Our Fellow Citizen

Our Fellow Citizen

 4/15にパウエル国務長官が日本人の人質事件についてTBSのインタビューに答えた内容が報道されていました。インタビューの内容は国務省のweb siteに全文が掲載されています。報道だけではニュアンスがわかりにくいところがあったので、会見録(transcription)を読んでみました。インタビューはもっと長いもので、下記は、人質事件に関する部分だけの抜書きです。

 質問に答えるにあたって、まず理念を述べてから、次に具体的なことがらについて自分の気持ちを表明する。そのあとで見解、最後に再び理念と、パウエル長官らしい発言だなと感じました。

 自己責任論が台頭するのは、米国にとってはあまり都合の良いことではないかもしれません。なぜなら、日本からは自衛隊以外の人がやってくる復興支援が期待できなってしまうかもしれないからです。自衛隊は民間企業とは違ったことができるでしょうが、規模の大きな経済活動は民間企業でなければ困難です。

 かといって、同盟国の政府に異を唱えることは具合が悪い。一方、米国からは多くの民間人がイラクに渡っていて犠牲者も出ているのですから、うっかり自己責任論に同調的なことを言うと国内から反発されてしまうかもしれません。

 相当に難しい局面だったのではないかと思いますが、まず理念をたてる見識はさすがだなと感じました。発言は綿密に計算されたものであることは明らかですが、それ以上に誠実さと高潔さを感じさせます。

 民間人と兵士のリスクを同じ発言にのせているのは、ジャーナリストの側からはさらに掘り下げることができそうですが、あのような理念を述べられてはいたしかたありますまい。理念を語れる政治家は長いあいだ見なかったような気がします。大統領候補に名を挙げられたことがあるのも、なるほどと思いました。

 なお、末尾近くの "our fellow citizen" という表現ですが、フェローという呼び名は組織内の地位とは関係なく、きわめて高い業績をあげた人に贈られる称号です。欧米の企業や学会によく見られます。フェローと呼ばれるのはごく少数の人で、非常に名誉のある、かつ尊敬される称号です。

Civilized World Must Stand Against Terror Tactics, Powell Says April 16, 2004

MR. KANEHIRA: In the history of the modern nation, it is said every government has an obligation to protect their own citizens. Some people in Japan are saying that those who are kidnapped are willing to take risk and they were expected to assume the responsibility for their own act. What is your comment?

カネヒラ氏: 近代国家の歴史では、いかなる政府も市民を守る義務があると言われています。日本のある人々が、誘拐された人たちは自ら危険をおかしたのだから、その行動に対して自ら責任を負うのが当然だと発言しています。これについて、どのように思いますか?

SECRETARY POWELL: Well, everybody should understand the risk they are taking by going into dangerous areas. But if nobody was willing to take a risk, then we would never move forward. We would never move our world forward.

パウエル国務長官:誰しも紛争地域へ行くことの危険を理解するべきです。しかし、誰も危険をおかそうとしなかったら、私たちは前進することができません。世界を前へと進めることができません。

And so I'm pleased that these Japanese citizens were willing to put themselves at risk for a greater good, for a better purpose. And the Japanese people should be very proud that they have citizens like this willing to do that, and very proud of the soldiers that you are sending to Iraq that they are willing to take that risk.

それゆえ、私は、より大きな善、より良い目的のために自分自身を危険にさらそうとしたこの日本の市民をうれしく思います。そして日本の皆さんは、自らこのような行動をおこなった市民をとても誇りに思うべきです。また、自分たちを危険にさらそうという兵士たち、皆さんがイラクへ派遣した兵士のことです、を誇りに思うべきです。

But even when, because of that risk, they get captured, it doesn't mean we can say, "Well, you took the risk. It's your fault." No, we still have an obligation to do everything we can to recover them safely and we have an obligation to be deeply concerned about them. They are our friends. They are our neighbors. They are our fellow citizens.

しかし自らを危険にさらしたからといって、彼らが人質にとられた時に「あなたたち自身で選んだ危険だ。あなたたちのミスだ」と言って良いということではありません。それどころか、私たちは彼らを安全に救い出す義務を負っています。また、彼らのことを深く憂慮する義務もです。彼らは私たちの友です。彼らは私たちの隣人です。彼らは私たちの仲間である市民なのです。

MAY/2004