【 た行 】


 ダーティ・ダンシング  ★★★☆

【1987年 : アメリカ】
 監督:エミール・アルドリーノ
 音楽:ダニー・ゴールドバーグ、マイケル・ロイド
 出演:ジェニファー・グレイ(ベイビー)
    パトリック・スウェイジ(ジョニー)、
    シンシア・ローズ(ペニー) 他

60年代初期のアメリカを舞台に、思春期の少女がダンスを通して見つけた恋の行方と成長を描く。
1963年の夏。周りからはまだ“ベイビー”と呼ばれるほど幼げな17歳の少女(ジェニファー・グレイ)は、父が久し振りに休暇をとったため一家で知り合いの山荘へ避暑にやってきていた。山荘に着いたその晩、山荘の経営者の孫ニールにダンスを誘われたベイビーは、そこでこれまでに見たこともないようなセクシーで激しいダンスをするカップルを見つけ唖然とする。その2人とは山荘のダンス教師で、その夜遅く、ボーイのビリーに案内されて従業員だけの秘密のダンスホールに行ったベイビーはそこであのダンス教師に再会、彼はビリーの従兄でジョニー(パトリック・スウェイジ)といい、早速彼女を初めてのダンスに誘うのだった。
そんなある日、ジョニーのパートナーのペニー(シンシア・ローズ)が妊娠したことが判明。相手はバイト従業員のロビーだという。大事なショーの日に中絶の手術をしなければならない彼女に代わって、ほとんど素人同然のベイビーを代役に選んだジョニー。厳しい特訓を重ねる中、二人の心は次第に近づいていくが・・・・。

うわー、あのごっつい顔のダンサーはパトリック・スウェジでしたかい!と今頃驚いてみるワタクシ。
若すぎてわかんなかった・・・。
これも深夜映画でやってたのをなんとなく見ちゃった作品。そのわりにダンスシーンが面白かったので最後の方ではすっかり熱心に見入っておりました。
やっぱりキレのある動きというのは気持ちがよいです。どちらかというとジェニファー・グレイの成長ぶりが楽しかったのですけど。最初は家族にべったりでいかにもお嬢ちゃんだった彼女が、自分の頭でいろいろと考え行動するようになるという精神面での成長も併せて描かれてます。とはいえやっぱり、この作品の醍醐味は最後のダンスシーンじゃないでしょうかねー。
公開当時の評判は全然知らなかったのですが、どうやら最近続編ができていたようです。見てみたい。



 太陽と月に背いて  ★★★☆+☆

【1995年 : イギリス】
 監督:アニェシュカ・ホランド/音楽:ヤン・A・P・カズマレク
 出演:レオナルド・ディカプリオ(ランボー)、
    デイヴィッド・シューリス(ヴェルレーヌ)、
    ロマーヌ・ボーランジェ(マチルド) 他

夭折の天才詩人アルチュール・ランボーと、詩人ポール・ヴェルレーヌの愛憎を描く伝記的文芸作品。
いやー、芸術家とか作家にはどうしてこう同性愛者が多いんだろうな。不思議だ。
そして多くの場合、顛末は決まってるんですよね。芸術を愛する者どうし感性を分かち合い、やがてぶつかり合い、気性のままに傷つけ合って苦しむわけです。ヴェルレーヌとランボーも例外ではありません。

ともかくレオナルド・デュカプリオの若き美貌が輝いております。あの痩せた肩胛骨でワインの栓を抜いたのにはびっくりした。立派な宴会芸ですな。
そもそも「ギルバート・グレイプ」の彼の芝居があまりにうまかったので、その頃の彼の作品がほかにないかなと思ったのがこれを見たきっかけだったのですが、本作の彼は打って代わって美人さんでした。粗野で短気で貪欲で子どもっぽい、けれど人一倍感性の鋭い若者ランボーを印象深く演じてます。
そして繊細すぎて時にヒステリックな詩人ヴェルレーヌにデイヴィッド・シューリス。その風貌で27歳ってウソだろ、なあウソだよな!っと突っ込まずにはいられない感じですが、あの優柔不断な言動といい情けなさ満載の表情といい、ヴェルレーヌという人の未熟さがよく出ていたのではないかと。
この作品でのデイヴィッド・シューリスはサムイとかブキミとかよく聞きますけども、そんなことより私は訴えたい。彼の指先の綺麗さってどうよ。フォルムといいバランスといい尋常ではありません。役柄の鬱々とした風貌をカバーして余りある、マジシャンやピアニストにありがちな指先です。フェチでごめんね。
史実から言ってもランボーとヴェルレーヌの辿る道筋は決して後味の良いものではありませんが、ラストシーンの美しさは秀逸だと思います。まるで白い羽を背負ったようなディカプリオの佇まいが、映画そのものの余韻としていつまでも残りました。頑張った彼に☆ひとつプレゼント。



 脱出  ★★★☆

【1972年 : アメリカ】
 監督:ジョン・ブアマン
 音楽:エリック・ワイズバーグ、スティーヴ・マンデル
 出演:ジョン・ヴォイト(エド・ジェントリー)、
    バート・レイノルズ(ルイス・メドロック)、
    ロニー・コックス(ドリュー)、
    ネッド・ビーティ(ボビー・トリッピ)  他

ダム建設によって消えてしまう前に川下りをしようと奥深い渓谷へやって来た都会の男たちが、地元民とのトラブルから命の危険にさらされていく恐怖を描くサスペンス・ドラマ。
エド(ジョン・ヴォイト)、ルイス(バート・レイノルズ)、ドリュー(ロニー・コックス)、ボビー(ネッド・ビーティ)の4人は、カヌーで川下りを楽しむためにジョージア州北部の山奥の地をジープで走っていた。
彼らが目指す川は、国がすでにとりかかっているダム建設によってまもなく巨人な人工湖に埋もれてしまうのだ。その前に太古の自然の姿を残す川を下ってみようと提案したのは、山野で遊ぶことが好きなリーダー、ルイスだった。都会暮らしの残りの三人はカヌーを扱うのも初めてで、なにもかもがおぼつかない。
そんな中、川下りの2日目に異変は起きた。エドとボビーがひと休みするために岸に上がった時、散弾銃を構えた2人の山男が彼らに銃口をつきつけ、森の奥深く連れこんだのだ。ただならぬボビーの悲鳴を聞いたルイスは弓を持って跡を追いかけ、1人の山男を殺した。しかし逃げたもう1人の行方はわからない。四人は死体の始末を話し合う一方、逃がした男からの復讐に怯えることになり・・・。

ドギマギしました。・・・いやもう、いろんな意味で・・・。(この微妙な間は見た人にはきっとわかる。)
舞台となる奥深い山へとやってきた四人の男たちは、都会から離れてたまには自然を満喫しようと川下りを始めるわけですが、そこで出くわした怪しげな地元住民から襲われたり、逃げ出した先で容赦ない激流に洗礼を食らったりでさんざんな道行きになります。この体当たりな撮影がほんとに凄い。急流に呑まれるシーンなんてまさに命がけです。CG技術のない時代、役者もさぞかし大変だったことでしょう。キャラクターもよく描き分けられていて、最初はリーダーに頼るばかりだったジョン・ボイドの役が、肝心のリーダー負傷後はまるで彼そっくりの言動で一行を引っ張っていくあたりが人間模様としても面白かったです。
自然が人間に対して優しかったり優しくなかったり、というのはそもそも主観の問題です。山も川も、ただ昔からそこにあるだけ。人間はあくまでその表面を間借りしながら生きてるだけ。だからいくら自然相手に酷い目に遭っても、生き延びられるかどうかは純粋に運と体力と知恵の有無にかかっていると言えるでしょう。
でも人間同士の争いとなるとそうはいきません。映画の冒頭、四人のうちの一人がバンジョーを弾く地元民の少年とギターセッションをする場面があり、二人はすばらしく息のあった演奏で皆を楽しませます。けれど後々の展開を見ていくと、一見融和したようなその雰囲気が本当はまったく実体のないものであり、結局は都会の人間と相容れない彼らとの溝がどれだけ深いかを見せつけるための、ひとつの演出だったと気付かされます。この対比こそが、やがて訪れる悲劇の元凶なわけですね。
四人はたまたまバカンスに出向いただけのただの訪問者で、それこそ自然の美しい部分やちょっとしたスリルを楽しみに来ているに過ぎません。(まあ一人は多少場慣れしている感じの野生児ですが。)
そんな彼らのことを、森の奥地に暮らす地元民のオッサンたちがやけに危ない目つきで眺めています。彼らにしてみれば、ひ弱で楽天的な都会人などは金蔓であり、ちょっとした暇つぶしのオモチャ。その底知れぬ言動が、なんとも不気味な雰囲気で作品のサスペンス色を盛り上げます。
大自然に癒され、そこで心洗われる都会人の物語も多い中、ちょっとした冒険が一生癒えない心の傷となってしまった男たちの皮肉なお話です。



 チアーズ!  ★★★☆

【2000年 : アメリカ】
 監督:ペイトン・リード/音楽:クリストフ・ベック
 出演:キルスティン・ダンスト(トーランス)、
    エリーザ・ヂュシュク(ミッシー)、
    ジェシー・ブラッドフォード(クリフ)、
    リチャード・ヒルマン(アーロン) 他

ハイスクールの名門チアリーディング・チームの奮闘を描く爽やかな青春映画。
全国選手権大会で何度も優勝する実力を持つチームトロス。今年も連続優勝を狙おうと張り切るキャプテン、トーランス(キルスティン・ダンスト)だったが、転校生ミッシー(エリーザ・ヂュシュク)からチーム伝統の振り付けが今まで大会経験のないクローヴァーズからの盗作と聞かされて愕然とする。自分たちの実力を正当に評価してもらうためには、大会本番までになんとかして新しい振り付けを作らなくてはならないのだが…。

この作品の見所は、なんといっても迫力のチアリーディングです。あちらのチームには男子もいるらしく、とてもアクロバティックでパワフル。音楽に乗せてはつらつと演技するさまは見ているだけでも気分爽快です。
それにしてもキルスティン・ダンスト、えらくドスのきいた顔に育っちゃって・・・。
「インタビュー・ウィズ・バンパイア」以来彼女の出演作品を見る機会がなかったので余計にそう思うのかもしれませんが、エンドタイトルのミッキーダンスの彼女が怖いんだ。私だけかな。襲いかかりそうな微笑を向けられて普通にビビりました。NG集なんか見るとけっこう可愛いんですけどね。



 チェイシング・エイミー  ★★☆

【1997年 : アメリカ】
 監督:ケヴィン・スミス/音楽:デイヴィッド・パーナー
 出演:ベン・アフレック(ホールデン)、ジェイソン・リー(バンキー)、
    ジョーイ・ローレン・アダムス(アリッサ)、ドワイト・ユエル(フーパー) 他

レズの女の子を相手に、漫画家の青年が戸惑いながら辿る恋の行方を描いたラブストーリー。
無二の親友であるホールデン(ベン・アフレック)とバンキー(ジェイソン・リー)は、共作したコミックが人気を呼んでマンハッタン・コミック・フェアに招かれていた。その会場内で漫画家仲間から女性漫画家アリッサ(ジョーイ・ローレン・アダムス)を紹介されたホールデンは、すぐに彼女に一目惚れ。だが彼女は実はレズで、あっけらかんと女同士のセックスについて語るアリッサに、彼は困惑を隠しつつともかく友達として付き合おうとする。 だがそんな日々に耐えかね、ある日ホールデンは思わずアリッサに愛を告白してしまった。
一度は拒絶したアリッサだが、女性しか愛せなかった自分に新しい世界を見せてくれた彼にいつしか愛情を抱いていたことに気付く。
こうして一見うまくいったかに思えた二人だが、取り残されたバンキーはそんな彼らに嫉妬を覚えて・・・。

えーとー・・・これもまたちょっと相性イマイチだった映画です。
リアルなのかコミックなのかわかんないようなノリについていきそこねちゃった・・・。
ある種の青春群像劇には違いなく、同性愛的な要素とて別に全然かまわないんですが、設定云々というよりもひとえにあの雰囲気にノリ損ねた。という気持ちでいっぱいです。
そもそもベン・アフは繊細な今どきの若者ってガラじゃないのかも。イヤ待て、最後の展開でいうとホールデンは大して繊細でもないのか?そのへんもようわからん。
そういやまたしてもマット・デイモンがチラリと顔出してました。ほんと君ら、身内仕事好きッスね。



 チャーリーズ・エンジェル  ★★★☆

【2000年 : アメリカ】
 監督:マックジー/音楽:ピンク、エド・シアマー
 出演:キャメロン・ディアス(ナタリー)、
    ドリュー・バリモア(ディラン)、
    ルーシー・リュー(アレックス)、
    ビル・マーレイ(ボスレー)、
    ティム・カリー、クリスピン・グローヴァー、
    サム・ロックウェル、ルーク・ウィルソン  他

諜報スペシャリストである美女トリオが華麗に活躍するアクション・ムービー。
いまさら解説もいらんであろう痛快なヒット作品です。ハチャメチャな展開とコミックめいたやり取りに、本格的なアクションを加えたことで立派な娯楽映画になりました。
美人なのにちょっとアホちゃんなキャメロン・ディアス、お色気もっちり系ドリュー・バリモア、知的だけどどこかズレてるルーシー・リューと、キャラの描き分けもしっかりしてます。
相変わらず日本やアジアの文化をまるっきり勘違いしてるシーンもありますが(あのパーティーでの衣裳とかおかしな相撲取りコスプレとか)、そのへんはもういいや。こんだけ無茶苦茶な設定で作ってる作品にいまさら何言ってもムダ。わっはっはーと笑っときゃいいのです。わっはっはー。
女性が活躍するアクションものは元々大好きなので、 細かいこと言わずに楽しめるという意味では結構気に入ってます。アクションの後にキメポーズをいちいちとるあたりもなにげに王道ですね。聞き覚えのある音楽をあちこち取り入れてるのもポイント高し。



 チャーリーズ・エンジェル フルスロットル  ★★★

【2003年 : アメリカ】
 監督:マックジー/音楽:ピンク、エド・シアマー
 出演:キャメロン・ディアス(ナタリー)、
    ドリュー・バリモア(ディラン)、
    ルーシー・リュー(アレックス)、
    デミ・ムーア(マディソン)、
    クリスピン・グローヴァー、バーニー・マック、
    マット・ルブラン、ルーク・ウィルソン 他

前作に続き美女トリオが活躍するアクション・ムービー第二弾。
ゲストの悪玉にデミ・ムーアを呼んできたところ、これがスベった。その年のラズベリー女優賞かなんか貰ったんじゃなかったっけ?ドリュー・バリモアがそれに対してさんざんなコメント吐いてました。自分の芸歴も長いとはいえ、ベテラン相手にいい度胸だ。プロデューサーの強みかしら。
今回もまた主役として中心にいるのはドリューです。前回よりもその色は強いかもしれない。
実際見たところ、デミ・ムーアが年甲斐もなく水着三昧といった部分より「わー、ドリューええとこ取りー」という印象が残りました。いやキャメロンちゃんもそれなりにおいしかったけどさ。女ボスとの一騎打ちだしね。でも心理面ではドリュー真ん中なのですよやっぱ。
チャーリーズ・エンジェルのかっこよさはタイプの違う三人がそれぞれ活躍するところにあると思うので、もし続編を作ることでもあれば今度はルーシー・リューもいっちょお願いします。



 チョコレート  ★★★☆

【2001年 : アメリカ】
 監督:マーク・フォスター
 出演:ハル・ベリー(レティシア)、
    ビリー・ボブ・ソーントン(ハンク)、
    ヒース・レジャー(ソニー)、
    ピーター・ボイル(バック) 他

孤独な白人の男と黒人の女が、深い喪失の淵から人生を取り戻そうとするラブストーリー。
米深南部ジョージア州で州立刑務所に勤めているハンク(ビリー・ボブ・ソーントン)は、黒人嫌いの父親バック(ピーター・ボイル)から人種偏見と看守の仕事を受け継いだ男。息子のソニー(ヒース・レジャー)も看守になったばかりだが、若く情に流されやすい彼には死刑執行という任務が満足にこなせない。息子に苛立ちを隠せないハンク。 だがそのことがある日、彼を癒えない悲しみへと突き落とすことになってしまった。
一方若き黒人女性であるレティシア(ハル・ベリー)は、長い刑期の末にとうとう夫が処刑されたばかり。残された息子と共になんとか生活していこうとする彼女だが、交通事故によりさらなる悲劇に打ちひしがれる。偶然その場に居合わせたためにハンクはレティシアと出会い、家族を失った者同士、やがて心の隙間を埋めるかのようにお互いの存在を求め合う。だがハンクこそは、レティシアの夫の死刑を執行した看守なのだった…。

家族というのは誰にとっても一生ついて回る切れない絆です。たとえその絆に苦しむことがあったとしても、いざそれを失ってしまった時には途方もない喪失感に襲われる人間の性。
この二人の男女の場合は、それを埋めるすべとしてお互いを選びました。もう一度ひとりの男と女として、愛し愛される喜びを得たいと願ったからです。
正直な話、家族を失った悲しみをセックスの喜びで引き替えにできるかといったら微妙なところ。個人的な感覚でいうと、ちょっとハテナな感じもしました。それでも、この時の二人にとってセックスが生命の高ぶりを掴み取ろうとする純粋な行為であったと素直に理解できれば、その後についてくる心の機微をより深く感じ取れるかもしれません。
ともかく、主演二人の存在感はさすがでした。特にハル・ベリーの美しさと切実な演技は、黒人初のアカデミー主演女優賞も納得のものだったと思います。
黒人差別という偏見を理屈ではなくもはや感覚的に埋め込まれて育った男にとって、黒人女性を愛するということの葛藤がどれほどのものであるか、静かな中にもはっきりと描いていた点が印象的でした。
だからこそ、それを乗り越えたラストの二人に確かな希望が見える気がします。