ディナーラッシュ  ★★★☆

【2001年 : アメリカ】
 監督:ボブ・ジラルディ/音楽:アレクサンダー・ラサレンコ
 出演:ダニー・アイエロ(ルイス)、
    エドアルド・バレリーニ(ウード)、
    カーク・アセヴェド(ダンカン)、
    ヴィヴィアン・ウー(ニコーレ)、
    サマー・フェニックス(マルティ)、
    マイク・マッグローン(カーメン)  他

ニューヨーク・トライベッカに実在する、とあるイタリアンレストランを舞台にしたサスペンス映画。
レストラン「ジジーノ」のオーナー、ルイス(ダニー・アイエロ)はある日、ビジネス・パートナーを殺害されるという事件に巻き込まれる。街の人々に長年親しまれてきた「ジジーノ」は今や、彼の息子でコック長を務めるウード(エドアルド・バレリーニ)の活躍もあって流行の最先端を行く高級レストランだ。夜になれば一流の料理を目当てにした個性豊かな客が集まってくる。
店の乗っ取りをたくらむチンピラたちやウードと愛人関係にある女性料理評論家。警察官に親子連れ。食事を楽しむ者、誰かと待ち合わせる者。しかしルイスは、そもそもレストランをこんな小洒落た店にしたいわけではなかった。舌に馴染んだ料理を出す素朴な店だった頃を忘れられない彼は、息子に店の全権を委ねる決心がどうしてもつかない。そんな親子の確執や様々な人間模様が入り組む中、厨房が戦場と化すディナータイムに殺人事件は意外な方向へと展開していく・・・。

劇中これでもかというほど出てくる料理の数々に腹ヘリ間違いなし。DVDジャケットからしてなんだかお洒落なのです。よくできた広告ポスターみたい。
出てくる人間がそれぞれに何やらひとクセあります。コック長で居丈高な若者ウードは、ハンサムで女遊びも激しい代わりに料理の腕は一級品。副料理長のダンカンは才能もあり、オーナーに可愛がられているけど賭博がやめられないという悪癖持ち。 そうして目まぐるしく入れ替わる登場人物たちを追いかけているうちに、やがて辿り着く結末にエエッ?とぱちくりするという寸法です。
監督のボブ・ジラルディは、レストラン「ジジーノ」の実際のオーナーなんだそうですよ。おかげで現場を好き放題に使って撮ったらしい。味付けも一風変わったサスペンスです。



 デッドベイビーズ  ★★★

【2000年 : イギリス】
 監督:ウィリアム・マーシュ
 出演:ポール・ベタニー、クリスチャン・ソリメノ、
    オリビア・ウィリアムス、チャーリー・コンドー
    アレクサンドラ・ギルブレス  他

酒と薬とセックスにまみれて自堕落に暮らす6人の若者が体験する、幻覚と恐怖を描いたドラッグ・ミステリー。ロンドン郊外の大邸宅で共同生活をする仲間、クールなクエンティン(ポール・ベタニー)と妻のシリア、セックス好きのアンディと妻のダイアナ、屋敷を相続したジャイルズと、自他共に認める醜男キースの6人は、週末にドラッグ・パーティを開く。4人の客を迎え、特製ドラッグにはしゃぐ仲間たち。
しかしその夜、ダイアナの寝室が荒らされる事件が起こる。それは、ここ最近イギリスを震撼させていた殺人グループの手口だった・・・。

いやーもう、言いたいことはいろいろあるけどすべてを言い尽くすことはもはや不可能。
愛しのベタニがとうとうやってくれた、つーかヤッチマッター!という感じです。
でもやっぱりそれなりに格好いいんだよなーチクショウめ。
ドラッグや死が絡む若者を描くヒット作品には「トレインスポッティング」などがありますが、年齢層が高い分こちらのほうがエログロかと。
クスリにまみれてグルグルになった人間てのは、いろんなもんが見えるんでしょうねえ。別に見たいとも思いませんが、この作品でイヤでも見せられちゃった感じです。
冷静沈着でありながらどこかズレてるというか、言いしれぬ含みをもたせたキャラクターを演じることが多いポール・ベタニー、ある種の最終形態がここにございます。
『死んだ子供たち』というタイトルにふさわしく、軽く明るくイっちゃった人々を傍観したい方に。
止めはしませんが責任も持ちません・・・。



 天国の口、終りの楽園。  ★★★★

【2000年 : メキシコ】
 監督:アルフォンソ・キュアロン
 音楽:ホセ・アントニオ・ガルシア
 出演:ガエル・ガルシア・ベルナル(フリオ)、
    ディエゴ・ルナ(テノッチ)、
    マリベル・ベルドゥー(ルイサ)  他

1人の人妻と2人の少年が、「天国の口」と呼ばれる伝説の海岸を探して旅する青春ロード・ムービー。
幼なじみのフリオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)とテノッチ(ディエゴ・ルナ)は17歳の高校生。頭の中はいつもセックスでいっぱいだが、お互いの恋人がヨーロッパ旅行に行ってしまったため、せっかくの夏休みも男同士のパーティに明け暮れていた。
そんなある日、二人はテノッチの親戚の結婚式で年上の女性ルイサ(マリベル・ヴェルドゥー)と知り合う。
彼女をドライブに誘うため、思いつきで“天国の口”という美しいビーチの話をする二人。ところが数日後、夫の浮気を知ったルイサからテノッチに電話がかかり、“天国の口”までのドライブ旅行に参加するという。在りもしないビーチを目指す羽目になり慌てるフリオとテノッチだが、ともかくチャンスは逃すまいとルイサを連れてボロ車に乗り込み、メキシコ・シティをあとにするのだった…。

メキシコ発の賑やかでちょっとほろ苦いこの作品。主人公の一人である人妻ルイサは、なんでそこまでと言いたくなるほど貪欲な脱ぎっぷり迫りっぷりを披露しますが、それには誰にも明かしていない彼女の秘密が関係してます。とはいえ、ちょっとやりすぎっていうか、なぜそこに昇華されるのかは微妙に疑問ですけど…。
で、そんな彼女のお供をすることになったのが親友同士のテノッチとフリオ。開けっぴろげで奔放至極、女のハダカで頭が一杯という年頃の少年たちが実にリアルです。あれくらいの子ってほんと、あんな感じなんだろうね。エロのために毎日があるんだよ。すべてのパワーはそこに集中している。
ちなみに原題は「お前のママともヤってるんだぜ」てな意味。こんな綺麗なタイトルじゃございません。
晴れ渡ったメキシコの空の下、ボロ車は幻の海辺への道をガタガタと進んでいきます。その窓から見える景色は、テノッチの乳母の生まれ故郷であったり、ルイサが大切な人を失った絶望の場所であったり、村人が若い花嫁のために旅人に祝いをねだる姿だったり。そこにいちいち無機質なモノローグが織り込まれ、そのタイミングたるやストーリーの腰を折りたいのかというほど唐突なのですが、よく聞くと言ってることはなかなか面白い。まるで彼らの人生の一部をこの道の上に示しているかのようで、なんとも味があります。

毎日がただ楽しく、自分たちのルールでもって気楽に生きていた幼なじみ二人は、この旅の中でさまざまな行き違いを味わいます。それはセックスに関することでもあり、親友同士の仲に関わることでもあり。
そしてあるハプニングに呆然とした彼らは、やがて自分たちの旅と共に、青春と呼べるひとつの季節が終わったことを知るわけです。このへんがね。ちょっとせつない。フリオの最後の台詞が意味深です。
この親友二人を演じているディエゴ・ルナとガエル・ガルシア・ベルナルはこの作品で2001年のヴェネチア国際映画祭・最優秀新人賞をダブル受賞しており、今では大作にも顔を見せる人気ぶりですが、実生活でも生まれた時からの友人なんだそうですよ。先に出演が決まっていたベルナル君が共演にルナ君を指名したとか。その理由を監督が例のシーンに搦めて笑い話にしてましけど、ああいうのって気心知れてる相手だから余計やりにくいということもありそうですね。(笑)



 天使にラブソングを…  ★★★★☆

【1992年 : アメリカ】
 監督:エミール・アルドリーノ/音楽:マーク・シャイマン
 出演:ウーピー・ゴールドバーグ(デロリス)、
    マギー・スミス(修道院長)、
    ハーヴェイ・カイテル(ヴィンス)、
    キャシー・ナジミー(シスター・パトリック)、
    ウェンディー・マッケナ(シスター・ロバーツ)、
    ビル・ナン(サザー警部)  他

殺人事件を目撃し、修道院に匿われたクラブ・シンガーが巻き起こす騒動を描くコメディ。
ネヴァダ州リノのカジノで歌うクラブ・シンガー、デロリス(ウーピー・ゴールドバーグ)は、一帯の顔役で愛人のヴィンス(ハーヴェイ・カイテル)が組織の裏切り者を殺す現場を見てしまう。警察へ駆け込んだ彼女は、サザー警部(ビル・ナン)の計らいでサンフランシスコの修道院に匿われることになった。
厳格な修道院長(マギー・スミス)や堅苦しい決まり事にうんざりするデロリスだが、ひょんなことから聖歌隊の指揮を任されてしまう。歌のレパートリーにソウルやロックのナンバーを加え始めた新しい聖歌隊は、街の人々からも親しみを迎えられて大評判。だがその頃、ヴィンスの放った殺し屋の影がデロリスに迫りつつあった・・・。

言うまでもない大ヒットコメディ。大好きな映画です。いつ見ても元気が出る。
ウーピー・ゴールドバーグは表情ひとつにも味があり、ストーリーとしてはなんてことないのに、ちょっとズレてるシスターたちとデロリスとの交流が本当にあったかくて面白い。
歌われるゴスペルの数々もみんな楽しく、捨て曲がありません。個人的には内気なシスター、マリー・ロバートがパワフルな美声で歌いまくるシーンがお気に入り。ああ、誉め言葉しか出てこない。



 天使にラブソングを 2  ★★★★

【1993年 : アメリカ】
 監督:ビル・デューク/音楽:マイルス・グッドマン
 出演:ウーピー・ゴールドバーグ(デロリス)、
    マギー・スミス(修道院長)、
    ジェームズ・コバーン(クリスプ)、
    キャシー・ナジミー(シスター・パトリック)、
    ウェンディー・マッケナ(シスター・ロバーツ)、
    ローリン・ヒル、ジェニファー・ラヴ・ヒューイット 他

前作に続き、歌って踊るエネルギッシュな修道女デロリスの活躍を描くミュージカル・コメディ。
今やラスベガスのエンターティナーとなったデロリス(ウーピー・ゴールドバーグ)のステージに、ある日懐かしい顔ぶれが遊びにやって来た。かつて世話になったシスター・メリー・パトリック(キャシー・ナジミー)とシスター・メアリー・ロバート(ウェンディー・マッケナ)だ。
しかし彼女たちは現在ある事情で困り果てており、実はデロリスに助けを求めに来たのだった。 セント・キャスリン修道院のシスターたちはクリスプ氏(ジェームズ・コバーン)が理事長を務めるセント・フランシス高校で社会奉仕をする事になったのだが、そこは構内暴力や非行が横行する問題校で、修道院長(マギー・スミス)でさえスレた悪ガキたちに手を焼いていたのだ。フランシス高校は懐かしの母校でもあるデロリスは、渋々ながら再び尼僧ファッションに身を包み、音楽教師として学校に潜り込むのだが・・・。

上記の続編。前作の監督さんは実はお亡くなりになったとかで、新しくビル・デュークという人がメガホンをとっています。軽くアクション風味だった前作とは一転、悪ガキどもを導くセンセーとなったデロリス。ストーリーとしてはちょっと趣が異なりますが、しかし相変わらず音楽の冴えは抜群です。
それにしてもローリン・ヒルの歌のうめーことよ。その後の彼女のアルバムだって買っちゃったさ。
前作とどっちが好きかと訊かれれば、まあ 強いて言うなら前作かなという気もしますが、それでもやっぱりこちらも好きです。生徒たちの元気な歌声もパワフルでいい。歌ってステキ!といつでも思わせてくれる楽しい作品であることは間違いありません。



 デンジャラス・ビューティー  ★★★★

【2000年 : アメリカ】
 監督:ドナルド・ピートリー/音楽:エド・シェアマー
 出演:サンドラ・ブロック、マイケル・ケイン、
    ベンジャミン・ブラット、キャンディス・バーゲン、
    ウィリアム・シャトナー、アーニー・ハドソン、
    ジョン・ディレスタ、ヘザー・バーンズ   他

男勝りの腕力と知力を持った女性FBI捜査官が、事件解決のためにミスコンに乗り込むセクシー・アクション・コメディ。
グレイシー(サンドラ・ブロック)は腕のたつ捜査官ではあるが、 色気と愛想と化粧っ気はゼロ。笑う時にはフガフガ鼻を鳴らし常にガニ股で闊歩するありさまなので、同僚たちからも男同然の扱いを受けている。
だがある日、指名手配中の連続爆弾魔からミス・アメリカのコンテスト会場を爆破するとの予告が届き、 グレイシーは潜入捜査のためミスコン出場者に扮するように命じられてしまった。ミスコンを軽蔑している彼女は心底嫌がるが、以前現場で犯した失敗を返上するため渋々引き受けることに。凄腕の美容コンサルタント・ ビクター(マイケル・ケイン)の手を借りて、到底無茶に思われた彼女もとうとう目を見張るような美女に変身を果たす。そして各州からやって来た代表者たちの輪に入ってみれば、彼女らもまた真摯で頑張り屋なのだということに気付いたグレイシー。乙女たちを守るためにもどうにかして犯人を捕えなくてはならないのだが、肝心のミスコンはハプニングの連続で・・・。

非常に楽しく見られた娯楽コメディでした。アクションていうかアクション風コメディ。
ダサい女が美しく変身する、というのは女性にとっての潜在的願望ですので、グレイシーがだんだん磨かれていくさまはそれだけで胸のすくところ。そして、不器用な彼女が悪戦苦闘しながらミスコンという世界を見直していく過程がなかなか良いです。美しくあろうと頑張る女性たちの努力は、決して無下にけなしてはいけないものだと気付く。それは、美を競い合う舞台の裏でグレイシーが彼女たちと共に笑い、心を通い合わせた結果なのです。
サンドラ・ブロックって尖った鼻や切れ上がった目元が微妙におっかない、きつめの顔立ちだと思うんですが、そんな彼女がコメディをやるとすごくおかしい。知的な佇まいを逆手にとったコメディエンヌぶりが光っておりました。それにしても、ウェーブヘアを無造作にまとめてグラサンをした彼女はマイケル・ジャクソンにやたら似ている・・・。



 トゥー・ウィークス・ノーティス  ★★★★

【2003年 : アメリカ】
 監督:マーク・ローレンス /音楽:ジョン・パウエル
 出演:サンドラ・ブロック(ルーシー・ケルソン)、
    ヒュー・グラント (ジョージ・ウェイド)
    アリシア・ウィット(ジューン・カーバー)、
    ダナ・アイヴィ(ルース・ケルソン)、
    ロバート・クライン(ラリー・ケルソン)、
    ヘザー・バーンズ(メリル・ブルックス) 他

堅実で熱血派の女弁護士と、仕事上の対立関係にあったハンサムで優柔不断な御曹司が恋に落ちるさまをユニークに描いたロマンティック・コメディ。
NYで最大手の不動産会社、ウェイド社の広告塔でもあるジョージ・ウェイド(ヒュー・グラント)は、リッチでハンサムだが女癖が悪く、いまひとつ誠意に欠ける男。一方、環境保護運動に燃える女弁護士ルーシー・ケルソン(サンドラ・ブロック)は街の開発を続けるウェイド社に敵対心を持っていたが、ひょんなことからジョージに雇われる羽目になってしまう。
頭がよく手際のいいルーシーをジョージはすっかり気に入り、いつしか生活のあらゆることまで彼女に頼りきりに。だがとうとうそれが我慢ならなくなったルーシーは、「あと二週間で辞めてみせる!」と辞表を叩き付ける。だがそうなってみて初めて、二人はお互いの存在がなにやら気になり始めるのだった・・・。

「デンジャラス・ビューティ」の脚本を書いたマーク・ローレンスが初監督ということで、あちらも楽しんだ私としては大満足でした。キャラさえ上手くはまればコメディエンヌとして絶妙だと勝手に思っているサンドラ・ブロック作品の中でも、たぶん一番のお気に入りです。
相手役のヒュー・グラントも本当におかしかった。さすがはラブコメキング。全体的に醸し出す英国紳士の雰囲気に騙されがちですが、彼はよくよく見るとタレ目だし足だって長くはないしそろそろ中年体型だし完璧な二枚目なわけではありません。
しかし、だからこそ憎みきれない二枚目半がよく似合うのです。目尻を下げて情けない台詞を並べつつも、子どもみたいな素直さでルーシーを大切にしようとするところが可愛いい。「あーもーしょうがないなァ!」てな感じで許されてしまうわけです。特に、ルーシーのようなしっかり者の女性にね。
本作では製作も兼任しているサンドラ・ブロックは、この作品を最後にラブコメは卒業すると言ってるらしい噂を耳にしたのですが、本当だとしたら寂しい限り。ウマの合う相手役を見つけて、これからも楽しい作品を見せて欲しいものです。