ポエジィな機械たち3 スポーツカー

ポエジィな機械たち3 スポーツカー
片野晃司


少々間が開いてしまった。昨日沢山文章を打ったせいか、頭がはっきりしない。

僕はスピードが好きだ。だからスポーツカーが好きだ。
加速する、重力が傾いで水平になる、高まっていくエンジン音(ここでも音は重要である)、意識は流線形に突き出され、アスファルトは平らになる。

友人がポルシェを持っている。928S4。トランスアクスルの5リッターV8(排気量は記憶が定かでないが)は低速時にはドラムを打ち鳴らすような排気音を発生する。911のフラット6が高速域までそのビートを持続させるのに対し、928のそれは速度を上げるにつれてスムーズに回転する。
彼の車に同乗して常磐自動車道を走ったとき、(それは常磐ハワイアンセンターへ行くときだったが。知っていますか? 常磐ハワイアンセンターを)彼の車は制限速度を実に越えていたのであったが、しかし、僕はなぜか眠気を押さえることができなかった。到着して目を覚ました時、彼から聞いた最高時速は信じがたいものであった。

3年前の新婚旅行で僕たちは石垣島に行った。2月の石垣は西方から「みー風」という不吉なやや肌寒い風が吹きつけるのではあったが、それでも20度ほどはあった。
そこで僕たちはレンタカーで島を一周することにした。選んだのはホンダのビート。
ミドシップの660cc。馬力は35馬力程度だったろうか。一番の魅力はオープントップだ。道端に停めれば左手一つで傘を扱うように開閉できる。大陸からやってくるやや重い雲はちぎれながら上空を通過し、雨かと思えば照り付ける直射、めまぐるしく変化する天候にも僕たちは快適にフードを開け閉めしながら島を巡ったのであった。
馬力は非力だが生意気にもなかなかいい音を奏でるエンジン、そして小さな車体、スタートしてしまえばクラッチを使わなくてもスパスパ入るシフトレバー、スピードはせいぜい60キロあたりであっただろうが、なかなか心地よいスピード感が味わえたのであった。

スポーツカーの面白いところは新しければ良い、ということではないところだ。セダンなどの実用車は新しいに超したことはない。しかし、スポーツカーは古くとも魅力的な車は数多い。ジャガーのEタイプ、メルセデスベンツの昔のSLK(石原裕次郎が乗っていた)、現代では決して優れたスペックではないにせよ、なんらその魅力は変わらない。当然時代と共に忘れられていったスポーツカーも数多いのではあるが。

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