「脚本の書き方入門」
      D.  生徒対象の脚本創作
講習会

@生徒対象の脚本創作講習会        完 結
    ・生徒対象の脚本創作講習会
    ・講習会に期待すること
A脚本を書く前に                完 結
    ・脚本を書く前に
    ・舞台を多く見る
    ・真似から自分のものへ
    ・舞台は虚の世界
B脚本ができるまでの流れと素材さがし   完 結
    ・脚本ができるまでの流れ
    ・表現したいものを捜す
    ・舞台になるかどうかを吟味する
    ・書きたいものがないなら書くな
    ・素材から人へ
    ・完璧な人は劇にはならない
C二つの話を絡ませ、対立構造を作る    完 結
    ・素材が先か、状況が先か
    ・ふたつの話をからませる
D素材の選び方                 完 結
    ・カード方式の例
    ・家出と万引き
    ・超能力と不登校
E中心人物と場所について           完 結
    ・どのような人物に素材を乗せるか
    ・中心人物の背景を考える
    ・どのような場所で展開させるか
Fテーマとラスト                  完 結
    ・素材と題材(テーマ)の違い
    ・全体像が見えてきたならテーマを決める
    ・ラストをどうするか
    ・本来は、ねらいが先
G資料集めとノート                                         完 結 
    ・脚本は脚(あし)でかせぐ
    ・調べることで新しい発見がある
    ・ネタ集めは普段から
H人物と背景を考える               完 結
    ・超能力と不登校を例に人物を考える 
    ・対立構造をはっきりさせる
    ・名前を決める
I開幕のポイント                                             完 結
    ・悩みの経過は説明しない
    ・話全体のどこから始めるか決める
    ・開幕のインパクト
    ・開幕のポイント
J結末を決める                                                完 結
    ・ラストを決める
    ・結末が変われば違う話になる
    ・安易な解決はしない
K粗筋を考える                    完 結
    ・開幕と結末をつなぐ場面を考える
    ・登場させる人物を考える
L大きな流れ(粗筋)                完 結
    ・だれがどうなる話か
    ・どのようなキッカケで変わるのか
    ・伏線をはる
    ・各場面の目的
    ・山場と幕の下ろし方
M小道具の有効な使い方             完 結
    ・書きたいことは書くな
    ・喋らせたいことは喋らせるな
    ・小道具を有効に使う  
N生徒対象の講習会のまとめ           完 結
    ・生徒対象の講習会のまとめ

 「脚本の書き方入門」表紙へ

                 一 生徒対象の脚本創作講習会
                                      ○生徒対象の脚本創作講習会
                      ○講習会に期待すること

             生徒対象の脚本創作講習会

 演劇部顧問とともに行ってきた「脚本創作イーハトーブの会」と並行して、演劇部の生徒を対象にした「脚本創作」講習会も担当してきました。
 年三回をひと区切りとする「イーハトーブの会」とは違って、一日だけの日程で、しかも五時間のときもあれぱ二時間だけという設定のときもありました。参加する人数もいろいろでしたが、脚本を書きたいという意欲がどこの講習会でも感じられました。
 講習会の内容ほ、「イーハトーブの会」で話し合われた内容を参考にしながら、私なりに整理した手順で行いましたが、講習会を担当するなかでわかったことが数多くありました。
 参加する演劇部員のなかには、自分が書きたいと思っている構想を話したり、実際に書いた脚本を手に、感想を聞きたいという演劇部員もいました。
 演劇という活勲を体験しながら、自分の考えていることを脚本という形で表現したいという意欲を感じました。

 これまでの十三回の講習会の資料や、参加者から出された多くの意見や感想、そして初稿から書き直しをした第二稿・第三稿という脚本の原稿や、快く提供していただいた資料などが手元に残っています。
 それらを読みながら振り返ってみると、どこでどのように迷い、行き詰まり、展開できなかったのかというようなことが私なりに感じられるのです。
 「イーハトーブの会」と重複する内容もありますが、ここでは演劇部頁のための講習会を実施したなかから、その内容を紹介したいと思います。

             講習会に期待すること

 二○○一一年二月の講習会で「脚本創作分科会」に参加した演劇部員に、この分科会に参加した理由を書いてもらったので、その一部を紹介します。
・ 題材の選ぴ方を知りたい。
・ 書いてみたいがなにを書いたらいいかわからない。
・ 書きたいものはあるが、どのようにして形にしていいかわからない。
・ 何か話が浮かんでも、その話でなにを伝えたいのかわからなくなる。
・ ストーリーを作るだけではだめなのでしょうか。
・ 伝えたいことはひとつにしぼるぺきでしょうか。
・ 作る手順を知りたい。
・ 風景のある、流れのある舞台を作ってみたい。
・ 今の社会と自分自身の生活を組み合わせた作品を作りたい。
・ ストーリーを上手く進める方法。
・ ストーリーを考えるとき最初から順に作るのか、それとも書きたいところから作っていいのか。
・ あるシーンは浮かぶが、そこから先へ進まない。
・ どんどん場面が展開して舞台には合わないものになってしまう。
・ イメージはあるがラストが決まらない。
・ 人物のキャラクターは決まっているが、その人物になにをさせるか。
・ 人数がどんどん多くなってきてまとまらない。
・ 部員ふたりだけのものを書きたい。
・ 登場人物の個性を出すには。
・ キャラクターの作り方のコツは。
・ 人物の気持ちの流れをうまく表現できない。
・ 書いていくうちに人物の性格があいまいになる。
・ テレビのドラマを脚本にしたら、暗転や場面の数が多くなってしまった。
・ エピソードを思いつくけど、それをどのような感じで書いていったらいいかわからない。
・ ひとつの場面は作れるが、つなぎ合わせることができない。
・ 起承転結の作り方。
・ 人物の名前のつけ方。
・ セリフの書き方。
・ セリフは普段使うような言葉でいいのか。
・ 舞台の約束ごとがわからない。
・ なにに注意して書けぱいいか          など

                          
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                         二 脚本を書く前に
                       ・脚本を書く前に
                                   舞台を多く見る 
                       ・
真似から自分のものヘ
                       ・
舞台は虚の世界
                       ・
舞台は映画やテレビや小説と違う
                        ・
なんでも劇になるとはかぎらい                        ・
脚本を書くときの心構え

                脚本を書く前に

 アンケートを書いてもらった後、本の書き方の内容に入る前に,舞台の特質や基本的な心構えのようなことについて話しました。
 最初に、「脚本を書く」ということは個人的な作業ではあるけれども、大切な演劇活動のぴとつであることや、既製脚本とは違って自分の考えやおもいが表現できるすぱらしさがあることを伝えました。
 しかし、実際に書いてみると自分の思うようなものにならないことが多く、構想の段階で終わったり途中で挫折したりすることがある。「今回の講習会で『脚本を書くためのポイント』のような参考になるなにかを掴んでもらえるなら嬉しい」と話しました。

                    舞台を多く見る

 「書く」ためには「見ることが大切」という言葉があります。この言葉にはいろいろな意味が込められているのですが、脚本を書こうとする時、舞台を見ることが参考になります。できるだけ多くの生の舞台を見るようにしよう。
 そして、見た後の「心に残った感想」を自分なりにじっくりまとめる作業をすることが、脚本を書くことの栄養になります。「面日かった」という印象を持ったなら、それは「なにが」「なぜ」「どのように」面白かったのか分析してみるのです。ひとりの観客という受け手の側の目だけでなく、作り手側の目で分析し、その構造を考えてみるのです。

 その舞台の脚本があれぱ、なお一層深く研究することができます。全体の構造からひとつひとつのセリフまで、じっくり読み返すことでいろいろなことを知ることができるでしょう。
 数人で話し合えぱ、自分ひとりでは発見できなかったことも見えてくることがあります。視点が違えぱ感想も違ってきます。その違いを考えることで、まだ別な発見があるのです。
   

              真似から自分のものヘ

 最近沢山の本を出すようになった女性作家のテレビでの番組を見ていたところ、「どのようなきっかけで作家になろうと思ったのですか」という質問に対して、次のように答えていました。
 「小説を書きたいということは以前から思っていだけれども、どのようにすれぱ書けるかわからなかった。そこで、自分の好きな作家の小説を最初の一行から最後までワーブロに写し取ることをやってみた。何冊も何冊もその作業を続けていくうちに、一年ほどしたら小説というものの形が分かってきた」と言うのです。
 それを元に、自分の書きたいものを書き始めたということでした。

 最初は「真似」でもいい。そこからなにかを学ぴ「自分のもの」ヘと形を変えていけぱいいと思う。「今のありとあらゆる舞台の原点はシェイクスビアだ」とさえ言う人もいます。シェィクスピアからヒントをもらい形を変えて新しいものを作り出す。その舞台からまだヒントを得て次のものが生まれる。テレビのドラマにしても、映画にしても、そのような意味での全くのオリジナルはありえないと言うのです。
 全て自分が考え出したと思っていても、それは過去の自分がどこかで体験したり見聞きしたことが、無意識のうちに形を変えたりヒントになったりしてできあがったものかもしれないのです。
 そうであるとしたなら、いろいろな舞台や作品に触れ、そこから感じた様々なものを自分なりに再構成し、自分の伝えたいものへと形を変えることをオリジナルとして表現してもいいと思います。(もちろん、著作権にふれないように要注意)

               舞台は虚の世界

 自分が考えていることや感じていること、そして表現したり伝えたいと思っていることを脚本という形にして舞台に乗せることには、小説を書いたり絵を描くこととは別の面白さがあります。
 その脚本を演じてくれる人がいてある形になり、その舞台を見てくれる観客がいる。考えただけでワクワクします。

 舞台の世界は作られた世界(虚の世界)なので、自分がイメージしたことをどんどん表現できるわけです。その作られた世界の中で、実際の世界(実の世界)のもつ「ある真夷」を伝えることができるのです。

 その意味では、映画やテレビや小説と同じように感じますが、実際には大きな違いがあります。
 

         舞台は映画やテレビや小説と違う

 「脚本を書いてみよう」と考えている人に、最初に伝えたいことは「舞台のルール」をまず知ってほしいということです。
 スボーツにはそれぞれ独自のルールがあり、そのルールにしたがっ競技するように、舞台にもそれなりのルールがあります。そうはいっても、きちんとしたルールブックがあるわけではありません。
 脚本で書かれた内容を舞台にしたときに、「観客から見てわかるように」、そして「その世界に自然と入り込めるよう」にするための心構えのようなものが必要なのです。
 映画やテレビでは、場所を飛ぶためのわかりやすい手法があります。
 

   「ちょっと大阪まで行ってくれ」
   「わかりました」 
 という会話の後、新幹線が走っている映像になる。そして、大阪駅をバックに先ほどの人が歩いて出てくる。

 これで、見ている人は大阪に着いたことを納得します。
 ところが舞台ではそうはうまくいきません。前のセットを片付けて大阪駅にし、その後別なある場所のセットを組み直すために暗転をするというのでは舞台処理が大変です。
 時間経過にしても同じことが言えます。
 映画やテレビでは「そして、3年後」と画面にテロッブを流すと、見ている人は「3年後だな」と納得して続きを見てくれますが、舞台はそうはいきません。暗転をして別なセットになったとしても、説明がなけれぱ、どこの場所なのか時間がどれだけ経過しているのかわからないのです。
 セリフで「あれから3年たったのね」と言われても、映画やテレビのテロッブにはかないません。

 ある時、小説「野菊の墓」に感激した高校生が、それを脚本の形にして舞台に乗せたことがありました。場面をどんどん変えてストーリを追いかけるのですが、転換が多いためブツ切りになってストーリーさえわからない舞台になってしまったのです。小説そのものを、テレビや映画のように舞台に表現しようとすると無理がくるのです。
 「舞台は映画やテレビや小説と違う」ということを確認してもらえたでしょうか。
 舞台には、舞台がなりたつためのルールがあります。その一部を考えてみます。
 

    なんでも劇になるが、なんでも劇になるとはかぎらない

 まず、あつかう内容を考えてみよう。
 なんでも劇になるかと言えば、それなりの力があれぱ「劇になる」と言えると思うのですが、普通は「なんでも劇になるとはかぎらない」という答えが返ってくるでしょう。
 場所が次々に変わったり時間が前後に飛んだりするものは、原則として舞台には向かないと思ってください。
 もちろん、アニメや映画の特撮のように空を飛んだり瞬間的に変身するような場面を舞台にすることにも無理があります。
 「なに(素材)」を「どのような形であつかうのか」ということが大切です。

 脚本の場合、できたと思われる脚本を舞台に乗せることで劇として完結するわけですから、できた脚本が上演したいと思われる「作品」にまで仕上がっているかどうかということが問題になります。
 そのような意味で、作り方によってはなんでも劇になるかもしれないけれども、一般的には「なんでも劇になるとはかぎらない」と言えるでしょう。

 ある素材に対して「なにかを感じるハート」が大切ですが、「それを舞台という制約された場所で、どのように表現するのか」という舞台の基本をしっかり理解しましょう。
 その意味では、自分の表現したいものがあったとしても、内容によっては舞台でない方がいい場合もあるということを覚えておいてください。

             脚本を書くときの心構え

 慣れてくれぱ、いろいろな手法を使うことで、うまく扱うことができる場合もありますが、初めて脚本を書く場合、原則として次のことを意識して取り組もう。
 扱い方については後で詳しく説明するものもありますが、今の段階での留意事項です。

リアルなもの(現実におこっていること)を取り上げる
場所が飛ぱない(できれぱ特定の1ケ所で、いっぱいセットの舞台で)
時間が飛ばない(同時進行形)
アニメや特撮のようなものは避ける
魔法便い・幽霊・超能方・死後の世界を扱う場合は要注意


 舞台になるかならないか」という判断は、実は大変難しいのです。イメージを「脚本」という形にしても「舞台になる」とはかぎらないのです。映像や小説の方が表現として合う場合もあるのです。舞台として破綻がくるような場合は、捨てることも人切です。

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       三 脚本ができるまでの流れと素材さがし
                  
・脚本ができるまでの流れ
                        ・表現したいものを捜す
                        ・舞台になるかどうか吟味する
                        ・書きたいものがないなら書くな
                        ・素材から人ヘ
                        ・完璧な人は劇にならない

          脚本ができるまでの流れ

 講習会の最初に、「脚本創作イーハトーブの会」のときに使用した「脚本ができるまでの流れ」の表を配布しました。
 その流れに添って講習を進めることにしたのですが、はたしてどこまで実施できるか、全体の雰囲気と時間を考えながら進行することにしました。
 「脚本ができるまでの流れ」の表の反応は良かったようです。
 また、時問に余裕があるときは、劇作ノートについても説明しました。

                
表現したいものを捜す

 舞台というものへの、ある程度の理解ができたなら、次は「脚本の素材さがし」です。
 脚本を書く場合「どこから手をつけるか」という決まった方はありません。自分で表規したいものを捜すことから始めよう。
 今の世の中、周りを見ると脚本の材料になることが沢山あります。新聞やテレビで報道される内容を見ても、心にひっかかることが沢山あります。
 その中から、自分の考えていることを脚本という形で表現してみようと思う出来事があるはずです。それを一つ取り上げ深く掘り下げてみることで、脚本という形になるものを捜してみることにしました。

              舞台になるかどうか吟味する

  ある素材についてイメージしたこと全体を話し始めると、延々と続く壮大なドラマのように際限無く状況を説明することになります。
 例えぱ「いじめが原因で退学した女子高校生」という現実的な問題を考えた場合

生い立ち
家族構成や家庭環境
いじめの原因やその内容
不登校になった経過
友人関係
教師の対応
教育相談やカウンセリングを受けたこと
退学した経過
その後の引きこもりの生活の様子

                        など
 このようなことについて考えられるわけですが、この経過そのものが、そのまま劇という形で舞台に乗せるわけではないのです。
 現在行われている高校演劇という形を考えた時、六○分という制約があるので、この話のどの部分をどのように切り取ってアレンジするかということが問題になるのです。仮に、この経過全体を表現したいのであれぱ、小説が一番艮い形となるでしょう。
 また、空を飛んだり海中を泳ぐような世界を表現したいのであれぱ、アニメや漫画、あるいは映画やテレビで表現することを考えるべきだと思います。舞台の制約をよく把握し、その中での適切な表現方法がみつからないときは、脚本という形にするのは諦めましょう。

         書きたいものがないなら書くな

  脚本を書いている人の中には、「書きたいものがないなら脚本を書くな」と言う人がいます。
 私も、この言葉には一理あると思います。「書きたいと思うこと」がないのに、無理に脚本を書こうとしても「私も脚本を書いた」という自己満足的なものになり、いわゆる「作品」にまでならないで終わってしまうか、あるいは途中で挫折して捨ててしまうことが予想されるからです。
 「書きたいと思うこと」を持っていれぱ、資料を調べだり深く考えたりしながら何度でも書きなおして「作品」にまで高めようということになり、内容あるものになる可能性があるからです。
  つまり、脚本は「そんなに簡単に書けるものではない」ということの別な表現として、「書きたいものがないなら脚本を書くな」となるのです。
 これに対して、演劇に係わったのを機会に「書けるものなら、脚本を書いてみたい」という声に応える考え方もあると思うのです。

               素材から人ヘ

 素材を選んだとしても、そのままでは脚本になりません。そこに、形のはっきりした「人」をイメージすることが大切です。
 例えぱ「いじめ」という素材を考えた場合でも、中心となる人物の立場をだれにするかで展開が違ってきます。

いじめを受けている人
いじめを行っている人
いじめられている人の親や家族
いじめている人の親
いじめられている人の担任
いじめを知っている第三者
いじめを取材している新聞記者

                     など
 このように、「いじめ」という素材をだれの視点から描くかということを明確にする必要があります。それによって、話の展開が大きく違ってきます。

              完璧な人は劇にならない

 また、「完璧な人は劇にならない」ということも知っておいてください。
 なんでもよく知っていて、きちんと仕事をする優秀な人を中心においても観客は興味を持ちません。そのような人間を見せられても「そんな人いない」ということになってしまうからです。 それよりも、「悩み・不安・迷い」などを持った人を中心に展開するストーリーの方が、「次はどうなるのだろう」と興味をもって見てくれます。
 悲しい心情を理解して涙を流したり、理不尽な扱いに怒ったり、ハッピーな結末にホッしたりするのです。
 同じ素材でも、扱い方によっては展開が大きく変わってきます。中心となる人物をさまざま置き換え、どのような人物で展開させるか検討してください。

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      四  2つの話を絡ませ、対立構造を作る
                 
○素材が先か、状況が先か
                       ○ふたつの話を絡ませる


            素材が先か、状況が先か

 書きたいと思う素材が決まる過程はひとつではありません。
 「いじめ」を素材として扱いたいと思っても、それをどのような角度から描くか決まらなかったり、中心となる人物がぼやけていれぱ、それを素材として取り上げることはできないわけです。
 また、さまざまな問題を抱えたある人物をイメージした場合、その人物をはっきりさせる中で、どんな問題に中心を置くかという「素材」が決まる場合もあるわけです。

 漠然と「演劇部を背景にした物語」を舞台に乗せようという話し合いをしているうちに、「発表会が近いけれども練習がうまくいかない」という設定になり、その原因に「練習に出てこない部員がいる」という状況が話し合われたとします。練習に出てこないその部員は「両親の離婚問題」で悩んでいたとすれぱ、素材は「両親の離婚問題」となり、それを「演劇の発表会」を背景に展開させる運ぴになるのです。
 このように、書きたいものがはっきり決まっていない場合は、状況から考えを進め、その中から話の中心となる「素材」を決めていく場合もあるので、「素材が先でなけれぱならない」というわけでもないのです。
 しかし、六○分という短い時間の中で展開する話の中心となる素材は、はっきりとさせておくことが大切です。

               ふたつの話を絡ませる

 今の話しでは素材を「両親の離婚問題」としたのですが、この問題を正面から取り上げ、「両親の離婚間題で悩む高校生」そのものだけを六○分展開させたのでは、暗い展開になってしまいます。その話を展開する背景として「演劇の発表会を成功させようとする部員の姿」を絡ませることで、ストーリーの展開に幅が出てきます。
 このように、素材として取り上げたいものがある場合、それ一本の展開を考えるのではなく、その展開を助ける「もうひとつの話」を考えて、ふたつの話を絡ませた展開を検討してください。

 「脚本創作イーハトーブの会」のある日の講習会で、「女子高校生の妊娠中絶を素材として取り上げたいが、どう手をつけたならいいかわからない」という話が出されました。この素材そのものだけを真正面から描く方法もあるのですが、もうひとつの話と絡ませる具体例として話をしました。例えぱということで思いつきで話したのですが、舞台の上で表現できる運動部ということで、卓球部を設定しました(他の部活動で、もっといいのがあるかもしれません)。「三年生最後の大きな大会の数ケ月前に、妊娠したことに気づく女子高校生」という設定にすれぱ、いろいろな展開が考えられます。「県のトッブレベルの選手で、自分も今年はインターハイに出ることを目標にしていた。しかしこのままでは…・…・」となるのです。
 卓球の練習の場面や他の部買の意気込み、インターハイ出場へ向けた熱意などの舞台を背景に悩む姿を描くことで、素材を真正面から描いた舞台よりは展開しやすくなると思うのです。
 また、現実の場面だけでの展開を考えるのでな甘く、天使のような可愛い衣装をつけた水子たちの集団の場面をイメージーし、踊りや歌を入れたりしながら、「私の年はニケ月と十二日。いつまでたってもニケ月と十二日。向こうの世界に行きたかったなあ」と言わせることで、雰囲気を変えた表現を加えることができるということも話しました。


 自分で表現したい素材の展開を考えたとき「その展開を助けるもうひとつの適切な話」を選択するとで、ストーリーの展開に幅が生まれ、躍勤感ある舞台にすることができるのです。
 「二つの話を絡ませる」ことも、記憶のどこかにl留めておいてください。


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           五 素材の選ぴ方
                    
○カード方式の例
                           ○家出と万引き
                           ○超能刀と不登校

                カード方式の例

  「今、待別に書いてみようと思う素材はないけれども、脚本を書いてみたい」と思っている時、ある人からすれぱ「書きたいものがないなら、書くな」と言われそうですが、そこはまあ脚本の書き方の勉強ということで「カード方式」を紹介し、参加者に体験してもらいました。
 劇の素材になりそうな単語を、一枚のカードにひとつずつ書いたものを百三十枚ほど準備しました。それをよく切り混ぜ、各自二枚引くのです。そのカードに書いてある単語をもとに、その展開を考えることから脚本の構想を考えるという演習です。
 二○○三年二月の「脚本創作分科会」で実施したカード方式の例をふたつ紹介しましょう。


                家出と万引き

 ある演副部員が引いたカードは「家出」と「万引き」の組み合わせでした。みんなからいろいろな考えが出されましたが、その展開に幅をもたせるためにはどのようにしたならいいのでしょうか。

 「一人の人(仮に高校生A)が家出をして、お金がなくなったから万引きした」という設定では、単なる一本の流れになり、「対立」も「幅の広がり」も見えてこない。そこで、この「家出」と「万引き」を二人のAとBに分けて考えることにしました。
 ・家出をしたA
 ・Bが登場し、Aから金を巻き上げようとする
 ・空腹で所持金のないAに驚くB
 ・事情を聞いたBはAに同情する
 ・近くのコンビニでパンを万引きしてくるとBは言うが、Aに止められる
 このような設定にすれぱ、一人の価値観や家庭状況の違いからくる考え方のぶつかり合い(対立)が生まれ、それを元にした展開に幅が出てくるという話をしました。
 その二枚のカードを引いた生徒は「これを脚本に書いてみたい」とみんなに話していました。
 このように、二つの話を扱う場合、ひとりにそのふたつの素材を持たせるよりは、ニ人に分けてそれぞれ別な立場でぷつけたり、「両親の離婚問題」と「演劇の発表会」のように、ひとりと数人に分けて展開することも考えてみよう。
 もち論、舞台は想像で作られる世界なので、いろいろな手法があります。一人の人にもうひとりの自分を登場させ、本音と建前をふたりに分けて表現する舞台もあります。舞台を沢山見ることでいろいろな表現を考えてみよう。


                超能刀と不登校

 「家出と万引き」について話し合いをした後、別の生徒から、自分が引いた「超能力」と「不登校」について話し合いをしてほしいという要望がありました。その生徒が、自分で考えた状況や設定について話をした後、いろいろ意見交換したのです。

 まず、「超能力」を持った人と「不登校」の人のふたりについて考えました。しかし、超能力を持った人の扱いが問題なのです。超能力によってなんでも思いのままにできるのであれぱ、いわゆる「完璧な人」と同じになってしまうので、現象としては面白いかもしれないけれども、人間が成長する様子などが見えてこないのです。
 そこで、自分でコントロールすることができない超能力にすることにしました。そして「その力」を「クシャミで物を壊す」ということと「ふいに、相手の本心が読めてしまう」というふたつのことにしようということになりました。
 不登校になっている人は、相手がなにを考えているかわからないことから対人恐怖症的になっていて、「相手の心が読めるようになりたい」と思っている。また、超能力を持っている人は、ふいに相手の本心を感じ、自分に対して攻撃的な心や軽蔑するような心を感じると、突然クシャミが出て周囲のなにかを壊してしまう。そのことから「自分の力が出ないような普通の人」になりたいと願っている。このような設定でストーリーを考えることにしたのですが、続きは次の項で紹介することにします。

                   戻 る

          六・中心人物と場所について
                     
どのような人物に素材を乗せるか
                            ○中心人物の背景を考える
                            ○どのような場所で展開させるか

           どのような人物に素材を乗せるか

 選んだ素材の状況を考え、どのような人物にその素材を乗せるか考えます。
男性か女性か、年齢はいくつにするか。職業は。ということを考えるのですが、ここ数年間実施した脚本創作の講習会の参加者は、高校演劇部の部員かその顧問ということで、中心人物は「高校生」とすぐ決まってしまう傾同にありました。参加者のイメージとしては、高校生が上演するということを問提にしているからとは思いますが、本来は「どのような人物にのせると、素材がよりよく生きるか」と考えるべきところですが、今回はその辺についてはあまり深入りしませんでした。

 超能刀と不登校のカードを引いた演劇部員に展開のイメージを聞いたとき、「高校二年生」という答えが返ってきたのですが、会社員であったり、運転手やパートのおぱさんでもいいですし、あるいはホームレスの人とか外国人でも面白い展開が考えられるような気がします。
でも、時間の都合やカ−ドを引いた生徒のイメージを尊重して「高校生」ということで話を進めることにしました。

 このように、ある素材を展開するための人物をどのよう立場の人間にするかということは、とても大切なことです。最適というものはないのですが、いろいろな人物を考え、その人物の場合どのような展開になるかということをイメージしてみることが重要です。後で述べる「テーマ」と関連して、「自分の主張したいことを実現するための最適な人物をだれにするか」ということも重要なことです。

            中心人物の背景を考える

 中心となる人物の立場を決めたなら、その人物の背景を考えます。
 「超能力」と「不登校」のカードを引いた場合を元に参加者全員で考えてみました。
 超能力を持った高校生はいつからその力に気づいたのか。いままで、それはどのようなときに表に出たのか。そして、その力に対して周囲の反応はどうだったのか。それらを自分ではどのようにしたいと思っているのか。
 不登校になっている高校生は、いつからなぜ不登校という状況になったのか。自分では、それをどのようにしたいと思っているのか。周囲の態度や反応はどうなのか。家族構成や家庭環境はどのようになっているのか。
 このようなことをイメージしながら、その人物の持っている考えや性格、背景などをはっきりさせていきます。姿がはっきりしないうちにセリフを書いても、部分的なものになり、その場かぎりのあいまいな人物になってしまうのです。
 できれぱ、ひとりの人物についてノート1ページを使って、特徴をメモしよう。アニメであれぱ、衣装や髪型を決め、顔の特徴やいつも持っている小道具の種類や色まで考えて紙にデッサンし色を塗り、性格や能力を書き加える作業に似ています。
 それまで漠然としていた人物の姿を、動き出せるように少しずつはっきりさせていくのです。


          どのような場所で展開させるか

 話が展開する「場所」は、後でゆっくり考えてもいいのですが、この辺である程度のイメージを持つこともいいかと思います。
 いろいろな沢山の場所で話が展開するよりは、中心となるある特定の場所をイメージし、そこでの展開をまず考えます。そして、そこでの展開が難しい場合、補足的な意味で別の場所を加えるように考えた方がいいように思います。
 以前の講習会で話した、「屋上」の例を紹介しました。
 青空のもとでの屋上は未来に向かって飛んで行けそうな予感を与えてくれます。また、屋上のフェンスの外に立って下を見たときは、死との境目を感じさせます。
 今、自分が考えている話の中心となる人物が、どのような場所に立ったとき、その内容がより膨らんだものになるかということを十分考えて、時間や場所の設定をすることが大切なのです。
 このように素材からイメージした人物を、どのような場所で行動させるかということは、話の展開や登場人物に大きな影響を与えます。

 ○ 学校(教室、保健室、屋上、校庭、等)
 ○ 家の中(自分の部屋、居間、台所、庭、等)
 ○ 外(公園、駅前、近辺、バス停、神社、等)
 ○ 乗り物(バス、電車、車、飛行機、船、等)
 ○ 建物(デパート、病院、スーパー、駅、等)
 ○ 特別な場所(天国、地獄、戦場、山小屋、夢の世界、無人島、海の中、宇宙、等)
 まだまだあります。いろいろな場所をイメージしながら、もっとも適当と思われる「場所を考えよう。
 そして、できれぱ「同時進行形のイッパイセット」でできる場所で考えて見よう」と話しました。


「超能力」と「不登校」の場合は、ふたりが出合う場所として自然に感じるところがいいでしょう。また、ふたりの出会いだけでお互いが変わるという展開には無理があります。
 いろいろな人と係わることでふたりが変化していく場所として「公園」をイメージしてみました。その公園でふたりが出合う必然があれぱ、そのふたりにいろいろな人が係わるように構成することは、そんなに難しいことではありません。


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              七  テーマとラスト
                   ○素材と題材(テーマ)の違い
                         ○全体像が見えてきたならテーマを決める
                         ○ラストをどうするか
                         ○本来は、ねらいが先

           素材と題材(テーマ)の違い

 「イーハトーブの会」の時も演劇部員対象の講習会のときも、「素材と題材ほどう違うのですか?」という質問が出ました。
 このことについて、石原哲也さんは次のように話していました。
 「大根を使って料理しよう」という場合、その時の大根は「素材」であり、大根を使って「ふろふき大根」を作ろうという時の「ふろふき大根」が「題材つまりテーマ」だと説明していました。

  例えぱ「進路に悩む高校生」を素材とした場合、その高校生の姿を通して「何を表現するか」ということが題材でありテーマになるのです。
 
高校生の自立する姿
 ○雇用の少ない社会状況
 
対応する教師の熱心な姿
 
子供に翻弄される親の悩み
 ○
友人関係のきしみ  
                   など
 ひとりの「進路に悩む高校生」を通して表現できることは沢山あります。その中のなにについて話しを絞って舞台にのせようとするかということが、いわゆる「題材でありテーマ」なのです。
 大根をつかって作ろうとしている「料理」の姿をはっきりさせることが大切なのです。

      全体像が見えてきたならテーマを決める

 「超能力」と「不登校」を素材とした話を考える場合、その二人の姿を通してなにを表現するのか決めることにします。
 私は、この素材を話しているうちに、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を思いだしていました。カムパネルラとジョバンニが銀河鉄道に乗り、いろいろな人との出会いを通して発見し、生長していく話しと重なる部分があるように感じたのです。
 公園でさまざまな人と出合うことによって、ふたりがそれぞれ感じたり発見したりすることによって「自立」する姿が表現できればいいなあと感じました。

            ラストをどうするか

 扱う素材が決まり人物や場所が決まとる話が動きだします。
 「超能力」と「不登校」の場合なら、超能力をもった高校生と不登校の高校生が公園で出合ううことにします。そこヘ、いろいろな人が登場することでふたりが自分の置かれている状況を理解するのです。そこで問題となるのがラストです。
 六○分の舞台の最後をどうするかということをしっかり決めておかないと、幕を降ろすことができないのです。 例えぱ、自殺しようとしてあの世とこの世の境に迷いこんだ女子高校生が、そこでいろいろな人と出合う舞台を作ったとします。その最後にこの世に戻ったハ場合と、あの世に行ったのでは大きな違いになります。
 その結論を考えずにどんどんストーリーを展開しても、話のゴールが見えないストーリーとなり、作者自身もあいまいな迷った状態での幕切れになることになります。
 場面場面が面白い展開になっているとしても、その先があっけない幕切れになったとすれぱ、中心となる話しがなんであったのかわからないものになってしまいます。
 脚本も「スタート」の状態を確認し「ゴール」を決めたなら、その間をどのようなストーリーで結ぷか考えるのです。
 スタートした人物が途中の山や谷を越え、汗を流しながら走り、時には休憩したり道に迷ったりと、いろいろな体験をしてゴールにたどり着く。その経過を舞台で表現し、観各に見てもらうのです。もちろんゴールはいつもハッピーエンドとはかぎりません。悲劇的結末かもしれません。あるいは、結論そのものを示すことなく幕を降ろすこともあります。その手法はいろいろあるにしても、ストーリーの展開を考える前にどのようなラストにするか決めることです。

           本来は、ねらいが先

 ここまで、素材の選ぴ方や人物について、そしてその人物が展開するにふさわしい場所について述べてきましたが、本来は「ねらい」が先になってほしいのです。「書くことがないなら書くな」というのはこのへんのことなのです。
 大根があるから「ふろふき大根」を作ろうと考えるのではなく、「ふろふき大根」を作ろうとするから大根を買ってくるのが筋です。
 自分の表現したい内容(テーマ)は、どのような素材に乗せるとよく表現できるかということも考えてみてください。

 心が揺さぶられ突き動かされる「なにか」があって「書きたい」と思うとき、それが大きなエネルギ−になり作品にまで高めてくれるのです。
 例えぱ「いじめ」について述べるなら、現在の高校生のなかにある「いじめ」やそれによる「自殺」に対する「怒り」や「憂い」を強く感じたとします。それを舞台という表現で強く示すとすれぱ、どのような人物にそれを乗せ、どのような場所でどのように展開させるかを具体的に考えるのです。
 いじめはどこでどのように行われていることにするか。いじめに絡ませるもうひとつの話をなににしようか。中心となる人物は男子なのか女子なのか。ラストをどのようにするか。
 このように、自分の表現したいものは「どのような素材のなかでどのように展開させるか」そして「どのようなラスト」にするとより効果的に表現できるかを考えるのです。

 「なにか書いてみたい」という動機でも脚本を書くことはできますが、できれぱ「このことを書いてみたい」という強い動機があれぱ、より深いものになると思います。

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           八 資料集めとノート
               ○脚本は脚(アシ)でかせぐ
                    ○
調ぺることで新しい発見がある
                    ○ネタ集めは普段から

           脚本は脚(アシ)でかせぐ

ある作家が「脚本は脚(アシ)でかせいで書くから脚本というのだ」とテレビで言っていた。 人物が決まり、展開する場所のイメージが浮かんだなら、その場所に行ってみることです。そして、その場所に立ち、その雰囲気の中で人物が生きて生活していることをイメージするのです。それまで、頭の中で考えていたことと違って、生き生きとした実感が生まれます。
 さらに、その雰囲気を作る様々なものを実際に目にすることで、新しい発見が生まれます。

 病院であれぱ、病室を舞台にしたときと、待合室や廊下を舞台にした場合では別な雰囲気になるでしょう。どの場所をどのように切り取るか。その場で使えるものにはどのようなものがあるか。それらを肌で感じ、イメージの内容を膨らませるのです。
 「脚本は脚(アシ)でかせぐ」というのは、少しこじつけのように感じますが一理あると思います。

         調ぺることで新しい発見がある

ある高校で「高齢化社会」をテーマにした脚本を作ることになった。演劇部員の生徒を三つのグルーブに分け、それぞれ課題を決めて調査した。
 一班は町の施設を訪問して、高齢者を側面から支えている職員に直接会い、いろいろな情報を得ることにした。
 二班は町役場に行き、町で取り組んでいる高齢者対策や問題点をまとめ、できれぱホームヘルパーの方からの話も聞いてくることにした。
 三班は図書館で関運資料を調ぺたり、学校の職貝から話を聞くことにした。
 土曜日に中間報告会を開き、そこでの話を参考に不足していた部分を補うための最調査も行った。
 三週間かけてまとまった内容は、それまで頭でイメージしていたものを遥かに越える現実があった。そこから「高齢化社会」に取り組む大きなエネルギ−が生まれ、鰭心が膨らみ一本の脚本が生まれた。
 地区大会止まりの舞台になったが、生徒の感想には、とても勉強になったというものが多かったように記憶しています。

演劇に限らず芸術活動全般に言えることとして、「対象をよく見る」ということが大切です。その場所に実際に行って「見る」ということだけでなく、「調ぺてみる」「考えてみる」ということを含めた「よく知る」ということが重要なのです。
 それによってウソを書かなくても済むのです。
 舞台は創造の世界だとしても、観客が矛盾に感じる部分をできるだけなくするよう努力しよう。
 人物が生き生きと生活し、動き出す「場」を舞台に作り出すための基礎がそこにあると思います。
 

             ネタ集めは普段から

ネタ(脚本の材料となる種)は、「脚本を書いてみようと思った時」に捜すのではなく、晋段の生活のなかで感じたことを貯めておくことです。
 その時感じたことでも、後で書こうとしたとき忘れてしまうことがあるので、手帳や小さいノートに脚本の材料になると思われることを、感じた瞬間にメモするのです。
 セリフとして使える「いい言葉」や「いい話」を集めておくと、いつかなにかの場面で使える事があります。
 石原哲也さんの「俺たちの甲子園」の「セミの鳴き声を止める場面」は、ある体験を参考にしたということや、「チェンジ・ザ・ワールド」に出てくる「月」は、ある小説にそのアイデアがあったということを聞きました。
 また、演劇部顧問のある集まりの時、手帳にメモをしている人に「なにメモしてるの?」と聞いたところ、「今、ちょっといい言葉を耳にしたから」と言っていました。
 みんなも、メモ用の手帳を準備しませんか。

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