- ・青菜
- 所謂オウム根多。と言っても宗教とは関係有りません。人から教わった事を真似て失敗するという落語によく出てくるパターン。つまり鸚鵡根多。数ある鸚鵡返しの中でも大旦那やら夏の風情やら、結構難しい噺。
- 噺の中に出てくる柳かげは甘口のお酒、本直しのことで、飲用に造られた「みりん」のことです。
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- ・家見舞
- 別名「肥瓶」。寄席でよくかかる噺。順を踏んでいって最後に破綻するパターンで、落語を聞き慣れていない人にも分かり易い。ウケを狙って汚くやるとかえってウケない。
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- ・一分茶番
- 前半だけ「権助芝居」として寄席でかかります。全編通すとちょっとは芝居の素養もいるので結構大変。権助の正直、無骨のキャラクターは、すれた江戸っ子ばかり出てくる中では与太郎と並んで貴重。
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- 第拾六番蔵出しの寸釈をご覧下さい。
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- ・井戸の茶碗
- 元は「細川茶碗屋敷」と云う講釈根多。志ん生師匠は一時期講釈師に転向したこともあって持ち根多の中に講釈根多が多い。もっともこの噺は古い速記があるので志ん生師が移植したものではない。大層な善人が絡み合ってハッピーエンドに終わるところは、いかにも講釈根多らしい。
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- ・浮世床
- これも寄席でよくかかる噺。あたしの師匠は高座へ上がる前根多帳を見ながら「わいわいがやがやは出てるかい」なんて事を言いました。これとか「寄合酒」「酢豆腐」など大勢で事に興じる噺を云うんですが、よく雰囲気を表してます。ですから大勢いるように聞こえなくちゃいけない噺。下げまでやると30分はある。
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- ・鰻の幇間
- 志ん生文楽が演じてお馴染みの根多。それぞれの味があって面白い。文楽師の幇間は品があって、野幇間にはもったいない。その点志ん生師のが合っている。大師匠はこの夏の噺を冬場、幇間を巻く客にドテラを着せてやっていたてぇから凄い。細かいところの違いを見ると、杯は文楽が酒屋と天麩羅屋の貰い物、志ん生が入営記念。徳利の絵が文楽大黒と恵比寿が相撲を取ってる、志ん生が狐が三匹じゃんけんしてる。床の間の掛け軸が文楽が偽物の応挙の虎で丑寅の者は鰻を喰わないとなる。志ん生はお得意の二宮金次郎。あたしのは、教えない。(^^;;
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- ・鰻屋
- 彼の文楽師匠の名演でお馴染みの「素人鰻」を鼻の円遊がおかしみだけを取って拵え直したもの。と、楽屋内で伝わっていましたが、円遊の速記を見ると文楽師とほとんど同じ。下げも「我慢をすれば食べられます」になっている。もう、嘘ばっかり。「士族の商法」の遊三の流れで、「全くの噺が」の五代目三升家小勝の速記が現在の「鰻屋」に近い。川向こうのビール工場は無くなってしまった。
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- ・厩火事
- 髪結いの亭主なんてぇ言葉がありますが、正にそのまんま。しかし数ある噺の中でこのお崎さんほど可愛らしい女房はありますまい。年上の女房ってみんなこんな風なのかしら。文楽師の十八番でした。文楽師が十八番にした噺は遠慮して他の噺家はやらないことが多いのですが、この噺は当時でもやり手が多い噺でした。圓生師が圓楽師の厩火事を聞いて「指かなんか怪我しなかったかと云う科白を入れなくちゃいけない。髪結いは指を怪我したら仕事にならないからまず指を心配する」と言ってましたが、なるほど。下げは秀逸。
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- ・大安売り
- この噺はたしか左談次さんが上方から持ってきたんだと思います。本牧亭で若手花形落語会をやっていた頃ですからもう随分前になります。左談次さんのフラに合って客席を爆笑させていました。あたしも彼から教わったんですが、もう暫く演ってません。そろそろ思い出してみよう。
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- ・大山詣り
- 上方からの移植噺というのですが、江戸っ子気分が横溢した噺。この手の噺は江戸っ子の気性に合わせてさっぱりと演じた方が嫌味にならない。以前、落語協会の夏の寄り合いで大山詣りをしたことがありましたが大層不評でした。そりゃそうで、幾らケーブルカーがあるからと云ったって、浴衣を着て雪駄がけで酔っぱらって登る山じゃありません。
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- ・お菊の皿
- 本来は播州と云うことで田舎弁でやるのですが、なにかかったるいので江戸に替えました。替えてしまうと番町皿屋敷になってきて、侍も青山播磨になり筋書きも違ってきてしまうのですが、承知の上と云うことでやっています。お菊が段々とスレて鼻についてくる演出はあたしのもので、あたしが稽古した人が又稽古をして孫の代までいってまして、現在此の噺をやる七、八割はあたしから出ています。
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- ・臆病源兵衛
- あたしの師匠の馬生が時々やっていた珍しい根多。前半の源兵衛が怖がる辺りは結構面白いのですが、途中で主人公が変わってしまい、これからどうなるのかと思うところで終わってしまう何処か半端な感じは否めません。此の下げに変わる良い下げが有ればよいのですが。
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- ・唖の釣
- 以前は良く寄席で聴かれたのですが、差別用語がしきりに言われるようになってからほとんど聴くことが出来なくなりました。そうした理由でなくしてしまうのは惜しい気がするのですが。亡くなった柳朝師のこの噺のおかしさは格別でした。此の手の噺は演者のフラが大分影響してきます。
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- ・おせつ徳三郎(花見小僧)(刀屋)
- 「第三十一番蔵出し」の寸釈をご覧下さい。
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- ・お化長屋(上)
- あたしの師匠が池袋でこの噺をかけて、「冷たい手で顔を」「ぎやぁー」のくだりをクサくやったところ、女性客が師匠に負けない声で「ぎやゃあぁーー」と叫んだので流石の師匠も高座でウケてしまい「クックッ、そんなに驚かなくても」と暫く噺が続けられなかったことがありました。この噺も、(下)つまり後半までかけられる事はほとんどなくなってきました。志ん駒兄さんが晩年の志ん生師匠に(下)を稽古して貰っているのを隣の部屋で聴いていましたが、「その拳固の硬いの何の、まるで藤猛みてぇ」なんて言ってましたっけ。のべつくすぐりを考えてたんですね。
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- ・親子酒
- 小さん師匠のが素晴らしく何度聴いても笑えました。どこもいじりようがないほどですが、又、負けずにあたしの師匠のも面白かった。「お父っつあん只今帰りました」と部屋に入ってくるところは真似できません。あたしは師匠のこの手の噺が大好きなんです。
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- ・火焔太鼓
- 御存じ古今亭門外不出の根多。だったんですけどここの所結構外に洩れてます。あたしは師匠に教わりました。師匠は教えたくない様だったんですが、今松兄さんと二人で、何日か続けて師匠の家へ掃除に行ったりしてやっと教わりました。師匠なりの面白さがありました。師匠は三百両と言うところを間違って三十両と言って、稽古の後「うちの親父は三百両でやってたけどそんなにする訳がない」と言い訳しましたけど、「ソレ、五両」ではあまり驚けない。この噺はうっかりすると調子だけで持っていこうとしてしますますが、やはりハラはきちんとした上でないとウケません。
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- ・かぼちゃ屋
- 典型的な与太郎噺。三代目の小さんが上方の「みかん屋」を移植したもの。初めて落語研究会に出した時に「唐茄子屋」として出したものですから、落し噺の人がどんな人情噺をやるのかと興味津々で行ったところ「かぼちゃ屋」だったという話があります。この頃は志ん五さん系統の過激な与太郎が流行っていますが、やはりほのぼのとした小さん師匠の与太郎が絶品です。あたしの師匠の与太郎はいささかクサくて、志ん五流与太郎の原型を思わせます。(^^;;
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- ・蟇の油
- 正蔵師匠が良く寄席の高座にかけていました。あと、柳好師のが有名ですが、あたしは生で聴いていません。この口上の中で「はばかりながら天下の浪人」と言うところを、ここは「はばかりながら天下の町人」でなくてはいけないと言う師匠がいるのですが、どうなんでしょう。確かに後年は町人が形だけ替えてやっていた場合も有るんでしょうが、どうも語呂が・・・。
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- ・替り目
- 寄席で良くかかる根多のベスト3に必ず入る根多。噺の中には下げまでやらないと何故その題名だか分からない根多が多いのですが、これもその内。大概は「元帳見られた」で下げる場合が多い。もっとも昔からそのようで昔の根多帳に「元帳」と付けた場合もありました。志ん生師のが有名ですがあたしは先年亡くなった志ん馬師のが軽くおかしくて好きでした。軽さを持った噺家が少なくなるのは残念です。
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- ・勘定板
- 運つく噺。大概は「国訛り」を振ってから入りますが、あたしは本文だけ時間のない時に3分位でやります。汚い噺は綺麗にやれと云うのが鉄則であたしも実際は脱糞をせずに下げに持っていきますが、下げのウケが薄い。つまりここは先代文治師匠のように「コテコテとやって」ハテこの後どうしようか考えているときに算盤が転がるので下げが生きるんですね。ですから今度は文治師の型でやろうと思ってますが度胸がない。
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- ・堪忍袋
- 先代金馬師や柳枝師がやっていました。柳枝師の「円満とは円が満つると書いて円満」てのが耳学問的でおかしい。最後に罵声がはじけるところは言葉が逆さまに出なくちゃいけないと言う師匠もいますが、ちょっと理詰めです。ある噺家が下げを楽屋から前座みんなに罵声を言わせるという演り方で下りましたが最後に「下手クソ」てぇ罵声が聞こえてムッとしてそれからやめてしまいました。
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- ・看板のピン
- これも典型的な鸚鵡返し。「青菜」でもそうですが鸚鵡返しの根多はその本来の人間と真似する者との差が大きいほどおかしい。この噺も真似たいと思うほど元親分の格好良さを描くのがポイント。下げは秀逸なんでしょうがあたしなぞは気が小さいから読まれてるような気がして。
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- ・雁風呂
- 「十七番蔵出し」の寸釈をご覧下さい。
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- ・祇園会
- 八代目文治師の音が残ってます。ちょっとクサいが結構なものです。でも小さん師匠とあたしの師匠は楽屋であの録音は晩年のもので良くないと言ってました。二人ともこの八代目文治は昭和の名人の一人に入れていましたですね。亡くなった志ん馬師匠が前座の時分に神田の立花で道具入りの芝居噺を十日間演題を違えてやったことがあるそうで、奥の深い噺家だった様です。若手がこの噺をやったのを小さん師匠が聴いて「この噺は茶屋遊びに慣れている旦那の風情が出なくちゃいけねぇ」と言ったそうです。
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- ・義眼
- 何と云っても志ん生師のがおかしい。医者がメガネを覗いて奇声を上げるところは何度聴いても笑えます。こうした噺は圓生文楽の口調ではやはり面白くない。年を取ってこんな噺を嫌味なくサラッとやれる噺家にになりたいものです。
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- ・禁酒番屋
- 現在ほとんどが小さん型です。完成されているという気がしますが、実はあたしの師匠のこの噺も面白い。小さん型とは別バージョンと云っても良いほど持って行き方もくすぐりも違います。何せ小便を仕込む時には女中にやらせる。(^^;;誰の型だったんでしょうか。作品としての出来は良くありませんがそれなりのおかしさが有りますので、いずれ馬生型として演ってみようと思っています。
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- ・黄金の大黒
- 登場人物が多いので人物の使い分けの稽古に良い。二つ目の時分にある勉強会にこの根多を出しました。何でそんな噺をかけるんだと言っていた若手の評論家が聴き終わってから「やぁ、聴いてる内に雲助が消えたよ」てぇのを聴いて思わずニンマリしましたが、その時分は稽古ではっきり使い分けていたので現在はぞろっぺいです。それほどの根多じゃありませんし。やっていて楽しい噺。
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- ・金明竹
- この噺は前座の時分に弟子四人ばかり並べて師匠に稽古を付けて貰ったんですが、旦那が与太郎に小言を言いながら出かける時に与太郎が「行ってらっしゃい」と言った間が何ともおかしくて四人とも吹き出してしまい、「俺はお前達の前で余興をやってんじゃないんだよ」と言われました。同じ小言は志ん生師匠にも言われたことがありましたが、してみると師匠も大師匠の稽古の時に吹き出したことが有るんでしょうか。
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- 代表的な前座噺です。
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- ・首提灯
- 自分の首を斬られて気がつかないというナンセンスな噺ですが違和感はありません。顔の長い人の方がむいていると言われてますが、丸顔の小さん師匠のも結構です。初めて聞いたとき本当に首が落ちたように見えました。ですからやはり芸が容姿の向き不向きを上回るということですか。ただ小さん師匠の首提灯は高座を重ねるほどに侍が町人の首を斬る時の仕草がクサくなってきました。(^^;;
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- ・首屋
- 小品ながら下げのよく利いた噺。あたしの師匠ので首を切られる支度をする時にうなじの後れ毛をかき上げる仕草がやけにシリアスでかっこよかった。あたしが前座二つ目だった頃の昔に、今の川柳さんが池袋演芸場あたりでお客の入りが薄いとこれを演っていました。当時の楽屋かるたに「ウスいと首屋」と云うのがあったほどです。
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- ・汲み立て
- 鯉丈の「八笑人」からとった噺。いかにも江戸の落し噺という気がしてあたしも好きな噺です。ふられ連中が炎天下太鼓を叩いている様もおかしいが、なんてったって下げの奇抜なおかしさといったらありません。シモがかるということで評価を下げる人もいますが、当時の罵倒語としては常識にあったもので上々の下げと思います。
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- ・蜘蛛駕篭
- 上方の住吉駕篭の焼き直し。結構登場人物も多く難しい噺。下げ近くで「幾らだい」「一分頂きたいんで」「二分に負けておきなよ」というのがあるんですが、ある先輩が「いやぁーあそこで先に二分頂きたいんでと言っちゃったんだよ。いけねぇと思ったけど仕方がないから四分に負けておきなよって言ったんだけど語呂が悪くて驚いたね」と、ここまでは良かったんですが、その後に「そんならいっそ五分と言っときゃ良かった」五分はちょっと・・・。
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- ・悔み
- 悔やみの口上の滑稽な様子を噺にしたもの。実際に親身な人が悔やみを述べるのは胸が詰まる場合もありますが、さほどでない義理の悔やみではおかしな事を言う人があります。結構現代にも通じるところが多々あります。先代の圓蔵師のシラッとしたところがおかしかった。
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- ・蔵前駕篭
- 江戸前らしい絵になる好きな噺です。当時の宿駕篭のかき手は身体の立派な刺青の入った若い男が多かったそうです。その流れが残っていたようで、あたしの叔父さんというのは先年亡くなりましたが、吉原の大門口近くのこの節名が売れている「伊勢屋」という天麩羅屋なんですが、昔吉原の人力車の車夫はガタイの良い刺青をした威勢のいいのが多かったと言っていました。先代馬風師がこの噺を戦後に置き変えて「蔵前トラック」として演っていたそうです。「我々は由緒あって進駐軍にお味方をする浪士の一隊である」とやって楽屋を大ウケさせたそうです。
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- ・強情灸
- いかにも能天気な江戸っ子の出てくる噺。動きも多く派手ですので寄席でも良くかかります。だいぶ以前にある噺家が実践落語とか称して、高座で実際に腕にもぐさを乗せて火をつけてやったことがあります。見事にやけどをしました。本当にやっちゃいけない。(^^;;
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- ・庚申待ち
- 「宿屋の仇討」という噺がありますが、あれは上方の「宿屋仇」の移植で、この噺がそもそもの江戸の「宿屋の仇討」になります。志ん生師が演っていましたがところが大師匠は錯覚がありました様で、噺の中では大黒様を床の間に飾っていますが、それは庚申待ちではなく甲子待ちになります。事実以前の速記では甲子待ちになっています。江戸の風習が表れて貴重な噺。
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- ・黄金餅
- 「第拾参番蔵出し」の寸釈をご覧下さい。
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- ・小言幸兵衛
- この幸兵衛さんのタイプは結構見かけるものです。先代の円蔵師がこれでした。小言の種を作るために動いているようなところがありました。実はあたしはこの噺は一度しか演ったことがありません。この噺の中に、店を借りに来た男の女房に子が出来ないと聞いて、それを幸兵衛がくさすような小言を言うのを、男が怒って啖呵を切るところがあります。あたしが根多下ろしで演った時にその啖呵の部分で客席から一人拍手をした人がありました。中年の女性だったのですが、恐らくその女性も子供ができなかったのでしょう。してみれば幸兵衛が子の出来ないことをくさす所はさぞ辛かったのだろうと気づいて、それ以来演らなくなりました。
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- ・後生鰻
- 小品にして佳品。本来の落し噺という気がします。小圓朝師の端正な演じ方も結構でしたが、やはりこの手のナンセンスは志ん生師に止めを刺します。「そこの赤ん坊!!」の所などは抱腹モノでした。ある噺家がこの噺の下げを、鰻と赤ん坊じゃ大きさが違うのだから、と「ドボ−ンッ」とやったところ、投げ込んだのは赤ん坊でもご隠居の気持ちでは鰻なのだからやはり「ボチャ−ン」でなくてはいけない、と、これは誰の芸談だったかは忘れました。
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- ・五段目
- 忠臣蔵五段目を素人芝居が演じた可笑しみの噺。別名を吐血。以前は、「四段目」や「蛙茶番」などの噺を伸ばして演る時なぞに使われたようです。名人圓喬や品川の円蔵の速記が残っています。どうということはない噺ですが、下げがヤケに可笑しい。あたしは好きです。
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- ・五百羅漢
- 珍品中の珍品。圓生全集にも出ていますが、それとは違います。恐らくあたしがこの噺を演った会に来て下さったお客様しか、この噺の下げは知らないでしょう。そしてそのお客様にも下げを他人に教えないよう固く口止めをしてあります。(^^;;
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- 「第二十番蔵出し」の寸釈をご覧下さい。
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- ・子褒め
- 小学校の教科書にも出ている?と云う、もっともポピュラーな落語。以前鈴本演芸場で一年間にかけられる根多数を調べたところ、ダントツの一位でした。典型的なおうむ返しの噺で、初めて落語を聞くようなお客様にも分かり易いところから、まず寄席でかからない日はありません。あたしが末廣亭の夜のヒザ前に上がった時、「子褒め」が出ていない時がありました。「よし、子褒めだ」と言ったら前座さんが「師匠、折角ここまで出てないんですから、今日は子褒めの出ない日にしませんか」と言われて止めました。それほど子褒めの出ない日はないのです。
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- ・小町
- 「道灌」の前半部分の小野小町のところで「恋に上下のへだてはない」の冗談落ちになります。ですからこの小町も入れて道灌をやると結構な長さになってきます。考えてみれば昔の人は深草の少将、児島高徳、太田道灌などの故事を当然のように知っていたんですね。
- 確かこの噺は志ん生師に稽古して貰っているはずですがはっきり記憶にありません。何せ師が話していることの半分はわかりませんでしたから。
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- ・駒長
- 第弐番蔵出しの寸釈をご覧ください。
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- ・権助魚
- ここ十年くらいの間に急に流行り出した噺です。あたしが前座二つ目時代にはほとんど聞いたことがありません。先代の小勝師匠あたりが時々やっていたくらいでしょうか。噺にも結構流行り廃りのあるものです。
- 典型的な権助噺です。旦那と奥様の間に入ってツラい役所ですが、その生来の天衣無縫さで助かっています。
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- ・権助芝居
- 一分茶番の前半部。
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- ・蒟蒻問答
- お馴染みの噺。この噺は下げが仕方だけに音だけではなんだか分らないですね。いわばインテリと無知が対決する噺なんですが、インテリがその弱さを暴露して勝手に転んでしまうのがおかしい。禅からすれば蒟蒻屋の親方のが大分上と云うことになるんでしょうね。ゴロツキと寺男のやり取りの可笑しさも見逃せません。しかし、蒟蒻なんて漢字は噺家にならなかったら知らなかった。
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- ・権兵衛狸
- 民話風なのどかな噺。あたしが子供の頃は先先代の小勝師のを良く聞きました。「狸が戸をたたく時はしっぽでたたくと音がしないから、頭の後ろでたたく」なんてもっともらしく言うのがおかしかった。先代馬風師は夜がふける場面で「空にはまぁるいお月様」から始まっていろいろと物思いにふける所で時事の話題を入れてウケをとっていたそうです。今でもその形を真似てやる噺家もいます。
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- ・佐々木政談
- 「第二十四番蔵出し」の寸釈をご覧下さい。
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- ・真田小僧
- 寄席でも良くかかるお馴染みの噺。元は上方根多を三代目の小さんが移植したようです。三代目が上方から移植した根多はかなりな数になります。今度調べてみよう。今でも噺家が子供の枕で良く使う「懲役ごっこ」のくだりは、すでに三代目の速記に見受けられます。してみりゃ三代目の恩恵にあずかった噺家の多い事。今は時間の関係で途中で切って下りてしまいますが下げまでやらないとなぜこの噺が「真田小僧」なのか分りません。下げまでやると真田三代記の件などがあって結構難しい。「家の倅も薩摩へ落ちた」と下げるところを「家の倅も真田へ落ちた」と間違えた噺家は数え切れません。
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- ・佐野山
- 別名を「谷風の人情相撲」と云います。元は講釈根多でしょうか。あたしの師匠以前にこの噺をやった噺家を知りません。師匠が始めたのかそれとも志ん生師がやっていたのか、どちらにしても落語としては新しい。ほとんど地噺に近い噺です。この噺を聞いて「八百長だっ」と怒り出す方は、余り落語を聞かない方がいいか、たくさん聞いて料簡を直すかして貰いたいところです。あたしの師匠のほかには、ずっと以前の圓楽師の快演が忘れられません。
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- ・ざる屋
- これもあたしの師匠が上方の「米上げ笊(いかき)」を直したものの様で、他に演り手を知りません。師匠はよく寄席でかけていました。師匠のこの噺の主人公は他の噺にはない独特のキャラクターで、師匠ならではでしょう。実におかしかった。紀伊国屋寄席に師匠がこの噺を出してバカ受けで、おしまい近くの「で、お名前は何とおっしゃる」「へぇ、上田昇てんで」で大爆笑になりました。ところが師匠はその日もほろ酔いだったせいでしょうか笑いの収まったところで「で、お名前は何とおっしゃる」「へぇ、上田昇てんで」と繰り返してしまいました。さすがに二度目は受けませんでした。三度やったら受けたかも、とは楽屋雀の言。
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- ・三軒長屋
- 江戸時代からある古い噺です。大変長い噺で、上下に分けたりリレー落語でやったりする事が多い。何しろ鳶頭、鳶頭の女房、鳶連中、大家の旦那、妾、武士など難しい役どころが沢山に出てきてたいそう難しい。とりわけ鳶頭の女房の伝法な加減などは難物です。苦労が多いところにもってきて下げは見破られそうな下げで、この先演り手は減るばかりでしょう。演り手に損の出る噺はどうしても敬遠され勝ちで、仕方のないところかもしれません。
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- 「第八番蔵出し」の寸釈をご覧下さい。
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- ・三人旅 発端
- ・三人旅 びっこ馬
- ・三人旅 鶴屋善兵衛
- ・三人旅 おしくら
- ・三方一両損
- ・鹿政談
- ・持参金
- ・死神
- ・しの字嫌い
- ・ジャズ息子
- ・宗論
- ・寿限無
- ・商売根問
- ・新版三十石
- ・ずっこけ
- ・酢豆腐
- ・生徒の作文
- ・千両みかん
- ・粗忽の釘
- ・粗忽の使者
- ・大工調べ
- ※「べらぼう」についての一考察
- ・幇間の炬燵
- ・幇間腹
- ・代書屋
- ・たが屋
- ・だくだく
- ・狸の鯉
- ・狸の札
- ・狸賽
- ・垂乳根
- ・千早振る
- ・長短
- ・町内の若い衆
- ・佃祭
- ・葛篭泥
- ・壺算
- ・手紙無筆
- ・出来心
- ・天災
- ・転失気
- ・道潅
- ・道具屋
- ・刻そば
- ・富久
- ・長屋の花見
- ・夏泥
- ・にせ金
- ・二番煎じ
- ・抜け雀
- ・猫と金魚
- ・猫の皿
- ・寝床
- ・野晒し
- ・呑める
- ・初天神
- ・花色木綿
- ・花見の仇討
- ・反対俥
- ・一目上がり
- ・日和違い
- ・平林
- ・無精床
- ・ふたなり
- ・船徳
- ・風呂敷
- ・へっつい幽霊
- ・棒鱈
- ・堀の内
- ・松曳き
- ・豆屋
- ・万金丹
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- ・身投げ屋
- ・宮戸川(中途)
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- ・目薬
- ・目黒の秋刀魚
- ・元犬
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- ・薮医者
- ・夢金
- ・湯屋番
- ・寄合酒
- ・駱駝
- ・明烏
- ・粟餅
- ・幾代餅
- ・居残り佐平次
- ・お直し
- ・お見立て
- ・首ったけ
- ・五銭の遊び
- ・五人廻し
- ・強飯の女郎買い
- ・三枚起請
- ・品川心中
- ・辰巳の辻占
- ・付き馬
- ・突き落し
- ・徳ちゃん
- ・錦の袈裟
- ・干物箱
- ・文違い
- ・木乃伊取り
- ・山崎屋
- ・よかちょろ