に敷き詰められた金箔の上を滑り下りていくのだ。尻で滑る者、腹で滑る者、仰向けになって背中で滑り降りていく者。皆、肌を金箔だらけにしながら笑いあい、金箔の舞う坂道をつぎつぎと前の者に続いて滑り下りていく。
僕はそんな彼らの豪華なパレードを横目に見つつ、歩道を歩いている。彼らに対して関心がないわけではないが、それよりも、今日は買い物をするためにこの坂に来ただけなのだ。店のショーウィンドウを覗きながら僕はゆっくりと坂道を下っていくのだった。

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