ギャングスター・ナンバー1  ★★★+☆
【2000年 : イギリス】
 監督:ポール・マクギガン/音楽:ジョン・ダンクワース
 出演:ポール・ベタニー(若き日のギャングスター)、
    マルコム・マクドウェル(ギャングスター)
    デイヴィッド・シューリス(フレディ・メイズ)、
    サフロン・バローズ(カレン) 他

かつてロンドンのギャング界に君臨していたダンディなボスと、彼に憧れたギャングスターの30年にも及ぶ愛憎劇を描くバイオレンスムービー。
若く駆け出しのギャング(ポール・ベタニー)にとって、フレディ・メイズ(デイヴィッド・シューリス)は一目見た時から理想のボスだった。次第に頭角を顕わし彼の片腕となったが、やがてフレディがカレン(サフロン・バローズ)という女と出会い、互いに惹かれ始めた時、若者の憧憬は嫉妬に変わる。そしてそれは、ギャングスターの座を奪うための狂気へと変貌していくのだった…。

『身なりから立ち振る舞いまで伊達を極めたギャング界の頂点』にデイヴィッド・シューリスという配役は果たして正解なのかどうか。上品かつどっかキレ気味、という雰囲気でいうと当たりのような気もするけど微妙。でもあんなに髪がフサフサした彼を見ることもあまりないので面白いしまあいいや。負けてはならじとでも思ったのか、主人公を演じるポール・ベタニーも登場シーンにはかなりあからさまなズラかぶってました。
それにしてもベタニーは本当に細身のスーツがよく似合う。ともかく元が長身ですから、まさに理想の八頭身がスーツ来て歩き回ってるようなもんです。細いだけで筋肉ないけどネ。
しかし名前すら明かされないこの若きギャング、 物語が進むにつれてかなりアブナイ男に変わっていきまして、劇中では数カ所、ベタニーがものすごい顔芸を見せてくれます。
「デッド・ベイビーズ」で演じたキャラも相当キてましたが、単品のインパクトではこちらの数コマの方が上かもしれない。CGいらずでホラーばりの恐ろしさでした。ホンットおっかないから。マジだから。あまりの衝撃に☆一個投げつけます。
男が男に憧れるという感情がこういう方向に転がるということは、この若きギャングにとってのボスの存在はすでに憧憬でなく執着だったんでしょうね。ベタニー扮する彼が仲間や敵と接する時の、甘い仕草と軽やかな恫喝が印象的です。元々他人を支配する能力は備わった男だったのでしょう。ただ、理想へのこだわりが一途過ぎたのかもしれません。
かなり派手にバイオレンスしてますが、映像のつくりからして英国らしいセンスにあふれた作品だと思います。ぶっちぎれてるんだけどどこかひっそりと冷めていて、狂気の中に哀愁がある。真っ赤な世界が逆にスタイリッシュに見えてくる、不思議なカッチョ良さが漂う男の世界です。



 キューティ・ブロンド  ★★★☆
【2001年 :アメリカ】
 監督:ロバート・ルケティック/音楽:ロルフ・ケント
 出演:リーズ・ウィザースプーン(エル・ウッズ)、
    ルーク・ウィルソン(エメット)、
    セルマ・ブレア(ヴィヴィアン)、
    マシュー・デイヴィス(ワーナー) 他

お洒落大好きの天然きゃぴきゃぴブロンド娘が、法律家として成功を掴んでいくまでを痛快に描いたサクセスコメディ。
裕福な家庭のもとに育ったエル・ウッズ(リーズ・ウィザースプーン)は、なにひとつ不自由のない暮らしと素敵な恋人に恵まれた学校一の人気者。しかしある日、最高の恋人だと信じていたボーイフレンドのワーナー(マシュー・デイヴィス)に「ブロンド娘は政治家を目指す自分の妻にふさわしくない」という理由でふられてしまう。納得行かないエルは持ち前の負けん気で猛勉強を始め、とうとうワーナーの通うハーバードのロー・スクールに入学。イケイケのお嬢様スタイルをここでも貫く彼女はどう見ても周囲の学生からは浮いているが、教授が担当する殺人事件弁護の助手に選ばれると、その誠実な心根やお洒落で培った洞察力を武器にめきめきと活躍していく。

てなわけで、「そんなバカなー!」と思いつつもつい笑ってしまう明るく元気なはっちゃけコメディです。
あちらの国では実はブロンドさんはちょっとオツム軽めだと見られがちなんだそうで、しかしそんな見栄えすら自分らしさだと胸を張るエルの強さや優しさがとても魅力的。
濱田マリ似のリーズ・ウィザースプーンのアゴをついつい目で追ってしまう自分もいたりしますが、実はキレ者のエルがその才能を発揮する場面では、見ている人はきっとみんな彼女を応援したくなることでしょう。



 ギルバート・グレイプ  ★★★★
【1993年 : アメリカ】
 監督:ラッセ・ハルストレム
 音楽:アラン・パーカー、ビョルン・イスファルト
 出演:ジョニー・デップ(ギルバート・グレイプ)、
    ジュリエット・ルイス(ベッキー)
    レオナルド・ディカプリオ(アーニー・グレイプ) 他

夫の自殺という精神的ショックが原因で太りすぎ、今では身動きがとれなくなってしまった母。知的障害を持ち、目を離すと何をしでかすかわからない弟。年頃のふたりの妹たち。
そんな彼らの生活を1人で支える主人公・ギルバートの葛藤や愛憎、家族の絆を爽やかに描いた物語。

母や弟妹たちのことをとても愛しているけれども、小さな町から出ることもできない閉塞感にどこかやりきれない想いも抱えている青年ギルバートをジョニー・デップが、手に負えない悪戯で周囲を困らせながらも、純粋な心でまっすぐに生きる弟アーニーをレオナルド・ディカプリオが白眉の名演でこなしています。
イヤほんと、ディカプリオの上手さには腰ぬかしました。当時のあの若さであの才能。
そりゃみんな一目置くわ。ハリウッドで成功する人間はやっぱ顔だけじゃないってことね。彼はこの作品でアカデミー助演男優賞にノミネートされたそうですよ。
ラッセ・ハルストレム監督の作品はどれも非常に丁寧に人間模様を描いていて、しっとりとした情感が印象に残ります。ギルバートと出会い、彼の心をゆっくりと開かせていく少女ベッキーとの交流や、兄弟がまっすぐな道を遠く見遣り、新しい日々を思って言葉を交わすシーン。思い出すだけでも不思議な余韻が胸に迫る、素敵な作品です。



 クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア  ★★★
【2002年 : アメリカ】
 監督:マイケル・ライマー
 音楽:ジョナサン・H・デイヴィス、リチャード・ギブス
 出演:スチュアート・タウンゼント(レスタト)、
    アリーヤ(アカーシャ)、
    マーガリート・モロー(ジェシー)、
    ヴァンサン・ペレーズ(マリウス)、
    ポール・マクガン(デイビッド・タルボット)、
    レナ・オリン(マハレット) 他

美しきヴァンパイア・レスタトが吸血鬼として生きることになった経緯と苦悩、そして現代でロック・スターとして世界を魅了する彼がついに甦らせた最強最悪の女王・アカーシャの復活劇を描く。
ニューオリンズの地下墓地。ヴァンパイアのレスタト(スチュアート・タウンゼント)は、かつて聞いたことのない怒りと官能に満ちた響きに触発され、100年の眠りから覚醒した。自分を呼び起こした音楽に惹かれるまま、レスタトは瞬く間に世界を魅了するロックスターとなったが、彼が歌詞の中に込めたヴァンパイアの秘密は仲間たちからの不興を買う。
その頃、超常現象を研究するジェシー(マーガリート・モロー)はレスタトが残した過去の日記を読み、彼がマリウス(ヴァンサン・ペレーズ)と名乗るヴァンパイアによって不死にされた経緯や、ヴァンパイアとして生きることの拭いきれない孤独と苦悩を知って深く魅了される。恐れながらもレスタトに近づいていくジェシー。
だがレスタトが宣言したコンサート当日、彼の歌声はついに、全てのヴァンパイアの母にしてもっとも邪悪な伝説の女王・アカーシャを数千年の眠りから蘇らせてしまうのだった…。

「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」から8年後に製作された続編。前作でトム・クルーズが演じた吸血鬼レスタトを、本作ではスチュアート・タウンゼントが演じています。
なんせ世界中で絶大な人気を誇る原作の方をですね、立ち読み程度にしか拝見してませんので、どっちがよりレスタトらしいかってのはちょっとわかんないのですが、美貌の吸血鬼としての見栄えは個人的にスチュアート・タウンゼントに軍配を上げたい感じです。劇中のプロモでは微妙にデコッパチだったり、顔色が悪すぎてハンサム台無しだったり、角度によっちゃイマイチ男前に欠けていたりとマイナス点もありながら、なんせあのスタイルと身のこなしですから、総合的に見て王道耽美系に必要な要素は備えていたのではないかと。
少なくともトム・クルーズじゃあのパンクロック・スタイルは無理だったと思うな・・・。
そして女王アカーシャを演じた人気シンガー、アリーヤは不幸にもこれが遺作になってしまったそうですが、小柄な彼女が画面に出ると不思議な迫力があって、この存在感はなかなかのもんだなあと感心しました。
とはいえ、原作で壮大に描かれるヴァンパイア・クロニクルを映像化するのってやっぱり難題らしいです。
人間性を捨てきれないヴァンパイアの孤独と苦悩、という最大のテーマがどうも表面上を撫でる程度で済まされてる感じが少々残念。脇キャラもあまりに突然出てくるので、DVDのオマケ映像くらいは見てないと脈絡がさっぱりわからん始末です。まあその分VFXは頑張ってたようですが・・・。
ドラマ性ならとりあえず「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」、見た目の派手さなら「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」。でも耽美系ヴァンパイアの頂点を描く作品としてはどちらも何かがちょっと足りない、と思います。



 グッド・ウィル・ハンティング  ★★★☆
【1997年 : アメリカ】
 監督:ガス・ヴァン・サント/音楽:ダニー・エルフマン
 出演:ロビン・ウィリアムズ(ショーン・マクガイア)、
    マット・デイモン(ウィル・ハンティング)
    ベン・アフレック(チャッキー) 他

数学に天才的な才能を持ちながらも心を閉ざして社会になかなかなじめない青年と、過去に深い心の傷を負う精神科医の心の交流を描くヒューマン・ストーリー。
自身もハーバード大学中退という経歴を持つマット・デイモン、その友人でもあるベン・アフレック共作によるオリジナル脚本を、デイモン自身の主演、アフレックの助演とベテラン俳優ロビン・ウィリアムズの共演で製作したもの。飛び抜けた才能がありながら、人との関わり方がわからずに葛藤していた青年のラストの成長ぶりがとても爽やかです。
しかしどっちかと言うとですねえ、私はマット・デイモンたちの若者群像よりロビン・ウィリアムズの方にホロリときましたね。やっぱりあの表情の成せるワザかなあ。
マット・デイモンっていつ見てもいじめられっ子顔だわなどと思ってしまう偏見満載のわたくし、彼についてはあまり深く語れません・・・。



 クライング・ゲーム  ★★★☆
【1992年 : イギリス】
 監督:ニール・ジョーダン/音楽:イアン・ウィルソン
 出演:スティーブン・レイ(ファーガス)、
    フォレスト・ウィテカー(ジョディ)、
    ジェイ・デイヴィッドソン(ディル)、
    ミランダ・リチャードソン(ジュード) 他

自ら死に至らしめた黒人兵士の遺言で、彼の美しい恋人に会いに行った元IRA兵士。彼とやがて惹かれ合うようになった謎の美女との奇妙な恋の顛末を描いたサスペンスタッチのドラマ。
アイルランド。英軍の黒人兵士ジョディ(フォレスト・ウィテカー)は、英国軍に捕らえられた仲間たちを釈放するための人質としてIRAの一団に誘拐される。山奥のアジトに幽閉されたジョディの見張りには、ファーガス(スティーブン・レイ)と名乗る男がついた。二人きりで過ごすうちに彼らの間にはいつしか仄かな友情が生まれ、ジョディはファーガスに、もし自分が殺されたらロンドンにいる恋人ディル(ジェイ・デイヴィッドソン)に会って「愛していた」と伝えてほしいと頼む。
やがてジョディは救出にやって来た英国軍の装甲車にひかれて死亡、IRAのアジトも軍の急襲を受けて炎に包まれた。かろうじて逃げ延びたファーガスは遺言通りロンドンに赴き、美容師のディルに会う。夜はバーで歌う彼女の美しく不思議な魅力にひかれ、二人は急速に接近するが・・・。

これも傾向としては「M.バタフライ」と通じるところがありますね。でもこっちの方がヒューマン・ドラマとしてはよく練られているし、受け入れやすいと思います。
といっても書けば書くほどネタバレなので、感想すらろくに書けなかったりするわけですが。
しかしあれですねー、まかり間違ってこういう展開になった男ってのは、さぞかしショックなんでしょうな。そのへんを考えても、この映画のラストでは主人公と彼女の関係にも未来がある感じでよかったです。
ところでディルを演じたジェイさんはモデル出身。演技は初挑戦だったそうな。たまげたたまげた。