怖い話(1)

怖い話(1)
大森吉美


 昨日の夜(12月16日)放送の「ポケモン」と言うアニメを見て大勢の子供が癲癇をおこしたそうだ。我が家の子供も見ている番組だから、ドキっとした。怖い話である。幸いにも我が家の子供たちは、たまたま愛犬の散歩に出かけていて帰りが遅かったものだから、難を逃れたのではないかと思う。
 そういう出来事も実際にあった「怖い話」だが人から聞いた本当か嘘かわからないような「怖い話」は意外と多いような気がする。それに「怖い話」と言うのは、時と場所で盛り上がるものではないかと思う。学生時代の合宿やコンパで、夏になると必ず誰かが「怖い話」をしていた。そういう思い出は誰でも持っているだろう。
 怖い、怖いと思いながら、耳を傾ける。背筋がぞぞっとする。それでも聞いてしまった話。
 ここに例として書こうかどうか、少し悩んだ。どこかの本にまとめてあって、無断借用になりはしないかと思ったからだ。でも、人から人へ伝わるうちに形も変え登場人物も
変わっているかもしれないし。(この辺の判断は、片野さんや清水さんに任せてしまおう。)
 では、人から聞いた「怖い話」。季節外れの暖冬がこれで少し寒くなれば、いいような気もする。

第1話 美しい子

 美しい女は美しい男と結婚しましたとさ。
 当然のように生まれてくる子供も美しい子だと思いませんか?
 ところが、二人のあいだに生まれたのは、世にも醜い男の子だったそうな。美しい夫婦は、驚き失望もしたけれど、それでも、自分たちの子供だもの、と我慢して育てていたそうです。
 男の子が五歳になった夏。三人で海に出かけました。
 遊ぶうちに男の子は、母親に「おかぁさん、おしっこ」と言いました。
 海だから、トイレなんてなかったのです。砂浜にするのも恥ずかしいからと、少し離れた草むらに男の子を連れていったそうです。その草むらの向こうは崖になっていました。その崖の上から、おしっこをさせようと男の子を抱えて、美しい母親はふと、
「こんな醜い子はいらなかった。このまま手を放せば、これから恥ずかしい思いをしなくて済むわ。」
 と思いました。
 そして悲鳴をあげながら、男の子を落としました。男の子は崖の下で死にました。
 それから、数年後、美しい夫婦にはまた子供が出来ました。それはそれは美しい男の子でした。
 やはり、男の子が五才になった夏。三人で海に出かけました。この男の子も「おかぁさん、おしっこ」と言いました。母親はまたあの崖の上から男の子におしっこをさせようとしました。
 抱きかかえておしっこをさせようとした時、男の子は言いました。
「今度は落とさないでね。おかぁさん。」


::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 もしかして、それ知ってる知ってる、という人も意外に多いかもしれないですね。それに最後の一行を知ってしまえば、なんということはナイ話でしょう? それにしても最後の一行はインパクトの強い一行だと思いませんか? ミステリーの醍醐味はこういうモンかもしれないとふと思いました。
 蛇足ですが、この話をここに書く前に「例」って、私、書きましたよね? パソコンで変換したら、何回、打っても「霊」って出たんですよ。
 怖いですね。
 後で御祓いにいこうと思います。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::

|
目次| 前頁(花日記(11))| 次頁(怖い話(2))|