怖い話(3)

怖い話(3)
大森吉美


 私の怖い話が効いたのかどうかはわかりませんが、先日から東京では大雪が降り、全国的に寒くなってきている様子です。
 まぁ、いくらなんでもそんな、怖い?話はないでしょうが。でもこの、「まさか」っていう思いは結構怖さに通じているものではあるのですが。
 私の高校時代の友人の「こっくりさん」にまつわる話はほんとうにあった、「まさか」という怖いお話です。
 彼女は地元の英語の弁論大会で優勝するほど頭のいい人でしたし、今は、航空会社のエリートの奥様になっている、美しい人でもあります。その才色兼備の彼女が、ある日、右腕を骨折して青い顔をして学校にやってきました。
 その頃、学校で流行っていたのは、あの「こっくりさん」でした。こっくりさんは、北の窓を開けて五円玉を決められた文字盤の上に置いて、その上に人差し指(あるいは小指だったかな?)を軽く乗せて、目をつむります。そうして「こっくりさん、こっくりさん、来てください」と呪文を唱えてから、こっくりさんに占って欲しいことを、声に出して聞くのです。
 そうすると五円玉が勝手に動いて答えてくれるということでした。彼女は、友人の一人からそのやり方を教えてもらって、家でこっそり占ったのだそうです。
 どうして? 彼女は家で一人で占ったかは、彼女が密かに想いを寄せていた憧れの人を誰にも知られたくなかったからなのです。
 こっくりさん、あの人は私を好きでしょうか?
 そうするとその答えは「はい」でした。彼女は、まさか? と思って調子に乗ってたずねました。
 こっくりさん、あの人から電話はかかるでしょうか?
 その答えも「はい」でした。
 でも、彼女は学校では、遠くから彼を見てるだけで話したことすらなかったのです。まさか? とまたしても彼女は思いました。本当は、そんなことをしてはいけなかったのに、彼女はさらにたずねました、こっくりさん、それは、いつ?
 その答えは、なんと「きょう」だったのです。
 今度は、彼女は思わず、「まさか!」と声に出して言ってしまったのです。そのあとに「こんなの嘘よね〜」とも。ところが、その数分後に本当に電話がかかってきたのです。
 彼女はもう夢見ごこちでした。でもその電話を切って自分の部屋にもどろうとした時に(彼女の部屋は二階だったから)階段から転げ落ちてしまったのです。しかも、その階段の上にはこっくりさんが来るようにと開け放たれた北の窓がありました。彼女が折った腕は、ちょうど五円玉に乗せていた右手のほうだったのです。
 彼女の話を聞いた私は、思わず「まさか!」と言いかけて慌てて手で口をふさいだものでした。
 こっくりさん、本当にいるのでしょうか? 確かめるのも怖い話ですよね。

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