@生徒対象の脚本創作講習会 完 結 ・生徒対象の脚本創作講習会 ・講習会に期待すること A脚本を書く前に 完 結 ・脚本を書く前に ・舞台を多く見る ・真似から自分のものへ ・舞台は虚の世界 B脚本ができるまでの流れと素材さがし 完 結 ・脚本ができるまでの流れ ・表現したいものを捜す ・舞台になるかどうかを吟味する ・書きたいものがないなら書くな ・素材から人へ ・完璧な人は劇にはならない C二つの話を絡ませ、対立構造を作る 完 結 ・素材が先か、状況が先か ・ふたつの話をからませる D素材の選び方 完 結 ・カード方式の例 ・家出と万引き ・超能力と不登校 E中心人物と場所について 完 結 ・どのような人物に素材を乗せるか ・中心人物の背景を考える ・どのような場所で展開させるか Fテーマとラスト 完 結 ・素材と題材(テーマ)の違い ・全体像が見えてきたならテーマを決める ・ラストをどうするか ・本来は、ねらいが先 G資料集めとノート 完 結 ・脚本は脚(あし)でかせぐ ・調べることで新しい発見がある ・ネタ集めは普段から H人物と背景を考える 完 結 ・超能力と不登校を例に人物を考える ・対立構造をはっきりさせる ・名前を決める I開幕のポイント 完 結 ・悩みの経過は説明しない ・話全体のどこから始めるか決める ・開幕のインパクト ・開幕のポイント J結末を決める 完 結 ・ラストを決める ・結末が変われば違う話になる ・安易な解決はしない K粗筋を考える 完 結 ・開幕と結末をつなぐ場面を考える ・登場させる人物を考える L大きな流れ(粗筋) 完 結 ・だれがどうなる話か ・どのようなキッカケで変わるのか ・伏線をはる ・各場面の目的 ・山場と幕の下ろし方 M小道具の有効な使い方 完 結 ・書きたいことは書くな ・喋らせたいことは喋らせるな ・小道具を有効に使う N生徒対象の講習会のまとめ 完 結 ・生徒対象の講習会のまとめ |
一 生徒対象の脚本創作講習会 ○生徒対象の脚本創作講習会 ○講習会に期待すること |
生徒対象の脚本創作講習会 演劇部顧問とともに行ってきた「脚本創作イーハトーブの会」と並行して、演劇部の生徒を対象にした「脚本創作」講習会も担当してきました。 年三回をひと区切りとする「イーハトーブの会」とは違って、一日だけの日程で、しかも五時間のときもあれぱ二時間だけという設定のときもありました。参加する人数もいろいろでしたが、脚本を書きたいという意欲がどこの講習会でも感じられました。 講習会の内容ほ、「イーハトーブの会」で話し合われた内容を参考にしながら、私なりに整理した手順で行いましたが、講習会を担当するなかでわかったことが数多くありました。 参加する演劇部員のなかには、自分が書きたいと思っている構想を話したり、実際に書いた脚本を手に、感想を聞きたいという演劇部員もいました。 演劇という活勲を体験しながら、自分の考えていることを脚本という形で表現したいという意欲を感じました。 これまでの十三回の講習会の資料や、参加者から出された多くの意見や感想、そして初稿から書き直しをした第二稿・第三稿という脚本の原稿や、快く提供していただいた資料などが手元に残っています。 それらを読みながら振り返ってみると、どこでどのように迷い、行き詰まり、展開できなかったのかというようなことが私なりに感じられるのです。 「イーハトーブの会」と重複する内容もありますが、ここでは演劇部頁のための講習会を実施したなかから、その内容を紹介したいと思います。 講習会に期待すること 二○○一一年二月の講習会で「脚本創作分科会」に参加した演劇部員に、この分科会に参加した理由を書いてもらったので、その一部を紹介します。 ・ 題材の選ぴ方を知りたい。 ・ 書いてみたいがなにを書いたらいいかわからない。 ・ 書きたいものはあるが、どのようにして形にしていいかわからない。 ・ 何か話が浮かんでも、その話でなにを伝えたいのかわからなくなる。 ・ ストーリーを作るだけではだめなのでしょうか。 ・ 伝えたいことはひとつにしぼるぺきでしょうか。 ・ 作る手順を知りたい。 ・ 風景のある、流れのある舞台を作ってみたい。 ・ 今の社会と自分自身の生活を組み合わせた作品を作りたい。 ・ ストーリーを上手く進める方法。 ・ ストーリーを考えるとき最初から順に作るのか、それとも書きたいところから作っていいのか。 ・ あるシーンは浮かぶが、そこから先へ進まない。 ・ どんどん場面が展開して舞台には合わないものになってしまう。 ・ イメージはあるがラストが決まらない。 ・ 人物のキャラクターは決まっているが、その人物になにをさせるか。 ・ 人数がどんどん多くなってきてまとまらない。 ・ 部員ふたりだけのものを書きたい。 ・ 登場人物の個性を出すには。 ・ キャラクターの作り方のコツは。 ・ 人物の気持ちの流れをうまく表現できない。 ・ 書いていくうちに人物の性格があいまいになる。 ・ テレビのドラマを脚本にしたら、暗転や場面の数が多くなってしまった。 ・ エピソードを思いつくけど、それをどのような感じで書いていったらいいかわからない。 ・ ひとつの場面は作れるが、つなぎ合わせることができない。 ・ 起承転結の作り方。 ・ 人物の名前のつけ方。 ・ セリフの書き方。 ・ セリフは普段使うような言葉でいいのか。 ・ 舞台の約束ごとがわからない。 ・ なにに注意して書けぱいいか など 戻 る |
四
2つの話を絡ませ、対立構造を作る ○素材が先か、状況が先か ○ふたつの話を絡ませる |
|
六・中心人物と場所について ○どのような人物に素材を乗せるか ○中心人物の背景を考える ○どのような場所で展開させるか |
どのような人物に素材を乗せるか 選んだ素材の状況を考え、どのような人物にその素材を乗せるか考えます。 男性か女性か、年齢はいくつにするか。職業は。ということを考えるのですが、ここ数年間実施した脚本創作の講習会の参加者は、高校演劇部の部員かその顧問ということで、中心人物は「高校生」とすぐ決まってしまう傾同にありました。参加者のイメージとしては、高校生が上演するということを問提にしているからとは思いますが、本来は「どのような人物にのせると、素材がよりよく生きるか」と考えるべきところですが、今回はその辺についてはあまり深入りしませんでした。 超能刀と不登校のカードを引いた演劇部員に展開のイメージを聞いたとき、「高校二年生」という答えが返ってきたのですが、会社員であったり、運転手やパートのおぱさんでもいいですし、あるいはホームレスの人とか外国人でも面白い展開が考えられるような気がします。 でも、時間の都合やカ−ドを引いた生徒のイメージを尊重して「高校生」ということで話を進めることにしました。 このように、ある素材を展開するための人物をどのよう立場の人間にするかということは、とても大切なことです。最適というものはないのですが、いろいろな人物を考え、その人物の場合どのような展開になるかということをイメージしてみることが重要です。後で述べる「テーマ」と関連して、「自分の主張したいことを実現するための最適な人物をだれにするか」ということも重要なことです。 中心人物の背景を考える 中心となる人物の立場を決めたなら、その人物の背景を考えます。 「超能力」と「不登校」のカードを引いた場合を元に参加者全員で考えてみました。 超能力を持った高校生はいつからその力に気づいたのか。いままで、それはどのようなときに表に出たのか。そして、その力に対して周囲の反応はどうだったのか。それらを自分ではどのようにしたいと思っているのか。 不登校になっている高校生は、いつからなぜ不登校という状況になったのか。自分では、それをどのようにしたいと思っているのか。周囲の態度や反応はどうなのか。家族構成や家庭環境はどのようになっているのか。 このようなことをイメージしながら、その人物の持っている考えや性格、背景などをはっきりさせていきます。姿がはっきりしないうちにセリフを書いても、部分的なものになり、その場かぎりのあいまいな人物になってしまうのです。 できれぱ、ひとりの人物についてノート1ページを使って、特徴をメモしよう。アニメであれぱ、衣装や髪型を決め、顔の特徴やいつも持っている小道具の種類や色まで考えて紙にデッサンし色を塗り、性格や能力を書き加える作業に似ています。 それまで漠然としていた人物の姿を、動き出せるように少しずつはっきりさせていくのです。 どのような場所で展開させるか 話が展開する「場所」は、後でゆっくり考えてもいいのですが、この辺である程度のイメージを持つこともいいかと思います。 いろいろな沢山の場所で話が展開するよりは、中心となるある特定の場所をイメージし、そこでの展開をまず考えます。そして、そこでの展開が難しい場合、補足的な意味で別の場所を加えるように考えた方がいいように思います。 以前の講習会で話した、「屋上」の例を紹介しました。 青空のもとでの屋上は未来に向かって飛んで行けそうな予感を与えてくれます。また、屋上のフェンスの外に立って下を見たときは、死との境目を感じさせます。 今、自分が考えている話の中心となる人物が、どのような場所に立ったとき、その内容がより膨らんだものになるかということを十分考えて、時間や場所の設定をすることが大切なのです。 このように素材からイメージした人物を、どのような場所で行動させるかということは、話の展開や登場人物に大きな影響を与えます。 ○ 学校(教室、保健室、屋上、校庭、等) ○ 家の中(自分の部屋、居間、台所、庭、等) ○ 外(公園、駅前、近辺、バス停、神社、等) ○ 乗り物(バス、電車、車、飛行機、船、等) ○ 建物(デパート、病院、スーパー、駅、等) ○ 特別な場所(天国、地獄、戦場、山小屋、夢の世界、無人島、海の中、宇宙、等) まだまだあります。いろいろな場所をイメージしながら、もっとも適当と思われる「場所を考えよう。 そして、できれぱ「同時進行形のイッパイセット」でできる場所で考えて見よう」と話しました。 「超能力」と「不登校」の場合は、ふたりが出合う場所として自然に感じるところがいいでしょう。また、ふたりの出会いだけでお互いが変わるという展開には無理があります。 いろいろな人と係わることでふたりが変化していく場所として「公園」をイメージしてみました。その公園でふたりが出合う必然があれぱ、そのふたりにいろいろな人が係わるように構成することは、そんなに難しいことではありません。 戻 る |
八 資料集めとノート ○脚本は脚(アシ)でかせぐ ○調ぺることで新しい発見がある ○ネタ集めは普段から |
脚本は脚(アシ)でかせぐ ある作家が「脚本は脚(アシ)でかせいで書くから脚本というのだ」とテレビで言っていた。 人物が決まり、展開する場所のイメージが浮かんだなら、その場所に行ってみることです。そして、その場所に立ち、その雰囲気の中で人物が生きて生活していることをイメージするのです。それまで、頭の中で考えていたことと違って、生き生きとした実感が生まれます。 調ぺることで新しい発見がある ある高校で「高齢化社会」をテーマにした脚本を作ることになった。演劇部員の生徒を三つのグルーブに分け、それぞれ課題を決めて調査した。 演劇に限らず芸術活動全般に言えることとして、「対象をよく見る」ということが大切です。その場所に実際に行って「見る」ということだけでなく、「調ぺてみる」「考えてみる」ということを含めた「よく知る」ということが重要なのです。 ネタ集めは普段から ネタ(脚本の材料となる種)は、「脚本を書いてみようと思った時」に捜すのではなく、晋段の生活のなかで感じたことを貯めておくことです。 |