UKを知ろう


イギリス代表というチームのなかったW杯

(ここにも見られる連合王国の歴史の重み)


あたかも世界大戦が勃発したかのような、熱狂的テレヴィ報道がなされたW杯
の戦いも、多くの話題を残して終わりました。
かなり多くの日本国民もサッカーというスポーツの戦いを満喫しました。

このテレヴィと現地での観戦を通じて、多くの方が「国家と国歌」とか「世界
水準」あるいは「国際的な人事交流」などについて何かを感じ、いろいろな話
し合いの機会を持たれたことでしょう。

ところで今回のW杯に「イギリス」という英国代表がなかったことに気づいた
でしょうか。

オリンピックでは「UK・連合王国」として参加しています。
サッカーのW杯も国家単位の競技のはずが、英国だけはウェールズ、イングラ
ンド、スコットランド、そして北アイルランドが、欧州予選に出場しました。
結果はイングランドとスコットランドが欧州予選を勝ち抜き、フランス大会に
参加しました。
アイルランド共和国も予選で敗れて、本大会には出場出来ませんでした。



スコットランドがブラジルと、またイングランドがアルゼンチンと熱戦を展開
した記憶は鮮明です。

「日本はやっとこさアジア予選を勝ち抜いたのに、英国(UK)は、ウェールズ、
イングランド、スコットランド、北アイルランドで参加できるなんておかしいよ」
と思われる方もいるでしょう。

でも欧州でのサッカーやラグビーでは、ウェールズ、イングランド、スコット
ランド、北アイルランドが一つの国として取り扱われているのです。

再三繰り返しますが、私たちが「イギリス」とか「英国」と呼ぶのは、イング
ランドではなく「連合王国と北アイルランド」なのです。
スポーツの時は政治的な連合を離れて、ウェールズ国、スコットランド国、イ
ングランド国そして北アイルランド国として戦うのです。

欧州を沸かせる5ヶ国対抗ラグビーは、Five Nations Rugby Football Gameと
いうように、文字通りフランス国、ウェールズ国、スコットランド国、イング
ランド国、アイルランド国のNation(国家)の対抗リーグ戦なのです。

W杯ではスコットランド・チームはスコットランドの国歌を、胸を張って斉唱
していました。
そう、スコットランドも「Flower of Scotland」という国歌を持っているのです。



歌詞をよくご覧ください。「Flower of Scotland」といえば「アザミ」です。
「あれっつ、どこかで?」

そうです。かってヴァイキングを追い払った花「アザミ」
それはイングランド王エドワード一世の強力な軍団をスターリング橋で撃破し
「ブレーヴ・ハート」のウォーレスを称えた歌です。
ここにもスコットランド人のイングランドに対する歴史の重みを感じます。

日本では「イギリス」が連合王国を意味したり、グレート・ブリテン(GB)で
あったり、イングランドだったり、めちゃくちゃです。
安易に、曖昧な「イギリス」という表現は控えましょう。
また「イギリス」を軽々しく単純に「England」と英訳しないでください。
同様に「イギリス人」を英訳する時、単純に「English」とすると危険です。
この読者に英語教師の方がいましたら、よろしく生徒をご指導下さい。

逆説的ですが「イギリスという国はない」のです。
「イギリス代表というチームのなかったW杯」にも民族とか国家とかの歴史の
背景を読み取れます。

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