ポエジィな機械たち4 住宅

ポエジィな機械たち4 住宅
片野晃司


「住宅は住む機械である」と言ったのはコルビュジェだったが、その言葉は当時の建築界に大きなショックを与えたことは想像に難くない。人間の動作を補助し、換気し、日射を調節し、衛生的に保つ設備を搭載し、食事を調理する加熱器を装備し、外界の過酷な環境から生活を防御する。それは人間を快適に生活させる機械と言えるだろう。
 住宅の見取り図を見るのは楽しい。住宅の写真集も楽しいものである。見るものはその住宅の中にいる自分を想像する。ダイナミックな空間構成、計算された色彩、そこでの生活を想像し、楽しむことができる。住宅には語彙があり、引用がある。全く新しい創造もある。日本の伝統的家屋からの引用、南仏風のインテリア、北欧の家具、それぞれに語彙があり、適切な引用によりコーディネートされる。
 住宅展示場は楽しい場所だ。たいていは「これはひどい」と言いたい設計だが、なかには面白い空間を演出しているものもある。正面から見た外見、玄関ドアを開き、玄関ホール、リビング、ダイニング、テラス、キチン、洗面、バス、階段、バルコニー、寝室....動線に沿ってストーリーが展開され、想像力を掻き立てる。
「住宅は住む兵器である」と言い換えてみようか。「住宅は住む宇宙である」と言い換えてみようか。
 つまるところ、住宅は機械であり、兵器であり、宇宙であり、ポエジィを与えるものである。
 住宅については、またいつか書くかもしれないが、今回はこれで。

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