Jim Croce(1943 - 1973)
Speedball Tucker
These Dreams
ジム・クロウチの魅力は、なんといっても、そのアンバランスさにあるといってよいだろう。破れた恋の詩を美しい旋律にのせたかと思うと、虚勢を張っているとしか見えないワルぶったロックンロールを歌うジム。本当のところは、どちらにも無縁の孤独な男だったはずだ。
タッカーといえば映画になったこともある、忽然として現れ、忽然と消えた名車のことだろう。1940年代としては画期的な装備と、そして美しさをあわせもった高級車だったらしい。アメリカには、時々、こういう車を作る男が出現する。バックトゥザフューチャーのタイムマシンに使われたデロリアンカーも、そういった車だった。タッカーにしてもデロリアンにしても、夢破れたヒーローなのか、それとも天才的なクレイジーだったのか、判然としないところも共通している。
ここではタッカーという名前はクレイジーな車という意味で使われているようだ。詩の内容はspeedballというタイトルから想像がつくように、なんとも気恥ずかしくなるような「ワル」の真似事だ。少なくとも1970年代にはすでに人前で歌うようなジャンルではなくなっていたと思うが、ジムにならそれができるのが不思議だ。なれるはずもないトリックスターへの夢と郷愁の魔術なのだろうか。思えば、タッカーやデロリアン自身も、こうしたトリックスターのひとりだったのかもしれない。
I drive a broke down rig on "may-pop" tires
Forty foot of overload
A lot of people say that I'm crazy
Because I don't know how to take it slow
I got a broomstick on the throttle
I got her opened up and head right down
Nonstop back to Dallas
Poppin' them West Coast turn-arounds
俺のポンコツ車、タイヤは今にもパンクしそう
全長40フィートのオンボロだ
みんなは俺をイカレていると言う
俺がスピードの落しかたを知らないと
スロットルは全開だ
さあ行くぜ
ダラスまでノンストップ
西海岸をぶっとばして
Chorus:
And they call me Speedball
Speedball Tucker
Terror of the highways
And all them other truckers
Will tell you that the boy is mad
To be drivin' a rig like that
俺はスピードボールさ
スピードボール タッカー
ハイウエイのならず者
トラック野郎たちは言う
あの坊やはまともじゃないぜ
あんなポンコツでぶっとばすなんて
You know the rain may blow
The snow may snow
And the turnpikes they may freeze
But they don't bother ol' Speedball
He goin' any damn way he please
He got a broomstick on the throttle
To keep his throttle foot a-dancin' round
With a cupful of cold black coffee
And a pocketful of West Coast turn-arounds
雨が降ろうが
雪が降ろうが
たとえ山道が凍りついても
スピードボールはへっちゃらさ
どんなひどい道だってかまうもんか
スロットルは全開だ
スロットルの上で足が踊るぜ
さめたブラックコーヒーをあおれば
西海岸をひとっとびさ
Chorus
One day I looked into my rear view mirror
And a-comin' up from behind
There was a Georgia State policeman
And a hundred dollar fine
Well he looked me in the eye as he was writin' me up
And said "Driver, you been flyin'"
And "Ninety-five is the route you were on
It was not the speed limit sign"
ある日 バックミラーを覗いたら
後から追ってくるのは
ジョージアの州警察だ
100ドルの罰金だって
俺をまじまじと見て調書をとる
そして言った
どこへすっとんで行くつもりだ
95という標識はハイウエイの番号だ
制限速度じゃないぜ
Chorus (2 x's)
Speedball Tucker 訳詩 庄野 健
破れた恋の思い出から逃れることのできない男。ジムの詩の大半はこれだ。単なる失恋の歌だったら、とうに聞き飽きてしまうところだ。ジム自身の、あるいは恋人のせいで破局を迎えたという詩なら、それは個人的な体験にとどまってしまう。
でも、若すぎた日は誰にでもある(maybe we were just too young to know)。そして、年月を経て振り返ると、成功したことよりも、何かうまくいかなかったことの方が多いのも(somehow things have changed)、誰しも同じだ。破れた恋という個人的な体験を、普遍的な郷愁に変えてしまうのがジムの魔法なのだろう。しかも、あの美しい言葉と旋律にのせて。
しかし、郷愁は罠だ。いつまでも美しいままではいられない。いつまでも歌い続けることはできない。ジムの乗った小型機が地にたたきつけられた時、ジムは永遠に抜け出すことのできない「あの日々(these days)」に還ってしまった。
Once we were lovers
But somehow things have changed
Now we're just lonely people
Trying to forget each other's names
Now we're just lonely people
Trying to forget each other's names
僕たちは恋人どうしだった
でも何かがうまくいかなくなってしまった
今は顔をあわせることもない
おたがいの名前すら忘れてしまいたいと願っている
今は会うこともない
はやく君の名前を忘れてしまえたら
Chorus:
What came between us?
Maybe we were just too young to know
But now and then
I feel the same,
And sometimes at night I think
I hear you calling my name
Mm, mm, mm, these dreams
They keep me going these days
僕たちの間に何が起こったのだろう
それすらもわからないほど僕たちは若すぎた
これからもずっと
思いつづけるだろう
夜のしじま
僕の名を呼ぶ君の声が聞こえる気がする
そんな思いから
僕は逃れられない
Once we were lovers
But that was long ago
We lived together then
And now we do not even say hello
We lived together then
And now we do not even say hello
僕たちは恋人どうしだった
もうずっと以前のことだ
一緒に暮らしたのは
今は言葉をかわすこともない
一緒に暮らしたことも忘れ
言葉をかけることもない
Chorus (2 x's)
僕たちの間に何が起こったのだろう
それすらもわからないほど僕たちは若すぎた
これからもずっと
思いつづけるだろう
夜のしじま
僕の名を呼ぶ君の声が聞こえる気がする
そんな思いから
僕は逃れられない
These Dreams 訳詩 庄野 健
FEB/2005